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* Д.а 回顧 *

この章から、セシルの昔話になります。‘悲惨’な異世界転生を遂げて、どのように現在のセシルに成長していくのか、少しずつ事実が明かされていきます

 パチリ、と目を覚ましていた。


 なぜ、そんな風に、朝からはっきりと目を覚まし、おまけに、意識まではっきりとしているのかは、分からなかった。


 でも、自分のすぐ上の視界に、天井が見える。

 全く見慣れない天井。


 ベッドの上に、天井?


 借りていた自室のアパート(Apartment、この場合、日本のマンションのようなもの)の天井は、白地のクリーム系の天井だ。どこにでもある、ありきたりで、メインテナンスのしやすいペンキが塗られた天井だ。


 そして、天井にはめ込まれたライトが数個。

 それがない。


 そして、なぜ、茶色の天井が目につくのだろうか?


 それで、顔を動かさず、視線だけを動かした先で、ベッドの(かど)にある柱が視界に入って来た。

 その柱を見ただけで、すでに謎である。



(――えっ……? なに、その柱……)



 毎日、使用しているベッドなど、あまりに見慣れ過ぎていて、今更、注意を払って見直すようなものでもない。

 だから、ベッドの(かど)に柱などないことは、重々、承知している。


 あまりに見慣れている、日常として脳に蓄積されている記憶からしても、ベッドの真上の天井、ベッドの(かど)の柱、どれも()()の記憶とは重なりもしない。


 当てはまりもしない。


 すでに、自分が――いつもと同じ場所にいないことだけは、なぜか、すぐに、認識してしまっていた。


 ガバッ――


 起き上がった反動で、自分のいる場所が――すでに、一体、どこなのかも分からない!


「――なに、ここ……!? えっ……、どこ、ここ……?!」


 ベッドの柱は、もちろんのこと、若い少女達がよく憧れる、Four-posted(四柱式の)天蓋(てんがい)付きのベッドだ。


 でも、ブリブリの少女趣味らしく、レースカーテンがついていたり、ピンクのフリルのカーテンがかかっていたりはしていない。


 そんな些末な事実に、実は、ホっとしてしまっている自分がいる。


 サイドにベッドカーテンはかかっているが、柱側できちんと縛って止められている。


 ベッドだけではなく、柱と柱の間から見える部屋の様子も、全く自分の部屋ではない。


 昨日、いや、ここ最近、仕事のし過ぎで疲れている為に、寝ぼけたまま、夢でも見ているのだろうか?


 見下ろしたら、丁寧に刺繍されたベッドカバーに、清潔なベッドリネンが目に入る。――入ったはいいが、違和感があり過ぎる。


 バッと、両手を出してみたら――どう見ても、小さな手にしか見えない。

 子供の手にしか、見えない。


「えっ……?! まだ、寝ぼけてるのかしら……?」


 パタパタと、瞬きを繰り返すが、目の前の視界は全く変わらない。


 頭を振ってみたが、今は意識がはっきりしていて、とてもではないが、寝ぼけている状態でもなんでもない。


 そこで、一瞬、完全自失していた。


 それから数秒。



(なに……、どうなってるの……?!)



 まずは、状況把握が最重要案件だ!


 パニックしかかっていても、冷静さは普段から変わらなかった。


 大きな呼吸を何度かして、まず、自分を落ち着かせなければ。

 パニックしている場合ではない。


 ドクドクと、勝手に上がりだしそうな脈動が耳に届き、すでにパニックしかかっている状態だ。


 ふー、ふーと、深い呼吸を繰り返し、まずは、落ち着こう。

 落ち着こう……。


 何度目かの深呼吸を終えて、ベッドの上に置き上がったまま、まずは、状況把握を試みる。


 四柱式天蓋付きの大きなベッド。

 いつ、そのベッドに潜り込んだのか、そのベッドに寝たのかさえも記憶にない……。


「OK……」


 自分に言い聞かせているのか、ただ、無意識に認識した態度がポロっと出てしまったのか、はっきり言って、今の時点では定かではない。


 ベッドから動かずに、周囲の状況把握の為に視線を動かしてみると、視界の先には、西洋風の家具が見えて来る。



(あれって、洒落た長椅子よね)



 横に視線を向けて見ると、ふかふかそうなカーペットも見え、そして、またも西洋風の家具が目に入って来る。



(誰の家具……?!)



 もちろん、自分のアパートの家具は、西洋風やヴィクリアン風の洒落た家具ではない。

 モダン的な洒落た内容ではなかったが、快適で、使いやすく、気に入っている家具が置いてあった。


 それが、今は全部なくなっている。


 第二弾で、完全自失しかけてしまう。


 このまま、パニックせずに、意識を保っていられるなんて、有り得ないだろう……。



(――なくなってるというより、この部屋自体が、全く違う部屋よね……)



 それで、またしても、同じ疑問に陥ってしまう。


(なんで……?! ここは、一体、どこ……?!)


 夢を見ているのかもしれない。


 パチっと、少々、力を入れて、両頬を叩いてみた。

 痛い……。


 でも、視界に入って来る光景は、さっきと全く変わっていなかった。


 ぎゅぅっと、ものすごい力を入れて、目を閉じてみた。

 パっと、目を開くと、あまりに力を入れ過ぎた為、一瞬、視界がぼやけ、それから、周囲の形が色と形を成してくる。


 視界に入って来る景色は、さっきと全く変わっていなかった。



(なんなの、ここ……。一体、どうなってるのよ……?!)



 状況が変わらないままなので、仕方なく、ベッドから降りてみることにした。


 ベッドカバーから足を外し、床に降りてみると、足のサイズも――違っていた。

 どう見ても、小さな子供も足にしか見えず、その場で……あまりに信じられない出来事に、失神しそうになっていた。


 クラクラと、目眩(めまい)がしてきそうである。



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Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

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