В.д 囮に? - 07
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* * *
「どちらにします?」
「不精髭の男の方を」
「痩せ型の男ではなく?」
「私は反対の方を選びますわ」
ふーむと、ギルバートも興味深そうにセシルを見返している。
クリストフの方もセシルの意見が謎で、大人しく、会話を聞いている。
「どう思います?」
「不精髭の男だと思います」
フィロが簡単に答えていた。
どうやら、セシルの意見に、子供達も賛成らしい。
「その理由を聞いても?」
「悪の親玉は、大抵、最後に出てくると、相場が決まっていますので。犯罪を犯した後なら尚更に、警戒をしているはずなので、特に、隠れ家に近寄って来る人間をしっかり確認することでしょう。例え、それが予定していた仲間の登場だったとしても」
だから、そういった親分的な立場にいる人間が、自分でドアを確認しに行くはずがない。
むしろ、子分や下っ端の部下に命令して、自分は、まず、部屋の隅や奥で、一体、誰が近付いて来たのか、じっくりと観察していることだろう。
いざと言う時に、咄嗟に逃げられるように。咄嗟に動けるように。
雑用は、命令している人間側が進んですることじゃない。
「なるほど」
ギルバートとクリストフの二人が、素直に納得していた。
痩せ型の男は、その外見からしても、腕が立ちそうには見えなかったから、ギルバート達も、最初の尋問相手は、痩せ型の男からすべきだろう、考えていた。
だが、外見に反し、偉丈夫に見える不精髭を生やした男の方が、この場では、格下だったらしい。
子供達の思考力だって、セシルの影響が出ているのがあまりに明らかだった。
「隣の部屋で待っていただけますか、と言っても、あまり意味を為しませんよね」
ふふ、とセシルはただ微笑を浮かべている。
初めから、そのセシルの反応も承知していたので、ギルバートはセシルのことは心配せず、早速、捕縛した男の尋問を始めることにした。
床に転がされている男を、足だけで向きを変えさせ、躊躇いもなく、手加減もなく、ギルバートの足が一気に男の股の間に蹴り落とされていた。
「……っひ、ふぎゃっ――※▼※◆#……!!」
気絶していたはずの男が、意味不明な悲鳴を上げ、飛び上がっていた。
だが、クリストフにしっかりと足元を押さえつけられ、グルグル巻きに上半身が縛り付けられている為、悲鳴を上げて飛び上がるに上がれない男だ。
「聞きたいことがある。素直に言うことを聞けば、それほど、ひどい目には遭わないだろう」
「誰が――クソっ食らえ……――っぐ、うぎぇ※◆#※◆#※◆#……!!」
罵倒する前に、声にならない喘ぎ声と悲鳴を吐き出して、男が白目を向きそうになっていた。
「学習能力のない奴は、相手にしたくないなあ」
「……なに、をっ……ぐぅっ、ぐぎぇっ…………!!」
男の額には脂汗が浮かび始めている。
「どこかで見た尋問方法のような?」
「この方法は、とても効果的ですからね」
このギルバートの口調は――絶対に、あの尋問技はセシルが使っていた技術の一つだと、確信している発言だ。
うーん……。
セシルの(前世なのか現代での) 知識は、この世界で非常に役に立っている。お役立ち過ぎている。
本来なら、あまり奨励されかねない尋問技を、この国でも、セシルは教えてしまったのではないだろうか……。
現国王であるあのアルデーラだって、セシルの真似をしていたではないか。
なにはともあれ、ほとんど無駄な労力も費やす必要もなく、ギルバートの尋問は終わっていた。
男達は数か月に一度の割合で、大きな街々を渡り歩き、そこで、若い女性を誘拐していることを生業としているということが判明した。
人身売買の犯罪が挙がって来て、益々、「金持ち = 悪徳貴族」の線が濃くなってきてしまった。
この男達は“仕入れ”専門で、他に分かれた組の男達がいて、そいつらが“運び屋”専門らしい。
毎回、集団で揃って行動しては目立ち過ぎてしまうから、役割分担で仕事を分けているのだ。
そんなことを自慢したって、誰も褒めてなどやらないのに。
どうせ、捕まった時を想定して、女を引き入れたが、その後は知らない、とでも言い張る気だったのだろう。
“誘拐”ではなく、女の方から寄って来たのだと断言されれば、女性の方がそれを証明する手立てはない。
どんなに騒いでも、目撃者もいなければ、ただの自己申告でしか扱われないだろうから。
“運び屋”の仕事を担っている男達が、夕方になれば、今日の獲物を受け取りに来るらしかった。
「さて、どうしましょうかしら? このまま放っておいても、裏にいる黒幕が判明しないままですものね」
「そうですね。ですが、捕縛した見張り役の尋問をもう少ししてみれば、ある程度の情報は得られるかもしれませんので」
「そうかもしれませんけれど、“運び屋”がやって来た時、さらった娘はいない。見張り役もいない。そうなってしまえば、自分達の犯罪が露見しまった可能性に、気付かれてしまうかもしれませんわ。この場を私達が見張っていたとしても、そのまま逃げられてしまう可能性がでてきますでしょう?」
「そうですね」
「私が囮に?」
その一言に、ギルバートの瞳がものすごい勢いで飛び跳ねていた。
「絶対にダメですっ!」
そして、ものすごい形相をして、セシルに怒鳴りつけて来たのだ。
「絶対にダメです。そのような危険な真似は、絶対にさせられません」
絶対に――を、何度も繰り返されてしまった。
「私も、他国の問題に、一々、関わる気はありませんけれど、さすがに、無差別に、若い娘が誘拐されてしまったのを目の前で目撃してしまいましたら、放っておくのも、かなり気が引けますわ」
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