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 いきなり執務室の扉が開いて、何事かっ――と、眉を吊り上げた中尉の前で、ドカッと、何かの塊が投げ込まれた。


「なんだ? 一体、何事だ?」


 見れば、投げ込まれたのは二人の男らしく、後ろ手で縛り上げられているようだった。


 そして、その後から真っ黒な()――いや、マントを身に着けた、あの隣国の一団が部屋に入って来た。

 今日は、昨日のリーダーらしき一人の他に、三人の付き添いがいる。


「昨夜、深夜になり、我々の陣を取っている場所に、盗みを働きにきた兵士達ですが」

「盗み? ――一体、何を盗みにきたんだ?」


「貴族がやってきた話を聞き、()()()()()、我々の場所に侵入して、高価な品物を盗みにきたそうですが?」


 一体、この落とし前は、どうつけてくれるんだ?


 言葉に出されない暗黙の責めがあまりにはっきりとしているのに、中尉は、そんな皮肉にも注意を払っていない。


「バカバカしい。王国軍の兵士が、そんなことをするものか。我々を侮辱しているのか?」

「事実ですが?」


「そんなもの、事実なわけがあるかっ。誇り高き王国軍への侮辱、許されん」

「へえ。では、この兵士達は王国軍の兵士ではない、と? それなら、我々が処罰しても、問題はないようだ」


「――あ、ああっ……待ってくれ……! もう、しません……」

「……どうか、許してくれっ……!」


 状況が更に悪化していくようで、捕縛した二人の兵士達が、大焦りで懇願をみせる。


「ここの指揮官が、王国軍の兵士ではない、と断言しているが?」

「そ、そんなことはないっ……。俺は、王国軍の兵士だ。第3小隊の所属なんだ」

「俺だってそうだ。確かめてくれれば、判るから――」


 へえ、とあまりに冷たく、感情の機微もなく、口も開かないような音だけの相槌が出され、サーっと、一気に男達の顔色が青ざめた。


「……どうか……、助けてくれ……」

「……殺さないでくれ………」


 それで、セシルの視線が、わざとに、中尉の方に向けられた。


「と言ってるけど?わざわざ、第3小隊まで行って、確認しないといけないなんて、一体、どれだけ躾がなってないのかねえ? ()()()()王国軍、でしたっけ?」


 侮蔑が露わで、見下した態度も隠さない。


 それで、中尉の眉間が、ピキピキと引き攣っていく。


「――貴様ら、よくも、俺の前に、そんな体たらくな格好を見せられたものだなっ!」


「怒鳴り散らしたところで、自分の八つ当たりはできでも、問題解決にもなっていない。盗人を放置しまくっているのは、ここにいる指揮官の問題ではないのか?」


 あまりのくだらなさに、セシルが感情もなく言い捨てていた。


「なにをっ……! この俺を侮辱しおって――」

「侮辱したからと、どうしたと言うんです? 他国の、それもボランティアで混ざった義勇軍に対して、随分の扱いだ。こんな醜態、ノーウッド王国に報告されたらどうなるのか、考えたことはないのか?」


 ハッ――と、中尉が一気にこの現状を理解したようだった。


 頭の悪い男だ。

 一々、指摘してやらないと、全く自分の状況を把握していないらしい。


 セシルは、ノーウッド王国の王宮になど報告する気は全くないが、そんな事実、この中尉は知る由もない。


 だが、ノーウッド王国に、アトレシア大王国の王国軍では悪事や悪行が許されている、などと報告されてしまったら、なにかの拍子に、アトレシア大王国の王宮にも、その話が届いてしまうかもしれない。


 そうなったら、威張り散らしている中尉の首だって、危なくなってしまう。


 うぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ……と、あからさまに自分の憤りを隠さず、その顔が怒りで紅潮していくが、この場でセシル達を更に怒らせては、重大な問題になってしまいかねない。


「――――こいつらは、こちらで処分しておく」


 それを言うのがやっとのようだった。


 セシルは、特別、何かの処罰を期待していたのではないし、こんな能無しの中尉に頼っているわけでもない。


 セシルは三人に頷いて、挨拶もなく、クルリと身を翻し、さっさとこんな部屋を後にする。

 廊下を進んで行く際に、開けっぱなしになっているドアから、中尉の叫び声が上がっていた。



「――――貴様らっ! 俺に恥をかかせおって――」



 お前程度の男に恥をかかせたからと言って、何だと言うのだ。

 根本的な軍の規律もなっていない、この駐屯地自体が問題なのに。



――ああ、なんて、アホ臭い。



 司令塔を後にする四人の全員一致した意見だった。





 初日では、すでに軍から盗人が。


 今朝、全員が目を(もう一度) 覚まし、朝食もすっかり終えた頃、昨夜、木にグルグル巻きに縛り付けておいた男達の前に、全員が集まっていた。


 兵士達は、朝方には目を覚ましていたようで、どうにか逃げ出そうと、かなりもがいていた様子ではあるが、しっかり、きつく、グルグル巻きにされている為、腕がこすれて赤くなっていても、逃げ出すことは不可能だったようだ。


 それで、リアーガに(更に) 脅されて、名前に所属の隊、上官の名前を聞きだし、おまけに、(ご丁寧に) フィロが用意した犯罪申告書(自白書()()()) に、二人のサインを(しっかり) とさせ、証拠品としてもちろんゲット!


 盗人を引き渡して戻って来たセシル達は、引き続き、駐屯地内の確認と警備の強化で忙しい。


 ジャン、フィロ、トムソーヤの三人は、昨日に引き続き、駐屯地の構造やら、地理やらの確認へと出発した。


 ケルトとハンスは、昨日、修正した罠と仕掛けの確認と共に、名案が(ひらめ)いたようで、今日もまた新たな仕掛けと罠を張る為、気を切り倒し、枝を集め、穴を掘り――などなど、肉体労働に精を出していた。


「働き者のガキ共だなあ」


 そして、大人達と言えば――今はすることがないので、しっかり働き者の子供達と違い、小さく残している焚火を囲んで、のんびーりと座っているだけだ。


「ええ、そうですね」


 じーっと、何かを言いたそうに、聞きたそうに、ジャールの眼差しがセシルに向けられているが、セシルは知らん顔。


 子供達が一体何者なのか、ジャールも探り出したいのだろうが、セシルは説明する気配も様子もない。


「少し、この駐屯地の周囲の地理を、確認したいのですけれど?」

「反対側の国境側に行けって?」


「いえ、それはさすがに危険すぎるでしょう。ただ、この駐屯地の周辺だけでいいのですけれど。三人でお願いできますか?」


「まあ、その程度ならいいけどな」

「伯爵家からの証明書を出しましょう。それを見せれば、内門の出入りは、それほど問題にはならないでしょうから」

「まあな。あれじゃあなあ」


 穴だらけの全く役にも立たない内門の見張り番だ。


「あまり奥まで踏み込まなくていいですよ。それから、もし、敵が徘徊していた場合、すぐに撤退してきてください」

「ああ、わかった」

「では、お願いしますね」


 仕方なく、ジャールがリエフに首を振る。

 二人が立ち上がり、リアーガも立ち上がった。


 ふと、セシルが何かを思い出したのか、思いついたのか、

「この駐屯地から、横流しの商品や物資を買い取っている闇業者のことについても、なにか話が聞けないかしら?」


 ジャールは、昔から些細な市勢の情報を聞き出してくるのが得意だった。

 話のついでだ、と本人は言っているが、そこらで転がっている噂やら、話を拾ってくるのが、とても上手かったのだ。


「ああ、それなら、ブレッカの商店街でも、顔出してみるか。なにか買ってくるか?」

「じゃあ、干し肉でも。代金は後払いで」

「いいぜ」


 それで、“お買い物”程度の仕事も任され、三人が馬を引いて駐屯地を去っていた。




読んでいただきありがとうございました。

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