В.д 囮に? - 04
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実は、つい最近、この章の3エピソードがごっそり抜けていることに気づきました。抜けていた分のエピソード追加です。申し訳ありませんでした
* * *
ギルバートはセシルに気を遣い、全速力では走り込まなかった。
それでも、切羽詰まった状況を懸念して、全員の足がかなりの速度で進み、ジャン達が示した目的場所に辿り着いていた。
その場所では、フィロが一人きりでセシル達を待っていたらしく、目的場所に到着したセシルに、すぐにフィロが状況説明をしてくれた。
「ケルトとトムソーヤに、奴らの隠れ家らしき家の近辺を見張らせています」
最初は、フィロもケルト達と一緒に行動していたらしいが、男達が裏道を抜けきり、どこかの家のような場所に入って行くと、ケルトとトムソーヤをその場に残し、フィロだけ一人、ジャン達と分かれた場所に戻って来ていたのだ。
ジャン達に、緊急信号の印を残しても良かったが、それだと、お互いに合流するまでに時間がかかってしまうと判断して、フィロは中継地点として、最初の場所に戻って来ていた。
そのおかげで、セシル達は簡単にフィロと合流することができたのだ。
もし、隠れ家のような家から、男達がまた移動した場合、ケルトかトムソーヤのどちらかが後を追うことができる。
それで、一人が連絡役として、中継できる。
だから、そう言った状況を想定して、初めから、ジャンは三人の仲間にあの二人の男を尾行させたのだ。
フィロに案内させ、セシル達もケルトとトムソーヤ達のいる場所にやってくることができた。
ケルトが通りの見張り役なので、フィロやセシルを見つけて、ケルトの方が近付いて来た。
トムソーヤは昔から見張り役が上手く、その経験を活かし、隠れ家らしき家の裏で、男達を見張っているらしい。
それで、ジャンとケルトが戻り、トムソーヤを連れて来た。
全員が固まると目立ってしまうので、家の影に隠れるように横道に入って行く。
「状況の説明をしてください」
「男達は家に入ったまま、まだ出てきていません。家が連なっているようですので、一応、家の反対側も確認してみましたが、次の家がくっついているので、裏口はないように思われます。中の状況は確認できませんでした」
「それは問題ありません。下手に近付けば、トムソーヤの身も危険にさらされていましたからね。他に、人の出入りは?」
「ありませんでした。私が見張っている間も、外への動きは全くありません」
「そうですか。男達の風体は?」
五人が顔を見合わせる。
フィロが前に出て来た。
「一人は不精髭がありました。二人共、汚れたシャツに、トラウザーズを履いています。走り去っている時でも、周囲の通行人達と大した背丈が変わらなかったので、背も、まあ、私程度の背丈でしょう。不精髭の男の方は、偉丈夫に近いかもしれませんが、残りの男は痩せ型です。あの場では、武器の携帯は目撃していません」
小型のナイフ程度の暗武などを潜ませていなければ。
「そうですか。他には?」
ケルトが自分の懐中時計を確認してみる。
「ジャンと別れたのが11時ちょっと過ぎです。それから、男二人を追って、この場所に着いたのだ、11時半頃。今は、12時ちょっと過ぎ。あれから、一時間は、何も動きがなかったようです」
「人攫いをしておいて動きがないとなると――誰か他の人間を待っているのかしら?」
「もしくは、昼時なので、今は休憩中か」
人攫いなど大罪に近い犯罪を犯しておいて、呑気に昼食を取っている気が知れないが、ジャン達の話から判断しても、男達の動きはあまりに慣れていて、計画的で、咄嗟に思いついた行動ではないことは確かだ。
それなら、犯罪に余裕のある人間なら、昼食など、そんな雑事を普通に気に掛けるかもしれない。
「連れ去られた女性の外見は、どんな感じでしたか?」
「平民の格好をしていたように思えましたけど」
「確かに……。買い物カゴを持っていたような?」
「他の特徴は?」
「いえ……。特別、目につくような特徴は、なかったと思います。後ろ姿でしたので……」
「そうですか」
ふむと、ある程度の状況確認ができて、セシルの頭の中にも、現状のイメージが出来上がって来た。
今の所、判っている事実は、人攫いの男が二人。二人共、平民。
連れ去られたのが、若い女性。彼女も、平民。買い物途中か、それに近い行動中、さらわれてしまった。
悲鳴を上げる隙もなく。
麻袋で移動。馬車でもなく。
袋の中で悲鳴も上げず、恐怖でパニックしていないのなら、たぶん、女性は気絶させられているはず。ほぼ、意識がない状態。
見張っている間の動きはなし。移動もなし。一時間ほど。
近辺の家は、かなり閑散としている。ここらの住民達は、日中は働きに出て、家を空けている可能性が大。
他の仲間を待っているのか、次の移動の為に夜まで待っているのか。
ただ単に女性を襲う為なら、こんな手の込んだ仕込みをする必要はないだろう。
嫌な話だが――凌辱する目的だったのなら、初めから、女性が一人きりになるチャンスを待ち、狙い、襲っていたはずだから。
わざわざ、袋の中に隠してまで移動する必要性がない。
「ちょっと確認すべきですね。他の仲間などが混ざって来る前に」
「えっ……?!」
ぎょっとしたのは、ギルバートの方だ。
だが、セシルは甚く真面目な顔をして、ギルバートに向き直る。
「犯罪人は、今の所、二人。それなら、少々、手荒に乗り込んでしまってもいいかもしれません」
「家の中に、それ以上の人数がいたとしたら?」
「ですから、ここは、敵意の一番少ない、あまりに疑われない立場の者を送り込んでみましょう」
「子供達の誰か一人ですか?」
にこにこと、セシルの澄ました笑みが変わらなくて、ギルバートが嫌そうに眉間を寄せ出してしまう。
「冗談でしょう? ご令嬢には、そんなことさせられません」
「私は、何もしません。ドアをノックするだけです。ドアの隙間から、家の中の様子を確認できるかもしれませんから」
「ダメです」
速攻で却下だった。
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)





