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Б.а ブレッカの地にて - 07

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「我々は、ノーウッド王国からやって来た者です。ブレッカの戦が勃発したと聞き、その戦で影響が出てくるかもしれない南方地方からの調査と、確認で飛ばされてきました。ここの指揮官に、面会を要請したい」

「ノーウッド王国?」


 そして、さっきとまた同じ反応である。


「我々は、ノーウッド王国ヘルバート伯爵家代行だ。ダーマン中尉に面会したい。中に入ってもいいだろうか?」


 もう、社交辞令もすっ飛ばして、セシルは用件だけを(丁寧に) 叩きつけていた。


「え?」

「伯爵? ――貴族っ!? なんでこんな場所に――?!」


「用件は話したはずだが? ダーマン中尉に面会を要請したい」

「え? 中尉? なんで――?」

「早くしてくれないか?」


 セシルの迫力に気圧されたのか、二人の兵士達が顔を見合わせる。


「早くしてもらいたい」

「あ、ああ、わかった。ちょっと待ってくれ……」


 それは、貴族に対しての適切な言葉遣いではありませんね。

 兵士全員、躾もなっていないなんて、言いませんよね。


 セシルの()()()()バロメーターが、止まることもなく、真っ直ぐに上昇しているのだけが感じられる。


 普段、この程度のことで感情的になるようなセシルでもないし、冷静沈着で落ち着いているだけに、この手のくだらない反応も、態度も、完全無視する傾向にある。


 だが、今日は、バロメーターが順調に上がっていますねえ。

 もうそろそろ、沸騰点に達してもおかしくはないのではないでしょうか?


δ(デルタ)ε(イプシロン)は私と共に。残りは、ここで待っていてください」

「わかりました」


 館の奥に入っていた兵士の返事を待ち、セシル達は後ろのメンバーに馬を預け、入り口付近で立っている。


「入っていいぞ」

「そう」


 ズカズカとも言えなくはない足並みで、セシルを含めた三人が、館の中に足を踏み入れた。


 廊下には、すすけてはいるが、赤いカーペットが長く敷かれ、一応、飾り程度の装飾品は、壁側に並べられている。

 掃除はされているようだが、殺伐とした感じが(いな)めない。


 コンコンと、ある部屋のドアの前で、兵士が扉をノックする。


「失礼します」


 兵士はドアを開けただけで、扉のすぐ横で待っているので、微かに眉間を寄せたままのセシルは、勝手に部屋の中に入っていった。


 かなり広い部屋が広がっていて、その中央に大きな机がある。その後ろに一人の男がいた。

 濃紺の軍隊の制服だろうか――を着て(かなり偉そうにふんぞり返って)、椅子に座っている男が、部屋に入って来たセシル達をジロジロと値踏みする。


「なんだ?」


「我々は、ノーウッド王国からやって来た者です。ブレッカの戦が勃発したことにより、これから予想される流通の不備、または、流通の遮断で影響が出てしまう南方地帯から、確認の為、飛ばされてきました。事情の確認をさせていただきたい」


「はあ? 確認? そんなもん、必要ないだろ」


 ()()()、影響が出るかどうか確認しにきたと言っているのに、なぜ、お前ごときが、その判断を勝手に決めると言うのだ?


「では、ブレッカでの戦はなかった、と?」

「あるに決まってるだろーが」


「その状況は、どうなっているのですか?」

「別に、いつもと変わらん。部族連合が押し寄せて来て、それで追い払えばいいだけだ」


「かなりの数――ではないのですか?」

「さあな」


 え? マジですか?!


 それ、本気で言ってるんですか?


 ブレッカなど、そんなに土地的にも地理的にも言って大きな町ではない。

 そこでの両端で、軍隊は国境を護る責任を任されているのに、すぐ側の反対側で勃発した戦の情報も確認していないなんて、職務怠慢だけで済まされる問題じゃないでしょう?


 役に立たない男を前にして、セシルも、この場で完全に確信していた。



――ブレッカが、部族連合の手に落ちるのも、時間の問題ですね。



 それも、早ければ、次の数週間でその決着が着いたとしても、セシルは驚きはしない。


 そうなると、コロッカルの行き来は完全封鎖されて、コロッカルの注意は、完全に自治の防衛に注がれるであろうから、ノーウッド王国や、隣国の商隊や物流の出入れに気を取られている暇などなくなってしまう。


 ノーウッド王国の南方は、貧乏で小さな農村地帯が多い。自給自足が多くても、ほとんどが、日々の暮らしを細々と暮らしているような農村ばかりだ。


 小麦などが回されないと、特に、今は春にもなっていない冬の終わりで、気候も寒く、冬越えで残っている食糧を頼りにしても、それが長くは続かない。


 これから、困窮して餓死したくない農村からの農民たちが、ドッと、コトレアの領地近辺に勝手に座り込んでしまったら――その対応に、コトレアの領地でも、余計な仕事に、人員を割かなければならなくなってしまう。


 近年、コトレアの発展を知って、宿場町にしている大通りには、かなりの数の商隊が通り過ぎていく。


 コトレアの領境(りょうざかい)で、乞食(こじき)まがいの農民たちが大人しくしているのであれば良いが、手頃な商隊を狙い始めて、コトレア近辺で、野盗やら盗賊まがいの悪事を重ねられたら、コトレア領の信用もガタ落ちである。


 コトレアを避けて、南方での取引・商業を控え、人が寄り付かなくなってしまったら――コトレアは大打撃を受けてしまう。


 なんて……面倒ごとを押し付けてくれるのかしら。



読んでいただきありがとうございました。

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