表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
345/551

* EPILOGUE 03 *

ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。

* * *



「ご相談したいことがあります」


 それで、ギルバートは、手に持っていた書類をレイフに渡した。

 レイフは書類を受け取って、簡単に中に目を通し出す。


「まあ、よく考えたんじゃないのか」


 驚いた様子もなく、あまりにあっさりとした反応だ。


「一応、考え得ることは考えてみたのですが――まだ問題点が残っていまして。また、私が見落とした点など、ないでしょうか?」


「領地の問題が、お前にとって、最大の問題点だな」

「そう、なんです……」


「だったら、領地を、そのままアトレシア大王国に持ってくればいい」

「――――――――え゛っ?!」


 今、自分の耳を疑ったかのように、ギルバートだって、珍しく声を上げていた。


「驚くことでもないだろう? 領地問題が解決しない限り、お前の結婚は、ほぼ不可能に近いだろう」

「そう、なのですが……。――あの……、ですが、領地を持ってくる? そのようなことが可能なのですか?」


「可能か、可能でないかの問題ではない」

「ですが……、どのように?」


「この場合、侵略ではないから、併合は無理があるだろう。だから、王国にとっての有益さを強調できなければ、誰も賛成はしない。あの領地は、価値があるのか?」


「もちろんです。領地だけではなく、あの地の統治や運営法だって、画期的、または前衛的で、私が知る限りでも、近隣諸国では見られない方法です。それなのに、全てが全て潤滑(じゅんかつ)で、効率的で、無駄がない。あのような統治方法や運営方法は、絶対に、王国でも為になるものです」


「まあ、そう熱くなるな」


 熱弁してくるギルバートに、ふっと、レイフもおかしそうに笑う。


「それだけの価値があるのなら、この場合、政治的、商業的利益で、王国への加盟を推薦するのだ」

「――王国へ加盟、ですか? そのようなことが、可能なのですか?」


「まあ、交渉次第だろう。だが、価値はあるのだろう?」

「もちろんです」


「私情の(はさ)み過ぎ?」

「いえ、それはありません」


「なら、問題ない」


 あまりにあっさりと――最大の問題点で、超難関がクリアしてしまったのだろうか?


 予想外に、あまりにあっさりとした結論に、ギルバートも信じてよいのかあまり定かではない。


「――――本当に、問題ではないのですか?」

「きちんと、お願いしてみたらどうなのだ?」


「では、隣国の領地の加盟に関する交渉役を、お願いできないでしょうか?」

「ああ、いいよ」


 そして、レイフは、またも、あっさりと返答するだけだ。


 少々――肩透(かたす)かしの状態でもないが、そんな気分になってしまうギルバートだ。


「ついでに、ノーウッド王国が介入してきた場合も、私が交渉してやろう」

「――――よろしいのですか?」


「ああ、いいよ」


 あまりにあっさりし過ぎで、あまりに――快く同意してくれて、ギルバートも言葉が出ない。


 普段のレイフの性格で言えば、ここらで、手厳しい文句の一つや二つ、出てきてもおかしくはないのに……。


「そんなに驚くことでもないだろう?」

「いえ、あの……」


「私など、初めから、お前の我儘(わがまま)を、反対もしていなかったではないか」

「そう、なのですが……」


 その点も、ギルバートはずっと不思議だった。


 国王陛下であるアルデーラには、ギルバートの我儘(わがまま)を許してもらった。


 その報告を聞いて、おめでとう、と言ってきたのはレイフだ。文句もなければ、反対の一つもなかった。


「どうするのだ? 私の助力が必要なのか? いらないのか?」

「いえ――どうか、お願いいたします」


 切羽詰まって切実なだけに、ギルバートは座った姿勢で、深く頭を下げていた。


「画期的、前衛的な領地の統治方法や運営方法は、王国でもきっと役に立つだろう。多種多様な政策も興味深い。だから、王国に嫁いできた後に、その経験と知識を生かして、王国の為に働いてもらうべきだろう」


「それは――ご令嬢に、(まつりごと)に関わらせる、とおっしゃっているのですか?」


「そうだ。そのような能力、手腕、知識、経験は、簡単に手に入るものではない。それを見逃していては、王国の発展などは遂げられないだろう」

「それは……私も、そう思いますが」


 だが、この話の流れで行くと――ギルバートの結婚が決まったとしたら、隣国から嫁いでくることになる他国のご令嬢に、この王国の(まつりごと)にも、政策にも、口を突っ込んでいい、などとのお墨付きをもらったも同然の発言ではないか。


 政官でもない。文官でもない。官僚でもない。

 ただ、他国の貴族の令嬢、という立場なのに。


 さすがに、この話の流れの展開には、ギルバートも驚きを隠せない。


「後は、国王陛下の承諾を得ることだけだろう」


「はい。その際には、正式な婚姻契約書を提示しようと考えています。もし、迷惑でなければ、その確認も、していただけないでしょうか?」


「ああ、いいよ」

「ありがとうございます」


 予想外に、今夜のお願い事は、全く問題もなく、あまりにあっさりと、レイフの承諾を得て終えていた。





 ギルバートは手を後ろで組み、真っ直ぐな姿勢で起立していた。


 ギルバートの目の前では、執務室の机の向こうで、国王陛下であるアルデーラが書類に目を通している。


 死刑の判決を待つ囚人……は、大げさすぎる表現かもしれないが、それでも、今のギルバートは、国王陛下の最終判決を待って、神経質になりがちな緊張と戦っていた。


 書類を全部読み終えた国王陛下が、顔を上げる。


「お前の意向を、全て支持する」


 ほっ……と、ギルバートの全身の力が抜けてしまっていた。


「……ありがとうございます」


 まず、アトレシア大王国側の準備は、全て整った。


 あとは――年が明け、ギルバートの一生を左右する、運命のその日を待つのみ――――



これで、Part2完結になります。この半年、長かったです。一気に書き上げ、投稿しました。

エンジョイしていただけたでしょうか? 今までお付き合いくださって、本当にありがとうございます。

ギルバートの期限も迫りつつあり、これからの展開がどうなることでしょう。また、Part3にて、お会いしましょう。

次回の投稿は、12月19日(月)を予定しております。乞うご期待 •͙‧⁺o(⁎˃ᴗ˂⁎)o⁺‧•͙‧⁺

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Funtoki-ATOps-Title-Illustration
ランキングタグ、クリックしていただけたら嬉しいです (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
小説家になろう 勝手にランキング

その他にも、まだまだ楽しめる小説もりだくさん。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ