Б.д まずは、土台造り - 02
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さすがは、王妃陛下の“鶴の一声”。
昨日、お茶会を開いてもらえないだろうか、とセシルがお願いしたばかりなのに、その次の日には、もう、すでに、お茶会の準備がすっかりと整っていた。
全員との簡単なミーティングの後、王妃陛下であるアデラは、早速、お茶会の招待状をガルブランソン侯爵令嬢に出してくれたのである。
それで、王妃陛下付きの侍女達がお茶会の準備を済ませてくれて、セシルは案内された場所にやって来ただけだった。
今日は日差しも暖かく、晴天で、外でのお茶会にはパーフェクトな天候である。だから、お茶会が設置された場所は、王宮のガーデンの一角にあるガゼボだった。
以前、(全く望んでもいないのに) 王族を交えての朝食会に参加させられた時に向かった場所も、立派なガゼボが建てられていたが、あの場所は、もっと広い場所で、ガゼボ自体も大きく立派なものだった。
今回は、ガーデンの奥まった静かな場所にひっそりと建てられているガゼボだ。周りには、季節の花々が植えられ、カラフルな花々の周りに蝶々が飛び交い、色鮮やかなガーデンの真ん中に、ひっそりと建っているガゼボだ。
この場所なら、ガーデン内の色とりどりの花々を楽しみながら、のんびりと雑談でもできそうな場所だ。
きっと、セシルがお茶会に参加するので、アデラも気を遣ってくれて、あまり人目につかず、そして、会話(内緒話) も盗み聞きされない場所を選んでくれたのだろう。
その気遣いに、セシルも、アデラには大感謝である。
セシルの世話係として付けられた侍女に連れられて、お茶会の場であるガゼボにやって来たセシルの他には、まだ誰も来ていない。
侍女には、セシル一人だけを残して、その場を去ってもらった。
その場で立っているだけでも、瑞々しい花々の芳香が周囲を満たし、初夏に向けての新緑の匂いが立ち込めている。周囲を見渡すだけで、色とりどりの鮮やかさが目に飛び込んできて、それだけで、更に気分が高揚するかのようだった。
さて、ガルブランソン侯爵令嬢とは、一体、どんな女性なのかしら?
セシルよりは一歳年下で、年齢的に言えば、同年代の令嬢である。
はっきり言って、セシルの経験からしても、セシルは同年代の女性との付き合いをしたことがない。王立学園に通っている時だって、クラスメートに話しかけたことさえないほどだ。
だから、非公式とは言え、今日、ガルブランソン侯爵令嬢に会うのが、とても楽しみなのである。
そう言えば?
今まで「領主名代」 として、領主の仕事が多忙で、セシルは――深く考えなくても、「お茶会」 などという社交的な集まりに参加した経験がない。
もしかしなくても……、去年、アトレシア大王国の夜会に招待され、その後に、王妃陛下からの招待(召集) で参加したお茶会が、実は、セシルにとっても生まれて初めてのお茶会だったのではないだろうか?
それも、自国で経験するのではなく、“初お茶会!”が、他国で、王妃陛下を相手にするお茶会だったなんて……。
さすがに、それも、一生に一度あるかないかの経験だ。
同年代の令嬢との会話だって、した経験がない。
でも、今日のセシルは、特別、お洒落な話題を持ち出したり、流行のドレスの話題だったり、そんな会話を望んでいるのではない。
ふふと、つい、口元から微笑が漏れてしまう。
なんだか、そのセシルの様相は、これからなにかの戦いに挑むかのような、ワクワクとした気配が感じられないでもなかった。
向こうから人の近寄ってくる気配を感じ、セシルの視線が真っすぐにそちらに向けられた。
一人の侍女の付き添いで、若い女性が一人、セシルが待っているガゼボの方に近づいてくる。
ゆっくりとした足並みで近づいてくる女性も、その場にいるセシルに気が付いたようだった。
セシルがその場にいることを全く予想していなかったのか、大きく見開いた瞳が素直な驚きを映し、その女性が足を止めて、なんだか――その場で硬直しているかのようなのだ。
一歳しか年は違わないのに、印象としては、“若い女性”というイメージが簡単に上がってくるうような令嬢だ。
「ご苦労様。下がっていいですよ」
「失礼いたします」
侍女は静々とお辞儀を済ませ、その場を立ち去っていく。
セシルのすぐ視界の前で立ち尽くしているような令嬢は、品の良さそうな高級なドレスを着ている。色合いも落ち着いていて、身に着けているアクセサリーの宝石も、けばけばしくなく、品があるものばかりだ。
高貴な令嬢、である。
王妃陛下直々のお茶会の誘いなだけに、令嬢の付き添いはいない。王宮の出入りを許されるのは、許可された人間だけだから、余程の事情がない限り、令嬢の付き人は王宮の出入りなどできないだろう。
「お初にお目にかかります」
セシルが最初の挨拶を口にしていた。
その一言で、ハッと、目が覚めたのか、令嬢がドレスの裾を摘み、ゆっくりと綺麗なお辞儀をする。
「……初めて、お目に、かかります……」
驚いているのか、それとも、緊張しているのか、令嬢の声は微かに震えていた。
ゆっくりと顔を上げていく女性の前で、セシルの瞳が真っすぐに令嬢を見つめていて、それで、令嬢は居心地が悪いのか、反射的に、微かにだけ視線を逸らしていた。
「今日は、このようにお会いできて、とても嬉しく思います。王妃陛下のお茶会でありながら、相手が全く違う相手で、戸惑っていらっしゃるかもしれませんが、お知り合いになれる機会があれたらと、少々、無理なお願いをしてしまったのです」
「…………そ、そう、で、ありましたか……」
だが、まだガルブランソン侯爵令嬢は顔を上げない。
王妃陛下主催のお茶会ではなくて、他国からの――それも、第三王子であるギルバート殿下の婚約者となった令嬢とのお茶会など、想像もしていなかったのだろう。
ぽつぽつと、困惑したままの返答を返すだけで、そこから話が全く進まない。
「どうぞ、おかけになってくださいね?」
「…………あ、ありがとう、ございます……」
セシルに椅子を勧められて、静々と、令嬢が椅子に腰を下ろしていく。
その様子を見守り、セシルも椅子に腰を下ろした。洒落たティーポットを持ち上げ、お互いのカップに紅茶を注ぎ入れていく。
「ガルブランソン侯爵令嬢リドウィナ様、でしょうか?」
「……は、はい。そうです……」
「私のような立場で、このように、ガルブランソン侯爵令嬢のお方に、気軽に話しかけることは、不敬に当たってしまうことだと、十重に承知しておりますが、許していただけますか?」
「……お、気に、なさらないで、くださいませ……」
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