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Д.б 状況確認 - 02

Season's greetings and happy holidays!!

May the magic and the wonder of the holiday season stay with you throughout the coming year •͙‧⁺o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺‧•͙‧⁺

「……えっ……? ――ああ、申し訳ありません……。申し訳、ありませんでした……」


 ははぁっ、とでも言えそうな動きで、今度は男までも深く頭を下げた。


 今、その無駄な行為はやめて欲しい、と頼んだばかりではなかっただろうか?


 それを指摘するだけ無駄のように思えて、セシルも溜息(ためいき)を出さずにそれを飲み込んだ。今は、一刻の猶予もない緊急事態なのだから。


「今は緊急事態ですから、まず先に、説明をしてください。村人達の安全を確認したいでしょう?」


 その言葉で、はっと、我に返ったのか、男が少年達をせっつくようにした。


「おい、お前たち、説明しなさい」

「説明……?」

「二人だけで山から下りて来たのですか?」


 少年二人の瞳が、少し怯えながら、セシルに向けられる。


「その説明次第によって、村へと通じるこの道を避け、南下した迂回路から村に入らなければならないかもしれません。話によると、そこの場所へ行くには、少し時間がかかってしまうそうですが?」


 少年二人が顔を見合わせる。それで、おずおずと、頷いた。


「遠い、です……」

「ですが、あなた達二人は、山から下りて来られたのでしょう? 土砂崩れに遭いませんでした?」


「どしゃ、くずれ……?」

「このように、土が崩れてくる現象のことです」


 それで、少年二人の視線がセシルの後ろ側に向けられる。もう、村の入り口が見えないほど高く、土で埋もれかえっている場所だ。


「でも……山に行くのは、ここじゃ、ないから……」

「……ここから、離れてるんだ……」

「山を下りてくる時は、お父さんが戻ってくるのが遅いから、心配して下りて来たのですか?」


「……ううん……」

「……こわくて……」

「その時のことを、詳しく話してくれませんか?」


 二人の少年が顔を見合わせ、また男にしがみついていく様子を見せる。


「……おじさんが、一回、山から下りたら、ぼくたちは、まだたきぎを積んでいたんだ。次に、おじさんが戻ってきた時に、乗せるから……。そうだろ?」

「うん、そう……」


「それから、どうしたのですか?」

「それから……わかんないけど……、でも、突然、地面がゆれて……」


 それで、二人の少年が涙をポロポロとこぼしながら、また泣き出してしまった。


「怖かったでしょう。でも、もう大丈夫ですよ。お父さんもここにいて、安全です」


 少年達の方に近づいたセシルが腕を伸ばし、そっとだけ、少年達の頭を撫でてやる。


「地面が揺れた時、あなた達はどうしていたのですか?」

「……こわくて、座りこんでた……」

「だって……地面がいきなりゆれて……」


「初めての経験だったことでしょう。あなた達二人が無事でなによりです。――そうだ、これをあげます。甘いから、少しは気持ちが落ち着くでしょう」


 セシルの身に着けているショルダーバッグから何かを取り出したセシルは、手袋をはいたまま、手の平に乗せた何かを少年達の前に見せるようにした。


「どうぞ」


 まさか、お貴族サマから何かをもらうことがあるなど夢にも思っていなかっただけに、少年達は目を真ん丸にして、セシルを見上げている。


「食べていいですよ」

「いいの……?」

「甘いの……?」


「そうですね。これは「キャラメル」 という甘味です」

「かんみ?」


「甘い食べ物、という意味です。疲れている時など、甘いものを食べると、少し元気が戻ってきますよ」

「食べてもいいの……?」

「ええ、いいですよ。このまま口に入れて、噛まずに、ゆっくり舐めて食べるのです。小さくなったら、噛んで飲み込んでいいですよ」


 少年達の瞳がきらきらと輝き出し、それでも、遠慮しがちでおずおずとセシルの手に乗っている「キャラメル」 を口に入れてみた。


 最初は、その食感も、味も判らなくて、セシルに言われた通りに、少年達は口の中で舌を必死に動かしてみるようにする。


 飴などの甘味を食べたことがない子供達にとって、飴の舐め方だって知らない。食べ方だって知らない。


 初めての味覚に驚いて、それで、それが何かも形容できないことが頻繁だ。

 この少年達の反応も、領地の子供達と全く同じである。


「どうですか? おいしいですか?」


 少年達は口を開けられないせいか、ものすごい勢いで首を振ってみせる。でも、その顔が、初めて食する甘さに驚いているのと、その甘さがすごく嬉しくて感動しているのと、もう色々な感情が嬉々として上がっている。


 近年、蜂蜜の製造も落ち着いてきた領地では、甘味やデザートの新メニューを増やし始めている。


 最初の時は、砂糖を手に入れることさえ不可能に近く、砂糖キビを輸入する手段を見つけ、その苗を探し出せることができるまで、随分かかったものだ。


 それで、セシルは食事の不満とストレスが、()がつくほどに天辺に達していたので、お金がなくとも、最初から養蜂を率先していたのだ。


 その甲斐あって、領地では早くから蜂蜜をつかったスイーツを作ることができて、やっと、セシルのストレスレベルが下がったほどだ。


「話の続きはできますか?」


 少年達が必死で首を振る。


「山の上から村に入ることはできますか?」

「……でき、ないよ」


 口の中のキャラメルを落とさないように話す少年の顔が、かわいいものである。


「……だって、木がいっぱいだから、父ちゃんだって、危ないから下にいくなよ、って」

「そうなんです。薪を集める場所は、いつもわしらが行ってる場所なんです。だから、道に迷うこともないし、崖にも遭遇しないです」


 そして、男の方も落ち着きを取り戻したのか、そうやって付け足しを説明する。


「そうですか。それなら、第二陣の荷車がやって来ましたら、迂回路に向かい、そちら側から村に入るしかないようですね。その時に、道案内をお願いしますね」

「もちろんです。おまかせください」


「荷車がやって来るまでもう少し時間がかかるでしょうから、あなた達三人は、道端で少し休んでいていいですよ。突然の災害でとても驚いたことでしょうから」

「いいんですか……?」


「ええ、問題ありません。それに、道案内をしてもらう時は、休む時間がないと思いますから」

「それはかまいません。領主さまが、確認にきてくださったんですから」


 そして、ははぁっとでも言えそうなほどの感謝を示し、男が少年達と一緒に深く頭を下げた。


 その行為をやめて欲しいと頼んだのに、結局は、常日頃からの習慣(悪癖) で、体に染みついた癖は簡単に治すことはできないのだろう……。



読んでいただきありがとうございました。ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。


Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


Quana taiguarangni una makpiraaq

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