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Д.г 恥を知れ - 02

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サブタイトルにも、章のタイトルを一緒にいれてみることにしました。今まではアルファベットとナンバーだけでしたが、どうでしょうか? 少しは読みやすくなったでしょうか?

 今は、自領の一つであるボイマレの問題で、ヘルバート伯爵家に世話になってしまっているようだったから、礼をしない執務官を前に、アリーも不思議に思ってはみても、それを指摘しなかった。


 表情もない、冷たい顔に、冷たい眼が、ジーっと、アリーを見ているので、そこで、アリーも気まずそうに口を開いた。


「ヘルバート伯爵に面会を申し出たいのだが……」

「領主様は、只今、席を外しておりまして、邸にはおられません」

「あっ……、そうだったのか……」


 通常なら、他家の貴族の邸を訪ねる時は、前もって手紙を送り、面会を申し出て、それが受諾されたら、相手の貴族を訪ねることができる。


 今回は、オラフソン伯爵家のタウンハウスの方にヘルバート伯爵家からの急使が飛ばされて来たので、非常事態と聞いて、面会の申し出を済まさずに、アリーはそのままコトレアの領地を訪ねてしまった形になる。


 非常事態だろうと、少々、礼儀を欠かした行動になってしまったのだろう。


「面会を申し出ずに、このように突然訪ねてしまい謝罪する……。もし、迷惑でなければ、このまま、ヘルバート伯爵が帰宅なさるのを待っていてもいいだろうか?」


 そして、返答はなく、またもシーンとした沈黙だけが降りる。


 礼儀を欠かした態度が気に食わなく、アリーも、つい、顔をしかめずにはいられなかった。


「なにか問題が?」

「何の為に、この領地にいらしたのですか?」


 つい先ほど、その説明をしたばかりではないか。

 ムッとして、アリーもすぐに言い返す。


「だから、ボイマレの件でこちらに伺ったと、言ったばかりではないか」

「では、なぜ、ヘルバート伯爵の面会を申し出るのです?」

「なぜ、って……。何を言って――」


 オラフソン伯爵家に急使を送って来たのは、紛れもない、ヘルバート伯爵だ。


「コトレア領は、ヘルバート準伯爵が所有なさる領地です。ヘルバート伯爵領、ではありません」

「えっ……? なにを言って……」


 バカバカしいと、すぐに言い返そうとしたアリーの前で、目の前にいる執務官の冷たい眼差しだけが返される。


「えっ……? 準伯爵……? それは……」


 アリーも知らない話だった。


「そ、それは……失礼、した……」


 世話になってしまっているコトレア領の領主が、ヘルバート伯爵本人ではないと判って、アリーも恥ずかしく面目丸つぶれだ……。


「失礼をした……。急使が、ヘルバート伯爵家の名で書かれていた為、勘違いしてしまったのだ……」


 言い訳がましいが、封書にはヘルバート伯爵家の紋章が。手紙には、ヘルバート伯爵のサインがされていたのだ。


 勘違いしてしまっても、仕方がないだろう。


「領主様が不在の間、領地の管理は私が任されております」


 まだあまりに若そうな執務官なのに、領地の管理を一手に任されているなど、更に驚きである。


「では……、ヘルバート準伯爵は、いつ戻られるのだろうか?」

「戻られたら、何をなさるのですか?」


「何って……。もちろん、ボイマレの災害問題について、話を聞かせてもらうに決まっているだろうが」

「オラフソン伯爵は、どうなさったのですか? オラフソン伯爵家嫡男の方が、代理で飛ばされて来たのですか?」


 自領の緊急事態であるのに、当主であるオラフソン伯爵自身が、コトレア領を訪ねられないほどの重要な要件でもあるのか。それも、息子である嫡男を代理に立てるほどの()()()()が。


 口に出されない暗黙の責めに、アリーも口籠る。


 実際の所、ヘルバート伯爵家からの急使を受け取ったオラフソン伯爵である父は、大した注意も払わず、その手紙を無視してしまったのだ。


 それで、夕食時に、思い出したかのようにその話題を出してきて、驚いてしまったのは、息子であるアリーの方である。



「では、今すぐ、ボイマレに向かい、被害状況の確認をされないのですか?」

「なぜだ? わざわざ、わしが出向かなくても、村でどうにかしているだろうが。あそこは、領土も小さなものだ。大した税が入って来るのでもない」



 その返答を聞いて、自分の耳を疑いそうになったのは、アリーの方である。


「オラフソン伯爵は、今どちらに?」

「父は……所用がある為、こちらに伺うことはできなかった。それで、私が赴いたのだ」

「自領で民が亡くなっているのに?」


 そうやって、急使の手紙の中に、災害状況を確認したヘルバート伯爵家の報告も含まれていたはずだ。


「その件に関しては……、ヘルバート伯爵――いや、ヘルバート準伯爵には、多大なご迷惑をかけてしまった……」

「どんな()()()迷惑なのですか?」

「なにを――」


 ただの執務官でありながら、生意気な発言に、アリーもキッと強くフィロを睨めつけた。


 フィロは全く態度も変えず、冷たい眼差しだけを凍り付かせ、ただアリーを見返している。


「死亡者数は何人です? 怪我人は何人です? 怪我の度合いは? 村の破壊状況は? 災害救済の援助はどこに?」


 次から次へと止まることのない質問が冷たく投げられ、オラフソン伯爵家嫡男はただ渋面をみせて何も言わない。


「ヘルバート伯爵家からの急使に、その全ての情報が委細漏らさず書かれていたはずです。それなのに、()()、話を聞かせてもらいに来た? 今更、話など聞く必要などないでしょう? 災害救済に必要な物資や人材はどこに? 食料は?」


 手厳しいフィロの責めは止まない。相手が貴族だろうが、今のフィロには、はた迷惑をかけられてしまっているセシルの立場や努力にも感謝せず、のうのうと顔を出して来た貴族に容赦などしてやる気はない。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


Spas ji bo xwendina sees romanê

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