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В.д 後祭りも、お楽しみ満載 - 04

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 だから、ショルダーバッグの売れ行きが好調になってきたので、今度は、セシルは女性用のバッグのデザインを推進しているのだ。


 まずは、気軽に持ち運びができる巾着のようなものから。

 巾着なら構造が簡単で、バラエティーにも飛んで、製作時間も省略できる。


 リドウィナがあまりに真剣に悩んでいるので、セシルは違うバッグを取り上げてみせ、

「こちらの巾着は、口の周りから垂らした布で、見た目は花のように見えますでしょう?」

「――はい……、そのように見えますわ」


「持ち運びにかわいいデザインですので、公式な集まりでなければ、リドウィナ様もお使いになれるかもしれませんわよ。それで、こちらの巾着は、デザインはあっさりとしていますけれど、底の部分が二重になっていますから、少し重いものでも入りますし、この花形の巾着と比べれば、大きさも少し大きいですから、荷物が多い時など便利でしょうね。侍女の方用に、など? きっとリドウィナ様から贈り物でしたら、喜ばれるのではないでしょうかしら?」


「え、ええ……、きっと、そう思いますわ……」


 それでも、まだ、どうしようか……と、悩んでいるようなリドウィナだったが、意を決して(なぜ意を決するのか?)、二つの巾着を取り上げていた。


「あの……わたくしも、これを、いただこうかと……」

「ええ、それは良かったですね」


 買い物一つで勇気がいるなんて――本当に箱入りのご令嬢である。


 全員がショルダーバッグの買い物を終えて、お店の外に出て行くと、さっきまでは静かだった通りが、人で溢れ出していた。


 通りに出されていたたくさんの露店の取り壊しなどが始まったようで、あちこちで、賑やかな活動が始まっていた。


 そして、旅行客も、のんびり朝を過ごし、これから自分達の家に戻って行くのだろう。


 子連れだったり、若い団体だったり、年齢層も幅も広く、色々な観光客が豊穣祭にやって来ていたようだった。


 両方の領門に向かって、ゾロゾロと団体が動き出している。


「ああ、観光客も旅支度を始めましたね」

「豊穣祭後、観光客はすぐに帰ってしまうんですか?」


「ええ、そういう場合が多いですわね。豊穣祭前日にやって来ることができる観光客なら、昨日も入れて、二泊三日ですからね。離れている場所に帰って行く場合、旅路にも日程がかかってしまうことでしょう。ですから、大抵は、豊穣祭を終えた今日に、観光客が家に戻って行くんです」


 なるほどと、ゾロゾロと動いていく団体を見送っているセシルと同じように、その観光客の姿を眺めているギルバートだ。


「ああ、そう言えば、私も、このように、豊穣祭を終えて、あなたの領地に滞在させていただいているのは、今回が初めてですね」


「あら、言われてみれば、そうですわね」

「私のおかげではないか」


 自慢されて、セシルとギルバートの二人が、ちらっと、後ろを振り返った。


「良かったではないか、長くこの領地にいることができて」

「ええ、まあ……」


 そりゃあ、ギルバートだって、セシルともっと一緒にいられる時間ができて、嬉しくないはずはない。

 いつもは、豊穣祭の後祭りを終え、挨拶を済ましたら、速攻で王国に旅発っていたから。


 だからと言って、セシルと一緒にいられることが――なにも、レイフのおかげだ……とは、締めくくりたくはない。


 そんな風に……ありがたく思いたくも、ないなぁ。


 なにしろ、レイフは、余計なお荷物に、予定にない世話まで押し付けて来た張本人なのだから。


 ギルバートもセシルも、暗黙の了解だったのか、その場では、レイフに反論はしない。


「皆様、この後はどうなさいますか? 今日は、後片付けなどで通りも忙しく、宿場町での観光はできませんものね。片付けが終わりまして、落ち着いた時に、宿場町の観光をしていただきますから」

「そうですねえ――」


 ふーむと、レイフの視線が周囲の通りに向けられる。


 確かに、今日は、豊穣祭の後片付けで、通りは露店の機材が置かれていたり、領民達の移動が激しい。


「確かに、通りは後片付けで混雑しているようですが、“なんでも雑貨屋”という店は、開いているのですか?」


「どうでしょう……。これから旅立つ観光客用に、お店を開けているかもしれませんね。そちらをご覧になりますか?」


「ええ、是非。なんでも、面白いものが揃っているらしいですから」

「では、先に確認してみましょう」


 セシルは、自分に付き添っている護衛の一人に手を上げて、こちらに呼ぶようにした。


 すぐに、一人の若い騎士が駆けて来る。


「どうなさいました?」

「悪いのだけれど、“なんでも雑貨屋”が開いているかどうか、確認して来てくれませんか?」


「わかりました」

「もし、お店が開いていない場合は――」


 それで、セシルが騎士に小声で話すように、少しその顔を寄せて行く。


「お客さんがいらっしゃっているから、プライベートでお店を開けて欲しい、と頼んでみてね?」

「わかりました」


 この場合、プライベート――とは、他のお客様にはお店を開けず、ただ、セシルが許したお客だけをお店に呼ぶ時に使用される。


 このコトレア領、宿場町では、滅多に、プライベートでお店を開けることはない。大抵、どんなお客様でも歓迎で、誰でも、いつでも、お店にやって来られるようになっている。


 たまに、新規のお店がオープンした場合など、最初のゲストがいつもセシルなので、そう言った場合にだけは、セシル限定で、プライベートでお店を開けることもあるのだ。


「すぐに確認してきます」

「ええ、お願いね」


 若い騎士が一礼を済まし、お店の方に小走りに駆け出していく。


「宰相閣下は、なんだか、随分、この領地のことにお詳しいんですのね」

「ええ、まあ……。私の、影響もありますが……」


 レイフの性格だと、自分が気になったり、興味がある話題には、黙っていられない性質(たち)なのだ。


 だから、レイフは、毎回、毎回、ギルバートがコトレア領から戻って来ると、委細漏らさず、その報告を()()聞いているなど、セシルは露にも思わないことだろう。


 オスミンはあまり今の状況を把握していないので、ポカンと、ただ、セシルとギルバート達を見上げているだけだ。


 ただ、オスミンは自分の気に入ったショルダーバッグを買ってもらったので、そのことで胸が一杯で、待ちぼうけさせられても、気にしていない。


 こうやって外出すること自体、オスミンにとっては初めての経験だったから。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


Grazas por ler esta novela

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