表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
353/551

А.а 始まり - 07

ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。

「ええ、そうです。それは、トマトのベースで、フォークだけで食べれますよ」

「そうですか……」


「それから、次の時は、前菜で頼んだのが、ブルシェッタとガーリックブレッドだった。最初のは、ブレッドの上にトマトの刻んだのが乗っていた。どちらもおいしかった。その時のメインは確か――チキンのカネロニだったかな? それを頼んだはずだ」


「なるほど」

「その時に、私はビーフボロネーゼのリングイーネというのを頼みました。クルクル巻いてみるのに、挑戦しようと思いまして」


「ああ、そうだった。私のことをバカにしていたのに、クリストフも、最初の時は、時間がかかっていた」

「最初の時は、誰でもそうでしょう」


「そうだな。今回は、私は、この“コンキリエの肉詰め”というのを頼んでみようと思う。ここのお店のパスタというのものは、大抵、トマトのベースでお肉が入っていて、それにスパイスやチーズが混ざっているというのが多い。トマトのベースでなければ、クリーム系のものになるだろう」


「なるほど」


 料理一つを注文するのに、この二人も、ものすごい真剣である。


 慣れているギルバートとクリストフを抜かし、残りの護衛の四人の騎士は、メニュー表を端から端までしっかりと読み込み、最終的に、自分達の食事のメニューを決めたようである。


 オーダーを終え、料理を待っている間、新たな騎士の二人は、つい、きょろ、きょろ、と目線だけでレストラン内の内装などを確認してしまう。


 向こう側に座っているお客が女性客だけではなくて、それで、(密かに) ホッとしているようでもある。


「お洒落なお店だろう?」


 パっと、ギルバートに声をかけられて、二人がギルバートの顔を見返す。


「あの……、いえ……」

「その……」


 笑いそうになるのを堪えながら、ギルバートもチラッと室内に目を向ける。


「この領地では、珍しい食事(どころ)やレストランがあって、そのどれも内装が凝っていたり、清潔感が漂うようなお洒落なお店だったり、色々な工夫がされていると思うんだ。そして、なにより、どの料理も珍しくて、とても美味だ。私とクリストフは、かなり病みつきになってしまっているな」


 ははと、おかしそうに笑ったギルバートを見返しながら、騎士の二人も(ものすごい) 真剣になって上司の話を聞いている。――そこまで真剣になって、話の内容を見逃さないようにとの意気込みなど、今は必要ないのに……。


「初めて豊穣祭でいただいた料理も、とてもおいしいものでしたねえ」

「ああ、そうだったな」

「去年の豊穣祭でいただいた料理も、とてもおいしいものでしたねえ」


 そして、あの時の料理を思い出し、またお腹が空いてしまうクリストフだ。


「ああ、確かに」

「2年連続で豊穣祭に参加させていただきましたが、全く飽きる兆しもなく、驚きが満載なのも、驚きですよねえ」

「確かに」


 新たな護衛の二人は豊穣祭に参加したことがないだけに、はあぁ……と、真剣な表情のまま、二人の上司の話を聞いている。


 それで、ここ二年続きでギルバートの護衛役に任命された二人は、新たに加わった二人の方に顔を向ける。


「私達も豊穣祭に参加させていただいたのですが、見たこともない、耳慣れない料理が出て来て、驚きました」

「……それも、おいしかったと?」

「ええ、そうですよ」


 そうそうと、アンドレアに同意を求められて、ガスも大きく頷き返す。


「夜になると、後夜祭というものに変わって、昼間とは全く違ったお祝いがされるのですが、そこでは、領民全員が一緒になって夕食を取る習慣になっているそうです」


「そうなんです。我々も参加を許されて夕食を一緒にしましたが、通り一面が料理で埋め尽くされているなんて、私は生まれて初めて見ましたっ!」


 その光景が全く想像できない二人は、はあぁ……と感心したような相槌を返しながら、理解に苦しんでいる。


 料理が運ばれてきても、先程の会話が弾み、見たこともない珍しい料理を初挑戦する二人を(少々、笑いながら)見守って、全員が大層満足したランチを終えていた。


「昼食を終えたことだし、さて、観光でもしようか」


 そうなると、やはり、最初の場所は“なんでも便利屋”になるのだろうか。

 観光情報館からもすぐ近くにある、一番最初の大きなお店だ。


「この領地の観光は、お店巡りが多いようなのだ」

「はあ……、そう、でしたか……」


 でも、新たな二人の騎士には、買い物をするような必要もない。それは、口には出されないが、その時の二人には、この領地のお店巡りを甘く見ていることを知らない。


 ギルバートに連れられて“なんでも雑貨屋”にやって来た一行は、お店の中にズラリと並べられている棚の品物の種類に、数に、おまけに――内容に、目が釘付けである。


 ギルバートだって、以前にこのお店にやってきたことはある。買い物だってした。

 なのに、あの時よりも、更に品物の種類と数が増えているなんて、驚きな話だ。


 つい、ギルバートも、見たこともない新しい商品を確認しながら、商品の前にある簡単な説明書をしっかりと読んでしまった。


「洗濯、機……?」


 丸い筒のようなものがあり、手漕ぎ用のハンドルもついている。


 だが、洗濯機の説明書を読んでも、ギルバートにはさっぱり理解できない商品だった。なにしろ、本人は王子サマで、生まれたその時から、使用人達に全てのことを世話されて育って来ただけに、なぜ、洗濯機が必要なのかも知らないのだ。


 セシルにとっては、手でゴシゴシと洗わなければならない洗濯が大変で、大変そうで、使用人達の時間がかかってしまうことが面倒で、手漕ぎ用の洗濯機を開発したのだ。


 ドラム缶のような形の筒を作り、そこに洋服を詰め込み、手漕ぎのハンドルでクルクルと回すだけの原始的なものだ。


 それでも、要は、回転させて洋服を洗えば済むだけなので、わざわざ、(たらい)や洗濯板を持って洋服を洗う必要が減ったものだ。


 少しお値段は張るが、領地内でも、ぼちぼちと人気が出てきている商品の一つである。もちろん、セシルの邸では、最初から洗濯機を導入している。


 使用人達からは、こんな素晴らしい発明品で、無理に屈まずに洗濯ができるようになり、大喜びされている。


「さすが……、コトレア領……」


 ギルバートには全く理解できない商品でも、セシルが関わっている商品なら、必ずお役立ちグッズの一つで、需要が高い品物なのは間違いない。



読んでいただきありがとうございました。

ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。


Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Funtoki-ATOps-Title-Illustration
ランキングタグ、クリックしていただけたら嬉しいです (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
小説家になろう 勝手にランキング

その他にも、まだまだ楽しめる小説もりだくさん。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ