表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
461/551

Д.б 状況確認 - 05

ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。

 ギルバートの瞳がおかしそうに細められた。セシルの反応を見て、ギルバートも笑っているのだろう。


「では……、皆様のご協力に感謝いたします」

「いいえ、お礼は必要ありません。どうぞ、指示を出してください」


「では……、今はお言葉に甘えさせていただきます」

「ええ、どうぞ」


「まずは、村人達の安全確認と、生存確認を済ませたいと考えています。この場から土砂崩れの場所が見えないのですから、ここまで土砂崩れの被害が出ることはないと思います。ですから、騎士の皆さんには、これから村を回っていただき、村人達をこの場所に集めて欲しいのです」

「わかりました」


「移動の際は、最低でも四人一組でお願いします。決して一人で行動しないこと。何が起きても、すぐに互いに連絡ができる距離で行動し、問題が起きた場合は、すぐに私に知らせてください。その場で解決しようとはなさらず、必ず、報告を先にすませてください」

「わかりました」


「この場所に先導できるように、数人の騎士を、ここの近辺にも配置してください。村人達がやって来ましたら、この場に誘導できるよう指示を出してもらいたいのです」

「では――ここからすぐ見える視界の先に一人、それから、似たような間隔で二人ほどを配置しておきましょう」


「お願いします。村の広さがどのくらいが判りませんから、最初の確認は、騎馬で回ってみてもいいと思いますの。もし、怪我をしている村人を見つけた場合、一人はその場に残り、二人はすぐ間近で他の被害者がいないか確認を。最後の一人は報告を済ませに、すぐに戻ってきてください」

「わかりました」


「皆さんは、日頃から怪我などの対処にも慣れていらっしゃるかもしれませんが、今回は、すぐに手当てをせず、医師が確認を済ませるまでは、その場で待機をしていてください。怪我人は痛さや苦しさで悲鳴を上げたり、叫んだりするかもしれませんが、医師の確認が取れるまで待つようにと、辛抱強く説得してくださいね」

「わかりました」


 今回の状況確認では、レイフの指示で、アトレシア大王国から付き添ってきた医師の一人が、災害地であるボイマレ村まで一緒にやって来てくれることになったのだ。


 当初では、医師がいないコトレア領で病気になったり、具合が悪くなったりしては問題になってしまうと、セシルも反論してみたのだが、その甲斐空しく、レイフとオスミンはコトレア領にやって来ることになってしまった。


 だが、現在の王太子殿下と、第一王位継承権を持つ王子殿下の外遊だけに、その身の安全が心配され、結局最後には、王宮に仕える医師の一人が王子殿下達と一緒に随行してきたのだ。


 災害が起きたというので、レイフは、その医師を一緒に派遣してくれるという寛大な指示を出してくれたのだ。もう、セシルも、レイフには感謝してもしきれないほどの、感謝をしている。


 外傷だけで判断して、下手に怪我人を動かしてしまい、更に悪化させてしまっては大変なことになってしまう。


 だから、医師がやって来てくれることはものすごく心強いし、自己判断などせずに、専門家に診察を任せるのが最善なのである。


「この近辺から村人達を呼び集め、それから、徐々に奥の方に足を伸ばしてみましょう」

「わかりました。今の所――4人一組で、四組の騎士達を見回りに出そうと考えていますが、足りませんか?」

「いいえ。それで、お願いいたします」


 四組で16人。それから、数人を、この近辺の誘導役に。それでも、まだギルバート達を入れても、小隊で動けるくらいの人数は残っている。何か問題が起きても、それだけ残っていれば、ある程度、ギルバート達も動けるだろうと、踏んでのことだ。


 日頃から、隊を動かし、徒党を組んで行動させているだけに、ギルバートの判断も早いものだった。あまり、考えもせずに、すぐにそんな提案が浮かんできたような感じである。


「ケルト、トムソーヤ」

「準備はできております」


 呼ばれて、セシルの傍にやって来た二人は――また、奇妙なものを首からぶら下げていた。


「それは何ですか?」


 非常事態の場であっても、随分、珍しいものを目にして、つい、ギルバートも質問をしてしまう。


「「画板」 です」

「がばん?」


「ええ、そうです。移動しながら、紙に書き込むことは難しいですよね。それで、このように「画板」 を首から吊るし、両手を空けることができます。そして、「画板」 の板がありますから、お腹に乗せていると、紐の長さで「画板」 がしっかりと固定され、平らな机の出来上がりになります」


「はあ……、それは、すごいですね」


 画板など、小学生の頃に、外で絵画をする授業に使用されたものだ。なにも、移動中に紙に書き込む為に、画板が使用されていたわけではない。


 だが、平民は、絵の具を持って絵を描いたり、楽しんだり――なんていう娯楽に近い習慣はない。


 それで、セシルの説明は、“移動中でも読み書きができる机”と言う風になってしまったのだ。


 それでも、板と紐があればすぐに出来上がる品物だけに、「画板」 はかなり当初から開発したものである。


 実は、セシルがコトレア領にやって来た当初、外回りや視察を続けている間、紙で書き留めることができずに腹を立てたセシルが、速攻で「画板」 を作ったことが始まりなのである。


 「画板」を持っているトムソーヤのお腹の前には、四角い板があるだけで、その両端にくくられている紐を、首にかけているような状態だ。


 「画板」 の板の上には、小さな箱がぶら下がっていて、そこにはちゃんとインクボトルが入っている。移動中でも、インクボトルを落とさず、しっかりと固定された箱に入っているだけに、書き込みをする時も、全く落ちる心配はないだろう。


 便利なものだ。


「あなた達二人には、村人の確認をしてもらいます。王国騎士団の騎士達に村人達の誘導をしてもらいますから、それには混ざらず、村人達の安全確認、生存確認を優先してください」

「わかりました」


「村人達が集まってくるまで少し時間がかかると思いますから、その間は、この近辺の地理確認をお願いします」

「対策本部はこの場所で建てるのですか?」


「たぶんそうなるでしょうが、この場所が土砂崩れの場所からどのくらい離れているか、先に確認してきてください」

「わかりました。安全確認、生存確認は、名前も記入しますか?」

「そうねえ……」


 その質問に、セシルも少し考えてみる。


「紙をください」

「どうぞ」


 トムソーヤの腰にぶら下がっている袋には、丸めた紙がたくさん入っている。


 その紙の束から一枚を取り出し、セシルに手渡す前に、反対に巻きなおして、一応、真っすぐにはしてみるトムソーヤだ。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


qujannamiik uqalimaaraviuk taanna uqalimaagaq

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Funtoki-ATOps-Title-Illustration
ランキングタグ、クリックしていただけたら嬉しいです (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
小説家になろう 勝手にランキング

その他にも、まだまだ楽しめる小説もりだくさん。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ