表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
238/551

В.а 合同訓練 - 04

ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。

* * *



 午後の暖かい日差しが窓から差し込み、その室内は、明るく照らされていた。


 大きな執務室の、大きな机の前で、礼儀正しく立っている男性が、机に座っている現外務大臣、ヴォーグル侯爵のハラルドに向き合っていた。


「ガルブランソン侯爵の動きが、少々、うるさいようですが。かなりの力を入れて、調べ上げているようです」


 まあ、その程度の動きは、ハラルドにも驚きではない。


 あのガルブランソン侯爵は、自分の娘を第三王子殿下の妃候補として、ここ数年、うるさく王宮側に催促しているほどである。


 婚約話、結婚話が全く思うように進まないまま、あの第三王子殿下には――誰も知らない他国の令嬢の()()がいる、などというあまりに驚愕の事実が発覚して、見知りもしらない()()()令嬢に腹を立て、必死になって、裏を暴こうとしているのであろう。


 自分の娘を差し置いて、他国の全く無縁の令嬢が、第三王子殿下を横取りした(セシルは全くそんなことをしていないのに……) との認識で、自分の邪魔となる令嬢を、裏で徹底的に調べ上げていたとしても、なんの不思議もない。


 邪魔な存在が一体誰なのか、何の目的があるのか、あの侯爵なら、とことん調べ上げるだろう。


「まあ、表立ってのバカな行動はしないだろうが、しばらく目を光らせおくように」

「わかりました」


 セシルの存在が邪魔であっても、表立って行動を起こすような愚鈍ではないだろう。


 もし、セシルの身に何かあってしまっては、一番最初に疑われる可能性が大なのは――王宮で娘を売り出していた、ガルブランソン侯爵だからだ。


 その程度の愚行さで、一族を取り潰すほど、馬鹿な男ではない。


 権力に貪欲な男ではあるが、それは、大抵の貴族なら誰もが示す傾向や特徴で、目に余るような行動でもない。


 特に、今は――この王宮に、またあの令嬢がやってきているという話を、ハラルドも耳にしている。


 騎士団との合同訓練?


 そんなバカげた理由で、令嬢を呼び寄せるギルバートもどうかしているが、事実、あの令嬢は、騎士団の方にだけ滞在しているらしい。


 それだけに、ガルブランソン侯爵が、セシルの素性を明かそうと躍起になって、セシルの周囲を嗅ぎまわっていてもおかしくはない。


 だが、王宮内では、ハラルドの耳にも、セシルの噂は、ほとんど上がってきていない(まだ)。


 どうやら、ギルバートだけではなく、騎士団の方でも、緘口令(かんこうれい)に近い規制を敷いているのかもしれなかった。


 新国王陛下の即位で、王国も、王都も、王宮も、どこでも浮き足立っている。政権入れ替わりになると、下で仕えている官吏達、家臣達も落ち着きをみせない。


 かくいうハラルドも、今年からは、外務大臣に任命された。


 アルデーラが国王陛下に即位したことで、正式に、弟のレイフが内務の宰相に任命されたからだ。


 まあ、これは、ある程度、予想されていた役職替えでもあるし、特別、内務を離れ外務に移っても、ハラルドの仕事の量も変わらなければ、責任も立場も変わるものではない。


 ヴォーグル侯爵家は、王国の侯爵筆頭だ。


 だから、王国を支え、王家を支持していかなければならない。


 内務の宰相時代からも、外国問題、外務問題などは、自然、扱わなければならない案件もある。それで、外務に全く通じていないわけではない。


 だから、これからは、更に外務の業務が滞りなく進むように、知識も経験も磨き上げていくだけだ。


 だが、王家を支持する侯爵家筆頭としては、王国内、または王宮内の――問題となり得る芽は、しっかりと摘んでおく必要がある。


 しっかりと、把握しておく必要がある。


 他国の見知りもしない伯爵令嬢だろうと、凶と出るか、吉と出るか、ハラルドは、自らの判断で見極める必要があるのだ。


 今の所、王宮内に放っている“目”や“耳”の報告からでも、セシルの周囲には、常にギルバートが付き添っているという話が出ている。


 そうでなければ、自国から連れて来た自分の護衛達が。


 それなら、多少、あのガルブランソン侯爵が周囲でうるさく嗅ぎまわっても、それほど、セシルには影響がないだろう。


 問題となる芽は、なにも他国の令嬢だけではない。

 自国の内政だって、身内にだって、問題はあるものなのだ。


「ガルブランソン侯爵の動きがあれば、すぐに知らせるように」

「わかりました」


 それで簡潔な報告を終えて、部下が立ち去った。


 さて。


 一息ついて、ハラルドが立ち上がって、自らも部屋を後にした。

 ハラルドにはこの後――恒例の“報告会”が待ち受けているのだ。





「まったく、自分一人だけ独り占めして、ずるいではないか」


 ハラルドは――現在内務の宰相となった、第二王子殿下の執務室に来ていた。


 第二王子殿下のレイフとは、ハラルドが宰相を務めていた時代から、宰相の補佐役をしていたから、かなり長い付き合いでもある。


 ハラルドは、今は、外務大臣に任命された。


 だが、今までの癖で――ハラルドは、毎日、レイフに呼び出されて、その日の報告やら、興味深い話やらと、レイフの()()()()をさせられている。


 これは昔からの恒例行事で、今となっては、もう、言い返す気も失せて、毎日、四時になると、ハラルドはレイフの執務室を訪れていた。



「アフタヌーンティーなら、3時だろう?」



 仕事を終える前に、(さっさと) レイフの相手を済まそうと考えているハラルドに、文句を言ってきたレイフに対し、



「アフタヌーンティーなど取りませんので」



などと、スッパリとレイフを切り落とすハラルドだ。


 それで、二人の“報告会”は、毎日、四時に始まる。



読んでいただきありがとうございました。

一番下に、『小説家になろう勝手にランキング』のランキングタグをいれてみました。クリックしていただけたら、嬉しいです。


Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Funtoki-ATOps-Title-Illustration
ランキングタグ、クリックしていただけたら嬉しいです (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
小説家になろう 勝手にランキング

その他にも、まだまだ楽しめる小説もりだくさん。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ