表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
401/551

В.а 余計な - 03

ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。

 王族で、おまけに、現宰相で、現王太子殿下()()で、その上、小さなこぶ付きの第一王位継承権を持つ王子殿下までだ……。


 ギルバートは新年を明けて、臣籍降下することになっていても、今はまだ、第三王子殿下である。


 そんな王族の王子達が一か所に揃って集まるなど、



「さあ、狙ってください。どーんと来いっ!」



と言わんばかりの愚行である。


 王宮から王国騎士団の護衛が付き添ってこようが、セシルの領地側だって、細心の注意を払い、警備を強化しなくてはならない。


 邸の中で世話をするのに、更なる侍女や侍従の仕事を増やし、王族に対して失礼のないよう、(しつけ)の再教育だって必要となってくるだろう。


 全員分の食事だって、一気に、倍以上用意しなくてならないではないか。


 時間も労力も全く余裕のないセシルに対しての、嫌がらせなのだろうか……。

 あのレイフのせいでっ――!


 はああぁぁぁ……と、セシルにしてはあまりに珍しく、ものすごい長い溜息(ためいき)が吐き出されていた。


 ギルバートもクリストフも、今のセシルの()()がよーく理解できてしまって、かける言葉が見つからない。


 同情なんていらない。

 泣きたいのは、セシルの方だ………。


 はああぁぁぁ……と、その長い溜息(ためいき)だけが吐き出されていた。


「――――百人など、現実問題から言って無理です。ですから、五十人まで……」

「わかりました」


「もう……、仕方がありません。邸の出入りを許可しましょう……。ですが、邸内(やしきない)をうろつくことはやめてください」


「もちろんです。その点は、しっかりと言いつけておきますので」


邸内(やしきない)及び、領地内での帯刀(たいとう)も許可しましょう。ですが、全員私服で。王子殿下達には、豊穣祭や後夜祭で着る軽略装程度にしてください……」

「わかりました」


「この地には、常備の医師がおりません。その際の責任は、一切、取れません……」

「もちろんです」


 ギルバートだって、その点は、しつこくレイフに言い聞かせたものだ。


 まだ幼いオスミンまでコトレアにやってきて、万が一、体調を崩したり、具合が悪くなってしまったのならどうするんだ――と。


 だが、「南西側の国境側に、医師を常備させておこう」 など、レイフの計画に付け込む隙はない。


「豊穣祭で五十人もの護衛を引き連れて歩いてしまったら、通りがごった返しになってしまいます。最も信頼できる騎士だけ、せめて――十人だけに絞って、残りは散ってください」

「わかりました」


 もう、それが、セシルが妥協できる最低限の要求だ。――それでも、セシルは、全然、喜んでもいない。


「五十騎、そして、馬車まで乗りつけたら、宿場町では通りきれません。一度、北上して、ノーウッド王国の王都側から通じる道で、コトレアに入ってこなければならないでしょう」


「わかりました。馬車も目立たないように、注意いたしますので」

「お願いいたします……。後で、北上する迂回路(うかいろ)をお教えしますので……」


「ありがとうございます」

「馬の世話と飼葉(かいば)が、間に合わないかもしれません……」


「それは――うーん……、では、数週間前に、こちらから送ることはできませんか?」

「そうしていただくより、他はありませんわね……」


「わかりました」

「騎士の方々に、馬の世話もお願いしてください……」

「わかりました。その点も言いつけておきます」


 アトレシア大王国の騎士達は、元々、いつも騎馬の訓練も多いから、自分達の馬の世話をすることだってある。厩務員(きゅうむいん)ばかりに世話を任せているだけではない。


「ガルブランソン侯爵令嬢は、お一人だけ、付き人を付き添わせても構いませんが、王子殿下達の世話役は、こちらで用意します。――これ以上の人数は、許容できません……」


「いえ、もちろん構いません。どうか、よろしくお願いします」


「宰相閣下には、王子殿下と一緒に寝室を共にしていただきましょう。王子殿下は、まだ幼く、親元を離れたこともないでしょうし、まして、王宮からお出になられたこともないのでしょう?」


「そうですね」


「それなら尚更のこと、見知らぬ土地にやってきて、見知らぬ大人達に囲まれては、不安になられても不思議はありません。護衛も兼ねて、大人が一緒にいれるのなら、宰相閣下が一番適任でいらっしゃるでしょうから」


「確かに、そうですね」


 レイフがオスミンの面倒をみる責任を取るのは、一理ある。


 おまけに、レイフが言い出した()()()問題のせいで、周囲の人間全員が困っているので、その程度の責任は、レイフが持つべきである。


 テキパキと指示を出しているセシルだったが、もう、完全に心の中で泣いているのではないだろうか。

 さっきから、全然、顔を上げないほどだ。


「申し訳、ありません……」

「――――なぜ……、私が……」


 いや、その気持ちは、よーく理解している。


 ギルバートもクリストフも、あまりに申し訳なくて、謝罪を口にするのも、失礼な状況になってしまった。




読んでいただきありがとうございました。

Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Funtoki-ATOps-Title-Illustration
ランキングタグ、クリックしていただけたら嬉しいです (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
小説家になろう 勝手にランキング

その他にも、まだまだ楽しめる小説もりだくさん。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ