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Д.а 予期せぬ - 06

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「おじうえは、きしだんのきしなのです。つよくないと、きしにはなれないのです。だから、セシルじょうは、おじえうえにまもってもらうから、だいじょうぶなのです」


 自信満々に言い切られてしまって、セシルも少しだけ困ってしまっている。


「オスミン様……」

「その心配は必要ないよ、オスミン」

「はいっ、おじうえ!」


 それで、嬉しいまま食事に戻っていくオスミンだ。


「ギルバート様……」

「その心配は必要ありませんよ」


「……ありがとうございます」

「そこは、お礼を言われる場ではないと思うのですがね」


 それでも、ギルバートは嬉しそうに瞳を細めて、セシルを見返していた。


「これから、アトレシア大王国に嫁がれるあなたは、違った意味で、更に危険にさらされるかもしれません。ですから、問題が起きても起きなくても、どうか、私に知らせてください。私は、あなたを危険な目に遭わせたくありません……」


 そうギルバートが切に望んでも、アトレシア大王国の内情不安定な場では、その状況が許さないことはギルバートも百も承知している。


 それでも、ギルバートの大切な女性であるセシルには、危険な目に遭ってほしくはないのだ。


「それは、これからギルバート様と二人で解決していかなければならない問題だと思いますので、その時になりましたら、よろしくお願いいたしますね」

「もちろん、です……」


 セシルは、晴れて、ギルバートの正式な婚約者となった。

 来年には、セシルは――ギルバートの妻となる。これから、二人で一緒に家族になっていく。


 セシルの言葉が嬉しくて、ジーンと、ギルバートだって密かに感動してしまっているくらいだ。


「ははうえは、セシルじょうは、ギルバートおじうえのつまになるんですよ、といいました。らいねんに、けっこんするんです」

「ええ、そうですね……」


 子供らしく、母親から聞いた話を素直に口に出しているのだろうが、皆の前で断言される、少々、恥ずかしいものだ。


「セシル叔母上、っていうことになるのかな?」


 ついつい嬉しくて、ギルバートもそんなことを、ぽろっと、口に出してしまった。


「セシルおばうえ? うわぁぁぁ……!」


 セシルがギルバートの妻になることは理解したが、それで“叔母上”という風に、呼び方が変わることを、すっかり頭に入れていなかったオスミンは、その響きが新鮮で、嬉しくて、キラキラと目を輝かせている。


「セシルおばうえ、ですか?」

「いえ……」


 まだ、結婚はしていません……。


「それは、来年……婚儀を終えてから、かな」

「こんぎ? それはなんですか?」

「結婚する二人が国王陛下の前で誓って、夫婦になる祝典のことだよ」


 きっとギルバートの説明を理解していなさそうなオスミンだったが、キラキラと輝いている瞳が更に輝いて、柔らかそうな頬が盛り上がっていく。


「じゃあ、ぼくもでます」

「まあ――オスミンの年齢なら、たぶん、問題はないかな?」


 ギルバートの結婚は、国王陛下が奨励した婚儀だけに、婚儀の祝典には家督を継いだ貴族が全員揃うことになる。


 王子殿下でも、あまりに(おさな)過ぎる場合は、祝典のような催し物から外されることが多い。

 オスミンの弟のイングラムは、まだ三歳であるから、そんな小さな子供が祝典に参加することはない。


 ただ、オスミンは退屈になってしまうかもしれないが、セシルに会いたくて、祝典に参加してくるかもしれない場面は、ギルバートも想像ができた。


 婚儀の間では、たぶん、挨拶などで多忙になり、オスミンと直接話をすることはできないだろうが、それは、オスミンにはまだ説明すべきではないだろう。


 嬉しそうに瞳を輝かせているその幼い顔は、素直に喜びをみせている。ここで、いらぬ説明をして、がっかりさせてしまうのは気が引けてしまう。


「ギルバートおじうえは、セシルじょうにメロメロで、ふたりはラブラブ・アツアツなのですっ!」

「「え゛っ……!?」」


 あまりに予期せぬ爆弾発言を落とされて、ギルバートとセシルが揃って驚いている。


 ぶほっ……と、隣でクリストフが吹き出して、その後、その笑いを堪えるのに一人でむせている。


 爆弾発言を口にした本人は、全く他意もなく、にこにことおいしそうにランチを食べているままだ。


「……一体、誰に、そのようなことを教わったんだ、オスミン?」

「レイフおじうえです」


 ケロッと、オスミンが素直に答える。

 もちろん、ものすごい剣呑なギルバートの眼差しがレイフに投げられるが、レイフは全く知らん顔。


「事実ではないか」


 そして、全く反省の兆しなし。


 ギロリ、と凍り付きそうなギルバートの眼差しがレイフを睨みつけているが、レイフの優雅な様子で食事を取っている姿は変わらない。


 その横で、口には出さず、極力、顔にも出さないようにと必死のリドウィナだって、顔を赤らめて、その視線を誰とも合わせないように、その視線がどこかに泳いでいるではないか。


 子供の無邪気な発言を前に、なんだか……妙に照れてしまったセシルとギルバートだった。




読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


תודה שקראת את הרומן הזה

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