Д.в 災害救済 - 05
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「私の経験上から申しましても、コトレア領の領民は、あなたがいらっしゃるから、緊急時でも、全く問題がないのですよ」
「そう、かしら……?」
「ええ、そうです」
そして、またしても、ものすごい力説で頷かれてしまったセシルだ。
「ちょっといいですか?」
レイフが割り込んできた。ラソムがレイフの方に顔を向ける。
「なんでしょう?」
「なぜ、コトレア領の領民は、ご令嬢がいるから問題がないのですか?」
「我々、領民は、日頃から、避難訓練を繰り返しております」
「「避難、訓練っ?!」」
レイフ達が驚きのまま、繰り返してしまった。
「ええ、そうです。大抵は、数カ月に一度、火災訓練を実施し、火災時における、避難方法を訓練しているのです。また、年に一度は、大災害や緊急時における大惨事での避難を目的として、領地全土での緊急避難体制の訓練も実施しております」
「そんなものまで……!?」
唖然として、レイフの瞳が大きく見開かれたままだ。
「水害、または、土砂崩れなるものの災害訓練はしておりませんが、そういった状況に陥った場合でも、領民は普段から緊急体制、またはそういった状況での対応方法を訓練しておりますから、一度パニックが起きても、すぐに統制、統率は可能なはずです」
「はあ……」
「では――もしかして、騎士達も、そのような避難訓練を課しているのですか?」
「火災訓練は、全員参加です」
「いえ、火災訓練ではなく、移動を必要とする隊の移動で、緊急時の対応、運営、統率、そういったものなのですが」
ギルバートの言わんとしていることをすぐに理解して、ああ、とラソムが簡単に頷いた。
「ええ、そうです。騎士達は、月に一度、緊急時、または、非常時でも常時と変わらず対応できるように、その訓練を徹底させておりますが」
「例えば?」
「災害が起きた場合、領地が戦場になった場合、その他、緊急事態が起きた場合、我々騎士団は、最初に状況を確認し、判断し、報告する義務があります。騎士自体が混乱していては、領民の保護や避難も不可能ですからね」
そうなると、どのような状況でも必ず、誰かが指揮を取る場所、報告をする場所、情報を集め分析する場所が必要となって来る。
だから、まず一番初めに、会議用のテント、または、対策本部を設置することが、領民の保護や避難と同時に行われるのだ。
中央指揮権をきちんと確立すると、非常事態や緊急事態でも、混乱を収めることが非常に楽になってくるからだ。
指揮系統の統率、コミュニケーションの統率、そして、その設置する時間の早さが、事態の収拾の鍵となる。
「敏速に行動できなければ、大惨事にもなりかねません。そうなれば、人命の危機が出てくる恐れがありますから」
「なるほど……」
ふーむと、ギルバートはラソムの話を真剣に聞いている。
「今日、ボイマレで、領地の騎士達が必要物資を組み立てている場を見ました。それも、一時間もかからずに、全てを終えていました」
「当然です。その程度の作業に時間をかけていては、必要な情報収集や調査に出向くこともできません。どのような状況においても、情報戦が時の勝敗の決め手になります。雑事にもたもたと足を取られていては、時間の無駄になってしまいますからね」
「それで、全てを組み立てる方式なのですか?」
「そうです。テントはかさばるものですが、それ以外の必要物資は、ほとんど、全て折り畳み式になっています。対策本部で使用する机も椅子も、ベンチなども、全部そうです。大きな机やテーブルを要する場合は、折り畳み用の机を何個か合わせ、その上にテーブルのようなパネルをはめることもあります。6個分、9個分の大きさです。全部、折り畳み式ですので、持ち運びに幅を取らず、積み重ねていけば、かなりの大荷物でも、運ぶことが可能になってきます」
「移動式のボードや、三脚での情報版なども?」
「ええ、そうです。それらは全部領地で――マスターの考案の元、領地で開発されたものです」
「すごいなっ……!」
ギルバートとクリストフが目を輝かせて、二人で顔を見合っていた。
そんな便利なものがあるのなら、王国騎士団でも、全て使用してみたいものである。
「いつでもすぐに組み立て可能で、瞬時の指示で、またすぐに取り外しが可能で、移動できるものを開発したのです。そのおかげで、物資の持ち運びが、非常に楽になったのは、言うまでもありませんが」
セシルがその全部の案を説明してくるまで、ラソムだって、そんな便利なものがあるのか? そんなしまい方があるのか? ――と、今まで考えもしなかったことである。
日本人特有の、狭い場所でも物取らず、スッキリと収納しましょう――というアイディアを、この世界でも惜しみなく使いまくっているセシルである。
「話が少し逸れてしまいましたが――領地の領民は、そういった知識を授かっていますから、災害が起きて、緊急時でも、それほどパニックすることはないでしょう。混乱も、それほどひどいものにはならないはずです」
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)
이 소설을 읽어 주셔서 감사합니다





