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* Б.а ブレッカの地にて *

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「どうしたのです、リアーガ?」


 緊急の知らせがある、と領地内の出入りが可能な通行門で警護している騎士達に伝えたリアーガは、そのまま真っ直ぐに邸に直行してきた。


 そして、その連絡を受けて、入り口にリアーガを迎えに来ていた執事のオスマンドに連れられ、リアーガはセシルの執務室に顔を出した。


 リアーガはセシルよりも少し年上の感じで、肩まで伸びた髪の毛を適当に伸ばし、腰には剣を、その皮ベルト、それに、他の隠し武器も吊るしているような皮ベルトがもう一段で腰に、胸にかかっていた。


 だが、長いマントを被り、その下の出で立ちは、使い古したブーツや、動きやすくても耐性のある皮のパンツなど、ある種、旅人を思わせる様相だ。


 リアーガは、元はこのコトレア領出身の青年だったが、今は、ギルド商会に登録して、傭兵としての仕事を受けていた。


 この世界、傭兵は魔法使いや魔術師といった要素がない。普通に、商隊の護衛をしたり、お偉いさんの護衛をしたり、屋敷や倉庫の警備をしたりと、そういった仕事を扱っている者が多い。

 それで、ギルドが発達して、ノーウッド王国でも、ギルド紹介を介して、正規の傭兵の登録ができる。


 コトレア領では、騎士として訓練をつけてもらったリアーガは、今は、セシルの為に地方を行き来し、国を超えたりと、セシルに情報を持ってくる役割を果たしていた。それで、傭兵としてギルドに登録しているのだ。


「ブレッカで戦が勃発したぜ」


 ドカッと、勝手に長椅子に腰を下ろしたリアーガが、まずそれを口にした。


「ブレッカ?」


 聞き覚えのある名前で、セシルも執務机から離れ、談話用の長椅子に回って来た。


「どういうことです?」

「どうやら、ブレッカに賊が侵入したようで、その後、大規模な兵士が乗り込んできたっていう話だ」


「それはいつです?」

「一昨日らしいぜ」


「その兵士達は、どこの者です?」

「たぶん部族連合だろうな」

「部族連合?」


「ブレッカから東南側には、部族連合が揃った小国ばかりが続く」

「ええ、そう聞いていますね」


「そこの部族連合っていうのが、よく、ブレッカに乗り込んで、略奪行為をしているのは知ってるだろ?」

「ええ、そうね。そういう話を、よく聞きます」


「だが、今回は大掛かりな兵士達が、一気に侵入してきたらしいぜ」

「それで戦ですか?」


「ああ。今、ジャールとリエフが、その確認に行ってる。俺は、報告の為に、コトレアに戻って来ただけだ」

「そうですか」


 ジャールとリエフは、セシルが雇っている外部の傭兵だった。

 以前に依頼した仕事で、ジャールがよく役立つ情報を流してきたので、それからも、セシルはジャールを使って情報収集の仕事の依頼をしていたのだ。


 その縁で、今は傭兵になったリアーガとも知り合いになり、ジャールの情報を、リアーガに伝達する形がよく頻繁だった。


 ノーウッド王国東寄りの隣国を、アトレシア大王国と言う。

 大王国というだけはあり、国土は南北に大きく伸びた王国である。


 アトレシア大王国は大国ではあるが、南と、東南に位置する小国のいざこざが頻繁に起こっている、政治不安定な国でもある。

 元からの領土争いが長く継続され、南の小国ギリトル、東南の部族連合など、常に、小さな戦が上がっている場所だった。


 自然災害などで食糧難が続くと、南や東南からの盗賊団やら、野党やらが、辺境区に位置する街や村を荒らしにやってくることも頻繁で、そういった小競り合いが、兵士を交えての領土争いに勃発するのはよくあることだった。


 その度に、迷惑を被っているのは、アトレシア大王国の辺境区の民たちで、土地は荒らされ、いざこざや戦の跡片付けを押し付けられ、町や村自体も、困窮を極める状態が続くことも頻繁だったのだ。


 ブレッカはアトレシア大王国最南端の土地で、南の小国ギリトル、そして、東南の部族連合と隣接している町だ。


 その辺境の町は、事あるごとに、隣接する他国からの侵入者で土地が荒らされ、略奪行為やら破壊行為で、大迷惑を受けている町だ。


 あまりに長い歴史の間、そんないざこざや戦ばかりが起きているので、ブレッカの町自体は、もう、ほとんど領民がいない状態にもなっている。


 噂では、今は、王国軍が常に駐屯していて、その為の食事(どころ)やお店が残り、ポチポチと営業されているような町に変わっているという話も聞く。


 ただ、ブレッカをガラ空きにしてしまっては、他国からの侵入者に、アトレシア大王国内部へと導いてしまう最後の砦を開けてしまうことになる。

 それで、常時、王国軍が駐屯しているらしい。


「困りましたね。また戦ですか? 確か、昨年も、何度か小競(こぜ)り合いがあったというような話でしたけど」

「確かにな。そういった小競(こぜ)り合いは、大して珍しいことじゃないんだろ? 俺も頻繁に耳にするぜ」


「そうですね。でも、今回は本格的な戦が勃発してしまったようですから――そうなると、隣国の南からの物資の流通が、戦の影響で停滞、または、完全遮断される恐れが出てきますね。今の所、コトレアは、ある程度、自給自足できていますが、残りの領地や村々にも、影響が出てくるでしょう」


「だろうな」

「まったく、本当に困りましたね……」


 それでなくても、ノーウッド王国の南方は、小さな農村が多いのだ。

 それで、自給自足が可能な農村だって、それほど多くない。だから、隣国から流れてくる小麦や、他の食糧だって、村々に回らなくなってしまったら、食糧難の問題が、すぐに上がってしまうことだろう。


 ブレッカの戦が本格化してきて、物流が途切れてしまったら、ノーウッド王国の南方の村々にも、多大な影響が出てきてしまう。


「仕方ない……。様子を見に行きます」

「お嬢が?」


「ええ、そうです。ジャールとは、いつ連絡を取る予定なのですか?」

「今夜だ」


「では、旅立つ支度をしなければなりませんね」

「何人、連れてくるんだ?」


「イシュトールとユーリカは外せないでしょう。私の護衛ですから」

「そんなんじゃ、全然、足りないだろ」


「そうかもしれませんが、今は、戦に参戦しに行くわけではありませんからね」

「偵察でも足りねーよ」


 それで、セシルが、ふっと、少しだけ口元を上げてみせた。


「あら、そうかしら? リアーガは、一緒に来ないの?」


 それで、リアーガは白けた顔をみせて、セシルを睨め付ける。


「うるせーな」

「ふふ。頼りにしてますよ、リアーガ」


 ぷいっと、リアーガはそっぽを向いてしまう。


 ふふと笑ったセシルは、テーブルの上の呼び鈴を鳴らした。

 すぐに、執事のオスマンドが姿を出す。


「大至急、ラソム、イシュトール、ユーリカを召集してください。それから、フィロも。オスマンド、あなたも参加してね」

「かしこまりました」


「それから、リアーガに、軽食でも運んできてくれないかしら?」

「かしこまりました」


 一礼をしたオスマンドが部屋を後にする。



読んでいただきありがとうございました。

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