А.в ヘルバート伯爵領コトレア - 08 (セシルの歴史教室:銀食器)
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王宮では、執事だろうと、使用人の侍従だろうと、侍女だろうと、ある程度の身元が保証されなければならないので、大抵は、貴族の爵位を継がない子息や子女が多い。
そうでなければ、代々、執事の家系で、その名が保証され、知られているケースである。
ポッと出の平民が執事になる道は――ほとんどない。余程のコネがない限りは。
オスマンドも、王都にある執事学校を卒業している立派な執事だ。
丁寧に、丁寧に、銀のフォークを拭き終えて、その一本をテーブルの上に並べていく。
つい――燕尾服のジャケットのポケットから懐中時計を取り出し、チラッと、時間を確認してしまう。
さてさて。
この行動をする有能な執事は、一体、今日で何度目なのでしょうか?
平静で、落ち着いていて、凛とした背筋も姿勢も真っ直ぐで、全くいつもと変わらない有能な執事のオスマンドは、今日と言う日は、かなり(無意識に) 頻繁に、自分の懐中時計を確認していた。
今日は――まさに、運命のその日!
邸の主である、ヘルバート伯爵令嬢セシル様の大事な卒業式なのである。
それで、普段からも朝が早いオスマンドの一日は、すでにかなり日が昇りだす前から起床して、着替えも終わり、軽い朝食も食べ終えて、準備万端で執事の仕事を始めていたのだ。
昨夜も――王都に思いを馳せて、あまり良く眠れなかったが、そこは執事の腕の見せ所。まったく睡眠不足の気配も見せはしない有能さで、朝早くから、きっちり、しっかりと仕事をこなしていた。
それでも、また――つい、懐中時計に目が行ってしまう。
もう――(やっと) 午後になったのか…………。
などという溜息など出しはしない。
先程だって、廊下を掃除している若い侍女達の手が止まっていたので、注意したばかりではないか。
その心中穏やかならず――
ああ、大事なマスターの未来と命運は、一体、どうなったことやら……。
それでも、銀食器を磨いている手は止めず。
ソワソワと、落ち着きがない有能な執事サマの手入れしている銀食器。
ちょっとここで、歴史のおさらいなど?
~*~ セシルの歴史教室:銀食器 ~*~
銀食器。Silverwareと言います。
その名が示すように、物質は関係なく、銀色をした金属製の平らな皿などの食器、その他の食器類、装飾用の食器ならなんでもシルバーウェアと言われています。
銀メッキのロウソク立てもシルバーウェア。
銀皿もシルバーウェア。
ステンレススティールのフォークもシルバーウェア。
現代では、“シルバーウェア”という言葉は、多用途で使用されるようになりました。
人類の進化によって、骨や石の食器から、木や貝なども使用されていました。うーん、原始時代を想像しちゃいますねえ。それから太古の大昔など?
それから、銅や鉄、スティールなどもっと洗練された食器が開発されるようになったんです。
ローマ人は、銀の食器を使用するようになりました。
ここで、なぜ銀(Silver)?
銀は衛生を保つ為に使用されてたんです。
紀元前、航海に長じたフェニキア人 (by en.wikipedia.org/wiki/Phoenicia) は、銀を頻繁に採取して、銀の器などで水を浄化していたらしいです。
長い航海に出る船員たちなど、銀をミルクに投げ込み、消毒していたとか。
冷蔵庫がない時代、銀をミルクに投げ込むのは、ロシア人もしていたという話もあります。
銀には微量金属毒作用 (oligodynamic properties) というものがあるのですが、日本語で言えば、微量の金属作用でも銀の抗菌剤(?)のような働きがあるんですね。
それで、銀食器は清潔で、抗菌作用があって、バクテリアなどの殺菌にも大役立ちなんです。
微量でも毒になりかねない物質なのですが、なんと、人体への影響がかなり低いことから、今までの歴史の中で、銀の使用が多かったそうです。
冷蔵庫もない。病院施設もしっかりしていない。抗菌・除菌だってない時代、銀食器は重宝されたことでしょう。
ただ、銀というのは、昔も現在もお高めなのが問題ですよねえ。
それで、銀食器などは、大抵、王族、貴族や裕福な階層でしか使用できませんでした。
平民などには、簡単に手に届くような値段じゃなかったんです。
それで、銀や銀食器と言えば、“富”という概念がすぐに結びついてきたわけです。
古代では、銀の盃で毒を確認していましたよね? 毒などが注入された酒などを銀の盃に入れると、黒く変わるという説があります。
これは――たぶん当たっていると思うのですが、銀が反応するのはヒ素系の薬品です。ヒ素には硫黄や硫化物が含まれていて、銀と反応することで硫化銀に変わります。そこで黒く反応するんですね。
だから、古代、ヒ素の毒薬が多く使用されていたので、銀の盃などで、毒の検証もできたのかもしれません。
(注記:私は化学専門ではないので、銀の毒薬検証の話はどこまでが事実か、ちょっと判断しかねます……)
そんなこんなで、ちょっと歴史雑談でした。
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