В.б ようこそ、コトレアへ - 02
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宰相閣下であり、第二王子殿下であるレイフには、まだ幼いオスミン王子殿下も一緒なだけに、付き添いとなるメイドたちは合計で四人。
この日の為に、しっかりと厳しく、メイドの仕事を躾し直してもらった若いメイド達である。
コトレアの豊穣祭の準備だけで多忙な日々が続く間も、若いメイド達は、伯爵夫人であるレイナによって、礼儀やマナー、言葉遣いまで徹底して、再教育をしてもらったのだ。
隣国、大国の王子殿下が二人も揃って邸に滞在することになり、その割り当てのメイドの名前が呼ばれたその瞬間、メイド達の顔が一気に青ざめてしまったのは言うまでもない。
大国の王子殿下のお世話をできることになって羨ましい~……などという、賞賛や嫉妬の声が上がることもなく、すでに、その場に集まっているメイド達全員から、ものすごい同情の眼差しを送られてしまった若いメイド達。
些細なミス一つで、メイドの首が飛ぶだけではなく、敬愛する領主であるセシルに恥をかかせてしまう……、迷惑をかけてしまう……。などと、ものすごい重責を押し付けられて、若いメイド達の顔が血の気も失せるほどに青ざめていたなど、今回の旅行に大乗り気のレイフなど、全く気が付いていないことだろう。
そして、今回は、メイド達以上に緊張して、ひと時も気を抜くことができないのは、領主のセシルではなく、むしろ――伯爵夫人のレイナだったのだ。
隣国で大国であるアトレシア大王国の王子殿下との婚約が正式に決まり、来年、年が明ければ、二人の婚儀が開かれる。
大切な一人娘を王族に嫁がせるだけでも大問題なのに、それが、ノーウッド王国ではなく、全く血筋も関係ない隣国に嫁いでいくことになるのだ。
一人娘が王族に嫁ぐことは、ヘルバート伯爵家の名誉も格も上がることは間違いないのだが、それでも、可愛い一人娘である。
血の繋がりはなくとも、大事に見守ってきた一人娘だ。
近隣諸国とは言え、さすがに、違う国に娘が嫁いでいくのなら、その勝手も違うだろうし、習慣も違うだろうし、慣習も違うことだろう。
そう言った些細な違いが重なり、積もり積もって、大問題にもなりかねない。
だから、セシルの婚約が決まってからは、ヘルバート伯爵家だって、アトレシア大王国の王族に迷惑がかからないように、セシルに問題が降ってこないように、ノーウッド王国内の貴族達との親交にも、いつも以上に気を配っていたほどなのだ。
その一人娘が嫁ぐ先の王子殿下達がコトレア領に訪問してくるという報せを聞いて、驚き以上に大ショックを受けてしまったのは、母親のレイナである。
「さすがに、お世話など、無理でしょうぅ……!」
セシルの邸で働いているメイドが悪い、役に立たない、などと言っているのではない。
全員、いい子達で、若いながらにしっかりと仕事のできるメイド達である。
だが……全員、平民出身である。
ここで一言言うが、レイナは貴族と平民で差別をしているのではない。お給金をもらっている使用人達なら、貴族出身だろうと、平民出身だろうと、しっかりとその働きをみせるべきであると、レイナも考えている。
ただ……王族のお世話となると、その話は、少々、別になってくる。
ノーウッド王国だって、きっと近隣の王国諸国だって、王族に使える使用人達は、貴族出身でなければならない、というような習慣になっているはずだろう。
使用人達は厳しい身元確認や身辺調査をされ、王宮に出仕しても問題にならないように、徹底して選別されるのである。
他の貴族からの推薦状や、信頼なども考慮され、それから、王宮で使用人としての厳しい教育が施される。
だから、一般貴族に仕える使用人達が礼儀やマナーを学んでいたとしても、それだけではきっと足りない状況が出てくるのは、レイナも簡単に想像がついてしまった。
セシルからの報せを受け、もう、その場で、レイナは速攻でコトレアに向かうことを、セシルに返答していたのだ。
「使用人達の再教育をしなくてはいけませんわね……!」
母親の意気込みを知り、セシルも――実は……、母の意見に賛成だったのだ。
レイフのせいで、余計な仕事が増やされ、超多忙を極めているコトレア領で、更なる、余計なストレスを増やしてくれた張本人は、恨みがましい文句の一つも言いたいことだが、この切羽詰まった状況では、邸の使用人達の再教育が最重要課題となってしまったのだ。
一応、セシルの邸には、昔からヘルバート伯爵家に仕えている執事のオスマンドがいるし、ヘルバート伯爵家から付き添ってきた数人のメイド達もいるから、貴族に仕える者達の教育程度は、セシルの邸でも問題はないはずなのだ。
執事のオスマンドは、ノーウッド王国の執事学校を卒業している優秀な執事でもあるから、そこら辺の教育に抜かりはないはずである。
それでも、セシルの邸で働いているメイド達や使用人達は、全員、平民出身である。
ギルバート達がコトレア領にやって来る以前までは、彼らの貴族との繋がりは、領主であるセシル一人きりであり、セシルの両親であるヘルバート伯爵夫妻と、弟であるシリルだけが、彼らの知っている貴族なのだ。
セシルの邸には、滅多にゲストなどやって来ない。
ここ数年、隣国の騎士団からギルバートがやって来るようになったが、メイド達や使用人は、それ以外に、他の貴族と接触したことがないのだ。
ギルバート達は、いつも礼儀正しくて、邸の使用人達が失敗をしていても、きっと寛大な心で見逃していてくれたのだろうとは、使用人達も(大感謝で) 理解している。
今回は、そんな甘いことを言っていられない切羽詰まった状況であるのも、使用人達全員が理解していた。
「あぁ……、失敗をしてまったら、どうしようっ……!!」
ここ数週間、隣国の王子殿下達を迎えるにあたって、邸内でもてんやわんやだ。邸中の掃除だけではなく、急遽、家具の新調を済ませ、その移動や設置、室内の飾り物や置物、その全てを念入りにチェックしたほどである。
その度に、荷物や調度品の移動を課せられる領地の騎士達。
肉体労働を必要とするには最適な若い人材ではあるのだが、騎士達だって、領地の警備や警護の他に、(余計な) 王族の警護の任務を万全にし、シフトを組み替え、領門内外での危険性がないかの確認などなど。
すでに、ここ数週間で、仕事が超多忙を極め、騎士団の団長を務めているラソムなど、ベッドで眠る暇さえもあったのだろうか……。
なににしろ、アトレシア大王国から王子殿下達は、無事に、コトレア領に到着したのである。
更なる――緊張とストレスで、邸の使用人達と領地の騎士達は、きっと神経をすり減らしすぎて、胃潰瘍になってしまったとしても、不思議ではない。
これだけの大騒動をもたらした(悪の根源である) レイフには、本当に、文句の一つでも言ってやりたいものである……。
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)
dankie dat u hierdie roman gelees het





