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В.в 豊穣祭 - 11

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* * *



 大満足の昼食も終えて、早速、一行は露店回りを続けていた。


 だが、朝一番でパレードを見終わり、開会式の後からずっと露店回りで歩き続けているだけに、昼からの露店回りは、かなり早くに終わらせることとなった。


 半日近く歩き続けているだけに、オスミンもそろそろ限界がきていることだろうし、深層のご令嬢であるリドウィナなど、こんな長時間歩き続けたことさえないだろう。


 それで、昼食後、一時間ほどは露店回りを続けた一行だったが、それからすぐに、邸に戻り、休憩を取ることとなった。


 邸に戻り、オスミンはお昼寝の時間である。


 ぐっすりと寝付いたオスミンを置いて、セシルとギルバートはレイフの客室を後にする。


 その際、セシルがその眼差しだけをギルバートに向けているようなので、ギルバートが、少しだけセシルの方に寄っていく。


「同行してきた騎士達に、数時間の休憩を取らせてはいかがですか? 豊穣祭は、まだしばらく続きます。王子殿下が休憩を取られている間なら、問題もないでしょう?」


「そのようなお気遣い、ありがとうございます。ですが、心配なさらないでください」


「今は邸の警備を強化しておりますから、大丈夫ですのよ。それに、“宣伝”は、商売繁盛の秘訣でして」


 ふふと、茶目な瞳が笑っている。


 ギルバートもつられて、微かに笑ってしまった。


 この場は、セシルの心遣いをありがたく受け取っておこう。


「ありがとうございます。騎士達も喜ぶことでしょう。豊穣祭は、一応、五時に終わる予定なのですよね」


「ええ、そうです。宿場町までの移動馬車は、続けて出せられるよう指示してありますから」


「そうですか。それなら、それまでに戻ってくるように指示しても、数時間はありますね」


「ええ。豊穣祭は、いい気晴らしになると思いますわよ」

「ありがとうございます」


 これだけ迷惑をかけてしまっているのに、本当に、セシルは騎士達への気遣いも忘れない。

 それを初めから予定に組んで、人員の配置も済ませている。


 そんな苦労を一切見せないで、なんでも卒なくこなして、本当に感服である。





「さすが、としか言いようがないな」


 ふう……と、レイフが一息つきながら、用意されたお茶をゆっくりと口に含んでいく。


 オスミンは、さっきからずっとベッドで熟睡である。


 今夜は夜遅い行事があるから昼寝しましょうね、とセシルに促され、最初は渋っていたオスミンも、ベッドに入るや否や、数分もしないで熟睡である。


 オスミンにとって、コトレアの領地にやって来ることは、初めての“遠出”であり、馬車の中でもはしゃぎっぱなしで、領地に着くなり、見ること聞くこと全部が新鮮で、驚きで、本人が気づかずに、緊張したままの状態だった。


 だから、昼寝中でも、レイフのベッドで身動きもしないほど熟睡していた。


 リドウィナも、レイフから、夜まで休んで良い、と親切に促され、今はあてがわれている客室に戻っていた。


 レイフの客室にはギルバートとクリストフが揃い、レイフの向かいで、応接用の長椅子に腰を下ろしていた。


「ご令嬢はどこに?」


「今から、領地内の重鎮(じゅうちん)達やその他の会合、組合の代表などからの挨拶を受けていらっしゃるはずでしょう」


 セシルは詳しい事情の説明はしなかったが、全員を客室に送り届けてから、



「では、夕方に」



と、その言葉を残して、客室から去っている。


 だが、ここ二年程の経験からしても、豊穣祭でのセシルの業務は、日頃の倍以上は多忙で、豊穣祭当日だって、代表者からの挨拶を受けたり、商工組合とのお祝いを受けたり、孤児達の面倒をみたりと、一息つく暇さえないほどに超多忙な一日を過ごしていた。


 それほどの業務や公務が、今年で突然変わることもない。


 おまけに、今年は――予想外の、余計な――王族の世話までさせられている重任だ。


 多忙を極めているのに、午前中にあったであろう挨拶や祝い場を設けた公務は、たぶん、オスミン達がいたから、午後に引き伸ばされたのだろうことは、ギルバートも簡単に予想がついていた。


「何においても、効率的で無駄がない。本当に、さすが、としか言いようがない」

「どのような点が?」


「例えば、今日の豊穣祭。年々、賑わいをみせて、かなりの観光客も訪れるようになったとの話だったが、この領地全体を考慮すれば、領地自体はそれほど大きな町ではない。人口もそれなりだ。それなのに、突然やって来る観光客を許容できるだけの町の対応、運営、観光客への宿泊設備、そういったもの諸々が、問題なく運営されている」


「ここ数年で、豊穣祭用に設置される、簡易宿泊設備を整えたそうです」

「簡易宿泊設備?」


「ええ、そうです。要は「雑魚寝」 を基本とする、宿泊用テントが、宿場町の裏側に設置されるのです。テントの場所が空いているのなら、観光客は誰でも使用できます。通常の宿や、宿泊施設とは違い「共用設備」 ということなので、宿泊代も格別に安くなっているそうです」


「では、その治安は?」


「もちろん、簡易宿泊設備には、常備、町の護衛が配置されています。そして、観光客ですから、個人の貴重品や金銭を持ち歩いていることでしょう。それで、宿場町の一角に、“貴重品預かり場”が設けられているんです。そこで、自分の貴重品などを預けておくことができ、その交換として、番号札がついた首にかける鎖を渡されます。それをもっていけば、何度も自分の持ち物を取りにいくことが可能で、また預けることも可能です」


「大金を持ち歩くのは、さすがに、あれだけの人込みでは、安全ではないからな」


「そうですね。ですから、観光客はこの地にやってくると、必ず、あの中央の観光情報館で名前の登録を済まし、それから、初めての観光客であろうと、以前からの観光客であろうと例外はなく、領地内での注意事項をきちんと説明されるのです。それに反した者は、町の護衛に観光の差し止めを言いつけられることも条件に」


「ほう……。徹底している」

「そうですね」


 その話を聞くだけでも、レイフには全く聞いたこともないような運営方法ばかりが、施行されているものだ。


「この地では、飲酒は禁止されていません。特に、このような祭りの行事であると、観光客も、飲酒する機会が増えるそうです。その際、飲酒による暴力行動や、迷惑行動を起こした者は、即座にその場で捕縛され、“反省室”で、しっかりと一夜を明かさなければならないそうです」


「反省室? 牢屋ではなく?」


「違いますよ。そういった行為で罪を犯した罪人、と扱うわけではないので、“反省室”なのです」

「それで、なにを反省するのだ?」


「まずは、頭からしっかりと水をかけられ、それで酒が抜けたら、迷惑をかけてしまった場所、人に謝罪しに行き、反省室で一夜を過ごし、翌日、豊穣祭の後片付けを手伝い、そこで放免されるそうです」

「なるほど」


 どんな状況でも、動ける人間は労働に必要だと、見事な作戦である。



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


感謝您閱讀這本小說(gǎnxiènín yuèdú zhèběn xiǎoshuō)

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