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Д.б 状況確認 - 09

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* * *



「あの……、セシルじょうのおかあさま……」


 不思議な呼ばれ方だったが、レイナは小さなオスミン王子に向く。


「はい、なんでございましょう?」

「あの……、いまは、きんきゅうじたい、なのでしょう?」


「緊急事態ではありませんが、ここから少し離れた場所にある村で、少し、問題が起きてしまったようですわね」


 それで、きゅっと、オスミンが口を結ぶ。


「それは……、ぼくが、こんなことをして、いいんですか……?」


 まだこんな幼いのに、王子としての立場も理解していて、大人達が駆けまわっている時に、一人だけ視察に来ている自分に、罪悪感を感じてしまっているのだろうか。


 レイナは膝を折って屈みながら、オスミンの視線と同じ高さに目線を合わせる。そして、優しく微笑んだ。


「わたくし達が邸に残っていても、やきもき心配するだけで、今はまだ、手伝えることがあまりございません。ですから、待っている間は、わたくし達ができることをするんですの」

「……できること?」


「そうです。こうやって視察に回って、たくさんのことを知ることも、大切でしょう?」

「そう、だと……おもいます」


「大切なことだと、わたくしは思いますわ。特に、この領地は、他領と違い、色々な方法が試されているんですのよ。わたくしだって、毎回、この地を訪れる度に、驚かされています」

「……セシルじょうのおかあさまが……?」


「ええ、もちろんです。毎回、驚く新発見があって、いつもこの地にやって来ることを、楽しみにしておりますの。今回だって、「時計塔」 というものを見る為に、この豊穣祭を、とても心待ちにしておりましたのよ」


 その一言をきいて、パっと、オスミンの顔が輝いた。


「おにんぎょうが、おどっていたのですっ! くるくると。ぼくは、はじめてみましたっ」

「ええ、わたくしもですの。とてもすばらしいもので、つい、拍手をしてしまいましたわ」


 確かに、中央に集まったたくさんの観光客から、拍手喝采がたくさん上がっていた。


「セシルさんは、いつもね、色んなことを試されるんですのよ。知らないことだったり、驚くことだったり、それでも、そのどれも全部、興味深く、わたくしは、いつもこの地を訪れる度に、領地の視察をさせていただいています。わたくしは、“1日体験ツアー”というコースにも参加しましたわ」


 嬉しそうにそれを説明するレイナに、レイフとリドウィナの二人も、視察前に紹介されたコースのパンフレットを思い出していた。


 まさか、セシルの義母(はは)親である伯爵夫人のレイナまで、そのコースに参加していたなど驚きである。


「ですからね? 学べる機会や、学べる場があるというのは、とても幸せなことだと、わたしも、常々(つねづね)、実感しておりますのよ。この年になって――と、思われるかもしれませんが、知らないことを発見する度に、なんだか嬉しくなってきますもの。オスミン様は、どう思われますか?」

「――ぼくは……、たのしい、です……」


 最後の方が、聞こえるか聞こえないかほどの小声になってしまったが、レイナがオスミンに優しく微笑んでいく。


「セシルさんは、手助けが必要となったら、そう、きちんとおっしゃってくれる方なんですよ。そのセシルさんが、今は視察を続けてください、とおっしゃっているのですから、今はまだ、わたくし達の“出番”ではないということなのです」

「でばん……?」


「ええ、そうです。ですから、わたくし達は、できることをして、有意義な時間を過ごすべきだと思いませんか? みなさまが、この領地で学ぶこと、知っていくことは、きっと、これからの役に立っていくことだと、わたくしは思っております」

「……はい……」


「よろしかったら、わたくしを、エスコートしてくださいませんか?」


 オスミンの身長なら、レイナをエスコートできるものではないが、そっと、目の前に出された左手を見て、オスミン王子が自分の手を出して、ギュッと、握っていた。


「ありがとうございます」

「セシルじょうのおかあさま、このグリーンハウスは、おかあさまも、おどろきましたか?」

「ええ、もちろんです。グリーンハウスが建築された年にも、わたくしも領地にやって来ておりましたの。ここのグリーンハウスを案内されまして、それはもう、驚きましたわ」

「そうですか……」


 オスミン一人だけが驚いているのではないと分かって、その頬が、少しだけ嬉しそうに盛り上がっていた。


「オスミン」

「はい、おじうえ」


「新しいことを学べるということは、本当に楽しいことだろう? 私だって、とても驚いているんだよ」

「おじうえがっ?!」


「もちろん。だから、オスミン、この領地にいる時間は限られている。その間、お前も、学べることをたくさん学びなさい。お前が成長していく過程でも、きっと、その全てが、役に立っていくだろう」

「はい、わかりました、おじうえっ」


 叔父であるレイフにも後押ししてもらって、オスミンが素直に喜んでいる。


「話がまとまったようなので――では、私の質問をしてもいいだろうか?」

「もちろんでございます」


 では――と、質問をしたくてうずうずしていたらしいレイフから、矢継ぎ早で質問が落とされて、おまけに、まだその質問が終わらないようで――案内役の庭師も、ポカンと口を開け、唖然としている。


「父うえが、おじうえは、いつもしつもんがおおすぎる、といっていました」

「まあっ!」


 レイナとリドウィナが、ちょっと吹き出してしまった。




読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


یہِ کِتاب پرنہٕ خٲطرٕ چُھ تُہُنٛد شُکریہ

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