* Д.а 予期せぬ *
長らくお待たせいたしました。少々、体調を崩し、投稿が大分遅れてしまいました。これから、エピソードの続行です。
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「せっかく外出していますので、今日は、このまま領地内の食事処でランチなどいかがでしょうか?」
楽しいお買い物も終え、このまま邸に戻ろうかと移動を始めた一行。
宿場町側の幌馬車が停まる停車駅に向かってゆっくり進んでいく全員の前で、セシルもそんなことを勧めてみた。
今日は、領地内でどこもかしこも豊穣祭の後片付けで多忙だろうから、領地内の視察は明日以降と計画されている。
それでも、天気が良く、せっかく邸を離れて外出してきたので、このまま邸で籠っているよりは、少し散歩を継続したら楽しいのではないかしら、なんてセシルも考えたのだ。
そこらで豊穣祭の片づけに当たる領民達がいるから多忙であっても、何件かの食事処は、豊穣祭での疲れもみせず、頑張って次の日からお店を開けてくれるところがある。
そんなに毎日、根を詰めてお店を開店しなくてもいいのではないかな、とセシルも話してみたが、順番で店番をしながら、お昼を過ぎたら早めにお店を閉めるから大丈夫ですっ、と商売繁盛を見逃さない頑張り屋なお店の主人達だった。
だから、お昼の時間が近づき、領地内にもある何件かの食事処もランチの準備で忙しいことだろう。
「ああ、それはいいですね。では、行きましょう」
そして、全く問題もなく、一人でさっさと決めているレイフだ。
邸に戻って、することもなく暇になるくらいなら、もっと視察を楽しむべきだろうとの意気込みが、簡単に見て取れる。
ふと、セシルの誘いを聞きながら、ギルバートも考えることがある。
「領地内の食事処ですか? 領地内にもそのような場所があったのですね」
実は、ここ数年、毎回、豊穣祭に招待してもらえたギルバートは、セシルの親切から、視察巡りでかなりの場所を回らせてもらった経験がある。
領地内の視察でも、銀行を見せてもらったり、小学を訪ねたり、豊穣祭後の後夜祭が開かれる大会場を回ったりと、色々な場所を見学させてもらった。
それでも、領地内にあるらしい食事処は――お目にかかったことがない。
「ええ、領地内の大通りに沿って、何件かはあるのですのよ。レストランなどは、宿場町の方にかなり移動させましたので、領地内に残している食事処は、ほぼ領民用のランチがメインとなっていますの。仕事中で、家に戻ってランチを取るよりも、食事処でランチを取ったり、お持ち帰り用のランチなどを買い込んだりと、そちらの方が簡単ですものね」
「お持ち帰りのランチ」
ふーむと、その新たな発想を聞いて、ギルバート――だけではなく、全員が、興味深そうにセシルの話を聞いている。
「ギルバート様は、領地内の食事処など、まだ行かれていませんでした?」
「そうですね。大通りに沿っているのなら、たぶん、後夜祭に向かう時に目にしたかもしれませんが、後夜祭が始まる時間では、お店は閉まっていましたから、まだ一度も訪ねたことがないのです」
「まあ、そうでしたの?」
ここ数年で、ギルバート達もセシルの領地に詳しくなったものだと思っていたセシルだったが、こんな目先に、まだ視察を終えてない場所があったなんて。
何事にも“商売繁盛”、“宣伝”が一番である。
領地内にある食事処は、まだ領地が栄えていない時代から、徐々に設置した食事処で、コトレア領内では年季がある場所だ。
ただ、最初の方は、屋台のような食事処やお店がポツポツと立ち並ぶようなものだったが、それから、徐々に、セシルは小さなお店を並べながら一点集中化させ、ショッピングモール型のスーパーに改造してみたのだ。
とは言っても、日本のような巨大なスーパーマーケットやショッピングモールからはかけ離れている、小さなものだったが。
むしろ、現代の本州などで見られる、商店街の小型版だろうか。
大型のショッピングモールを連想させる建物の建設には、時間もかかれば、費用もかなり要するものだ。
それで、大通り側からの入り口を作り、そこから一本奥にずれた道に沿って、個別の商店を立ち並ばせている。
昔は、大通りから一区画離れた程度の長さのショッピングモールだったが、今では、二区画ほど伸びて、かなりの長さにはなったものだ。
商店街が並ぶ区域はショッピングセンターとして扱っているので、歩く場所は、全部、歩行者用だ。
領地内用の食料品が買える“スーパー”に、日常雑貨を置く店、食事処に、今ではセシルが売り始めている“クララ・ステラ商会”の家具類なども置かれているほどだ。
「楽しみですね」
全員は宿場町を出て領地内に戻る為に、ゆっくりと通りを歩いていく。
お店を出てからも、セシルはオスミンの手を取って一緒に歩いているので、セシルとオスミンは仲良く手を繋いで歩いている状態だ。
オスミンにとっては、女性と手を繋いだまま歩くことなど初めてで、それでも、大人と子供が手を繋いで迷子にならないように一緒に歩くことも初めてで、照れくさく、嬉しくて、歩きながら、その柔らかそうな頬がにやけて緩んでしまっている。
「オスミン様、これから行く食事処は、豊穣祭でも出ていなかった食事などが出されているのですよ」
「ほんとうですか?」
「ええ、そうですね。 そこでは、大抵、領地内での新作品や、これから売りに出そうと考えている商品などが出されているのですよ」
「ええ? じゃあ、セシルじょうも、たべたことがないのですか?」
「ふふ。私はありますわ。新製品など、やはり、ちゃんと試して味見をしてみないことには、売れるかどうかも判りませんものね」
「おいしいですか?」
「ええ、とてもおいしいですわよ。楽しみにしていてくださいね?」
「はいっ」
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)
Σας ευχαριστούμε που διαβάσατε αυτό το μυθιστόρημα





