В.д 後祭りも、お楽しみ満載 - 07
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「これが、おもちゃですか? 面白いですね」
「領地でも、段々と人気がでてきていますのよ」
「子供には、珍しくて、きっと楽しいおもちゃでしょう」
大人だって、こんな風に手で遊べる道具などほとんど見たことがないだろう。
そして、“遊ぶ”という概念は、同年代の子供が揃う王国学園に通う年代になって、初めてギルバートだって知った概念だった。
だから、オスミンは、さっきから、一人でおもちゃを使って遊んだまま、ほぼ、セシルやギルバートの存在を忘れているかのような集中だ。
嬉しそうに、何度も、何度も、ダルマ落としで、コンコンと、ダルマを叩いては、それを積み上げ直し、そうやって一人で遊んでいる。
ギルバートだって初めて見るおもちゃだけに、でんでん太鼓をしっかりと鳴らしてしまっていたほどだ。
「ギルバート様。オスミン様をここに残しておきますので、少々、席を外してもよろしいですか? 一応、階下でも、お二人がどうなっているのか、確認してこようと思いまして」
と言うか、“ものすごい”高位貴族を相手にしているお店の店主や女将が心配になって、確認しに行った方がいいだろうな、とはセシルも口に出さない。
「わかりました。我々は問題ありませんよ」
オスミンだけではなく、ギルバートとクリストフも、子供用のテーブルの前で屈んで、しっかりとおもちゃで遊んでいる。
しばらく三人を残していっても、全く問題なさそうだった。
それで、セシルはゆっくりと階段を降りて行った。
「あの……、宰相閣下……。そちらも、お買いになられるのですか……?」
それで、階段を降りて行く途中で、リドウィナの――なんだか、困惑しているような声が耳に届いて来た。
「ああ、もちろんだ。なんとも珍しいものばかりだなあ」
そして、嬉々とした声で返答しているのは、もちろん、レイフだ。
セシルが階下に降りて行くと、店主が、ペコペコと必死で頭を下げているのだ。
「ありがとうございます……」
「ああ、それも、一緒に置いておいてくれ」
「かしこまりました……」
レジの方に近付いていくと、セシルを見つけた店主が、あまりにあからさまに、ホッとした顔を見せる。
「マスター……」
「あら……。ごめんなさい。少し放ったらかしにしてしまったかしら?」
「いえ……」
ふるふると、店主が首を振るが、チラッと、レジの机の上に並べられている――品々を見て、セシルもちょっとだけ感心してしまった。
「もしかして――こちらが、全部お買い上げなの?」
「は、はい……。後で一括して支払いをなさってくださるので、それまで一緒に置いておくようにと、こちらに持ってきました……」
「まあ、そうでしたか」
商売繁盛で、とてもいいことだ。
だが、すでに、レジの机の上に乗っている品々――の数は、なんだか、端から端まで、すでに、全部の便利グッズをかき集めたかのような量である。
「店主」
「あっ、は、はいっ……!」
また、レイフに呼ばれ、大焦りで、店主がレイフの隣に走って行った。
「これは、なんだね?」
「あ、そ、それは……」
そして、冷や汗もので、必死に、店主がレイフに品物の説明をしていく。
これは……レイフに付き添って、セシルがレイフの世話をすべきなのだろうか、少々、セシルも考えものだ。
このまま、店主をレイフの元に残しておくと――きっと、店主の方は、ものすごい緊張して、セシル達が店を出る頃には、精神的疲労で、動けなくなってしまっているかもしれない。
だが、二階には小さなオスミンがいる。ギルバートとクリストフが一緒にいてくれるとは言え、独身男性に子供の世話ができる――とも、思えない。
そして、これだけの――量の品々を買い込んでいるレイフの隣で、全部の品物の説明をするだけの気力が、セシルにはあるだろうか……。
ふーむ、と少々考えてしまって、セシルは胸内で、店主に謝っていた。
(ごめんなさい……。宰相閣下のお相手、よろしくお願いしますわね……)
緊張しまくっている店主には申し訳ないが、今回は――セシルも、レイフの相手を遠慮してしまっていたのだった。
そして、そそと、静かにその場を離れ、また二階へと戻って行く。
「階下は、どうでしたか?」
セシルが戻って来ると、ギルバートがしゃがんでいる場所から顔を上げた。
「なんだか……、レジの机がたくさんの品物で埋まっているようでしたわ……」
「そうなのですか? ――ああ、いえ……。そうですね、きっと――」
そして、ギルバートは一人で勝手に納得して、それ以上、深く説明をしないし、説明を促さない。
「勝手に放っておいていいですよ」
「そう、ですか……」
あれだけの量を買い込んだのなら、後で、箱詰めでセシルの邸に届けてもらった方が、簡単なのではないだろうか。
会計を済ます時に、セシルも、そう提案してみるべきだろう。
店にある商品を全部買い上げてくれそうなお客様には、商売繁盛に感謝。ありがたや……かしら?
「皆様は、なにか決まりましたか?」
「私は、この「よーよー」 というものを買ってみようかと。風車も珍しかったのですが、持ち運びでは難しいかもしれませんしね。この「よーよー」 なら、私のショルダーバッグに入れても、簡単に持ち運びができそうですから」
「そうですか。気に入ったおもちゃが見つかって、良かったですわ」
ギルバートにも気に入ったおもちゃが見つかって、セシルも嬉しそうだ。
実は、これから、ギルバートは騎士団の執務室で詰めている時は(書類の整理を押し付けられて)、無意識で、椅子に座りながら、ヨーヨーを引いては上げて、上げては落とし、などなど、そんな時間を潰すようになっていたのは、これから少し後の話である。
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)
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