В.г 後夜祭 - 03
ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。
「この領地にやってきた騎士達には、ご褒美ですねえ」
「少しくらいは問題ないだろう。こんなに賑わっているのに、参加できないのは、つまらないだろうしな」
「ええ、ええ。心ある上官を持てて、私達も嬉しく思っておりますよ」
思っていない口調にしか聞こえないが、まあ、クリストフはいつものことだ。
「少しずつ並んでみましょうか? それとも、行列が空になるまで、待つべきでしょうか?」
「いえ、せっかくですので、混ざらせてもらいましょう」
「わかりました。オスミン様、その小袋は落ちないように、紐の部分を手にかけておくと、よろしいのではないかと?」
「てに? どうやってですか?」
「すみません。少し失礼いたします」
シリルが屈んで、オスミンの手に紐の輪っかの部分を通してやる。
「それで、手の平の方で、この紐の部分を握ってみてください」
「はい」
「それなら、落ちる心配もなく、袋もしっかりと持てますので」
「わかりました」
「では、案内いたします。どうぞいらしてください」
「はいっ!」
全員がベンチから立ち上がり、シリルの後についていく。
「シリル殿も、子供の扱いに慣れているんですねえ」
ここ数年、シリルはギルバート達の案内役をしてくれていて、利発で聡明なシリルはよく気が付くし、ゲストの接待が上手だな、とギルバートもクリストフも感心していたものだ。
伯爵家の子息なのに。
それだけではなくて、シリルは、セシル同様、子供の面倒を見るのも上手かったらしい。
そう言えば、最初の年に豊穣祭に参加した時も、あまりに自然に子供を抱き上げていた記憶がある。
もしかして――シリルも、シリルやセシルが説明していないだけで、孤児の面倒をみていたのかな? ――なんて疑問も上がってくる。
オスミンとレイフは興味津々といった様子で、行列ができている場所の後ろに並び、大人しく自分達の番を待っている。
王子殿下達を行列にならばせるなんて! ――と非難され、不敬罪で極刑にかけられてしまっても文句は言えない状況だが、それはそれ。
王子殿下二人にとっても、貴族でもない一般市民の間に交じって行列に並ぶなど、今夜が生まれて初めての経験だった。
小さなオスミンは、大人達に混ざり、大抵、視界が塞がれ、遠くも見えず、大人達の足ばかりを見ていることが多い。
今日も、そうだった。
でも、行列に並んでいる間は、全員が移動していないから、オスミンはレイフとギルバートの間に挟まれながらも、こっそりと、ギルバートの足の後ろから顔を出してみる。
キョロキョロと、活気があり賑わう周囲を眺めて、その丸い瞳が更にクリクリと丸くなっていく。
こんなにたくさんの人に囲まれたのは、今日が初めてだ。
こんなにたくさんの人がいるのに、誰一人、オスミンに近寄ってこない。おべっかを使って、うるさいほどに寄ってくる貴族達もいない。
皆が皆、夕食が待ちきれなくて、お皿に食事を(山盛り) 積み上げていくのに、それ以上の食事を狙っている様子がおかしくて、新鮮で、オスミンはニコニコと顔を緩めたままだ。
「オスミン、おいで」
「はいっ、おじうえ! ぼくも、おさらに、いっぱいですか?」
「最初は、少しずつ、色々なものを試してみるのが楽しいんだよ。それで、好きな食事があったら、おかわりをすればいい」
「おかわり、ってなんですか?」
「2回も3回も食事をすることだよ」
「ええっ!? そんなこと、していいんですか?」
「今夜は、好きなものを食べていいからね。お腹が一杯になって、もう、お腹がはちきれてしまうかもしれないなぁ」
ギルバートの表現がおかしくて、くすくすと、オスミンも声を出して笑っている。
ここで、一つ、注意点がある。もちろん、ギルバートがセシルからしっかりと言い渡されていることだ。
「ギルバート様、オスミン様の食事は、きちんと様子を見てあげていて下さいね? 子供達は、たくさんの食事が目の前にあると、つい、なんでもかんでも取ってしまい、自分が食べきれる分以上の量を取ってしまう傾向があるのです。おまけに、お腹がきつくても無理矢理食べてしまおう、なんていうことをして、後からお腹が痛くなってしまったり」
だから、初めは、色々な料理を一口分くらいずつ皿に乗せてみせ、食事が口に合うかどうか、アレルギーなどの心配がないかなどを確認し、全部食べた後で、まだお腹に余裕があるようなら、次のおかわりに行くこと。
その助言をもらっている間、もちろん、兄のレイフは子供の世話役など全く役に立たないだけに、ギルバートもしっかりとセシルの話を聞いていたのだ。
忘れないように、クリストフも混ぜて。
なぜ私までもですか、とは聞き返されたが、そのクリストフを無視して、二人揃ってお行儀よく、セシルの助言を聞いていたのだった。
王子殿下達の番になり、テーブルの上に乗せられた料理を見て、レイフの口元が満足そうに薄っすらと上がる。
「これは、昼間にもあった、「ウェッジ」 というものですか?」
「いえ。油で揚げているようには見えませんから――」
それで、シリルが、テーブルの向こうで立っている女性に視線を向ける。
「これ、オーブン焼きですか?」
「はい、そうです、ヤングマスター。今回は、バジルなどのハーブを混ぜたものなのです」
恰幅のいい年配の女性が、にこにこと、嬉しそうに笑顔を投げて説明してくれる。
なるほどと、頷いて、シリルが皆の方を向く。
「こちらはオーブン焼きのローストポテトに近い形になります。ただ、ウェッジ型の形に切られていて、ハーブなどの香辛料をまぶして、オーブンで焼いたものですね」
「なるほど。「ウェッジ」 というのは料理名でもあり、ジャガイモの切り方だったんですね」
「ええ、そう聞いています。近年では、大分、オーブンが普及してきましたから、家庭でも、ローストの料理など簡単にできるようになりました」
「ああ、そうでしたね」
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)
با تشکر از شما برای خواندن این رمان





