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В.б ようこそ、コトレアへ - 06

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「ここの、肘をかける場所に手を置きますと、身体が安定しますわよ」

「はい、わかりました」


 言われる通りのまま、オスミンはどこまでも素直に従っていく。

 二段目の段にも足を乗せて、ひじ掛けに掴まった。


 椅子に座ってください、と言われたので、座るには立ったまま、クルリと向きを変えなければならない。


 段の上は狭くもないが、広くもない。


 それで、慎重に、慎重に、そろり、そろりと、オスミンが向きを変えてみた。そして、ストンと、木の椅子に腰を下ろす。


「あっ!」

「どうしました? どこか痛いですか?」


「いいえ。ちゃんと、ぼくはすわれました!」

「ええ、そうですわね。座り心地は、どうでしょう?」


「ちゃんとすわれました!」

「痛くありませんか? クッションなどは?」

「いらないですっ!」


 子供の体重はそれほど重いものではないから、この組み立て式の子供用の椅子は、全部、木でできている。


 椅子の部分も平らな板で、クッションは置いていない。


 長時間でなければ、それほど痛いものではないはずだからと、セシルも、まだ、クッションは置いていなかったのだ。


「この体勢で、食事ができそうですか?」

「はいっ!」

「そうですか。では、ピッタリだったようですね」


 これで、オスミンの椅子の問題は解決である。これから、邸で食事を済ませる時は、いつも、この組み立て式の椅子が使える。


「便利ですねえ」

「本当に」


 ワヤワヤと、椅子の周りに集まっている全員が、物珍し気に、興味深げに、感嘆している。


「今回は、オスミン様がいらっしゃるということで、急遽、試作品を作ってみたのです。オスミン様で、実験させてもらっていることになりますわね」


 一国の王子殿下を使って、新製品の実験もどきを実行するセシルも、肝っ玉が据わっている。


 それから全員が席につくと、今夜の夕食が運ばれてくる。


 今夜はダイニングホールでの夕食だから、邸の当主であるセシルが端側に。

 その隣にギルバート、ギルバートとは反対側にヘルバート伯爵のリチャードソンと家族が。


 セシルの対局の端には、レイフ殿下。その横に、オスミン殿下が座っている。

 リドウィナは、オスミン殿下に向き合う反対側の席だ。


 ダイニングホールの隅には、ギルバートの護衛として付き添ってきたクリストフが、起立したまま控えている。


 そして、残り二人の王子殿下の護衛として付き添ってきた騎士達が五人程、ただ静かに控えている。


 食事の配膳をしている使用人達の顔は、ものすごい緊張が走っていた。


 ここ二週間ほど、セシルの母親であるレイナから、しっかりと再教育を受けた使用人達である。


 それでも、さすがに、一国の王子殿下達をもてなすなどという経験がないだけに、粗相をしないように、ヘマを見せないように、間違わないように――と、ものすごい緊張した形相が伺える。


 ギルバートも第三王子殿下という立場なのだが、今までは、セシルが気に入っている、こぢんまりとした部屋でテーブルを囲って食事をしている形だった為、こんな風に、正式な場で、貴賓(きひん)を迎えるのは初めてなのだ。


 まあ、これも経験の一つでしょう。

 慣れなきゃね。


 少々、可哀想かな、とは同情しているセシルだが、これから一週間ほど、毎日、使用人達は、王族の給仕の仕事を任されるのだから、仕方がない。


「おや? これは何ですか?」


 食事の配膳が終わりにかけて、オスミンのテーブルには、大人と違った食器が並べられて、テーブル越しから、レイフが興味深そうに問いてくる。


「それは、子供用の食器なのです。子供用のカトラリーも、用意しました」

「全てが子供用! それはすごい」


 なぜかは知らないが、そんな些細な違いを、レイフは、大層、気に入ったらしい。


「なぜです?」

「なぜ? それは――子供用だけ、食器やカトラリーが違う、という質問でしょうか?」

「ええ、そうです」


「この位の年齢の子供というのは、毎日、たくさんのことを学んでいっているんです。見ること、聞くこと、経験すること、その全てを、ものすごい早さで吸収し、身に着けていっているんですのよ。ですが、知識を身に着けて行っているからといって、すぐに応用できるような能力が発達するわけではありません」


「反復も必要ですね。繰り返しの練習が」

「ええ、そうです」


 だから、そうやって、繰り返し学んで行く間、わざわざ、無理に大人用の方法を強制する必要はないのだ。


 子供の手は、とても小さなものだ。大人の手とは、全く違う。


 大人用のカトラリーは、少々、重さもあり、長さもあるものだから、子供の手では、かなり無理をしてしまうことになる。


「無理をさせて子供に教えるのではなく、使い方をきちんと学ばせることに意義がありますから、大きさや重さが違うことは、問題ではありませんの」


「なるほど。それで、子供用の食器にカトラリー」


「ええ、そうです。きちんと、フォークやナイフが使えるようになれば、自然と、成長していくうちに、大人用の重いカトラリーも使えるようになります。本来の目的は、カトラリーに慣れ、それを使って食事ができること。大人用を使いこなすのが、目的ではありませんわ」


「なるほど」



読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)


շնորհակալություն այս վեպը կարդալու համար

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