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А.в 慰労会と称して - 03

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 グッと拳を握り、

「だって、ものすごい高価な宝石なのよ。落としたらどうしようとか、触って指紋ついたらどうしようとか、考えちゃうじゃない」


「指紋なんか、(ぬぐ)えばいいだけじゃないか」


 そうです。


 フィロは超現実的な子供なのです。くだらないことに時間を潰すより、さっさと解決策を見つけるのが、性にあっている。


「それだけじゃあ、足りないわよっ!」


 なにに興奮しているのか理解不能で、フィロは、さっさとアーシュリンを放っておいて、またテーブルに戻っていく。


「それに、第三騎士団の副団長さま、すごくかっこよかったぁぁぁぁぁぁ! お伽話(とぎばなし)にでてくる王子さまみたいなんだもの」


 いや、ギルバートは、実際に、アトレシア大王国の第三王子である。


「もうっ、白い騎士団の制服がかっこよくて、きらきらとまぶしくて、長いまつ毛の影が差しかかる瞳やお顔が凛々(りり)しくて、物腰も所作も、とても穏やかで洗練されていて、それなのに、お色気満々の大人の色気があって、本物の王子さまみたいっ!」


 いや、だから、ギルバートは本物の王子なのだ。


「それに、それに、それにっ!」


 拳が最高潮に握りしめられていて、アーシュリンが力説する。


「マイレディーを見つめる瞳が、もう優しくて、とろけそうで、もうっ、素敵ぃぃぃぃぃぃぃ!」


 アーシュリンの戯言(ざれごと)には耳を傾けていなかったフィロでも、その最後の一言には、思うところがあった。

 嫌そうに、顔をしかめてしまう。


「美男美女のカップルで、お姫さまと王子さまなんて、素敵すぎるわぁぁぁっ!」


 そして、興奮が収まりきらないアーシュリンが、一人ではしゃぎまくっている。


 それで、さっきの緊張が解けたのか、オルガもほっと息をついた。


「アーシュリン、なんですか? そんなに騒ぎ立てて、恥ずかしいですよ」


「はい、申し訳ありません。でも、オルガさんだって、先程、ご覧になったでしょう? あんな高価な宝石など、私は見たことがありませんでした」


「そうですね。ですが、マイレディーが、少々、特別なだけで、貴族のご令嬢なら、宝石程度は、いつも身に着けているものですよ」


「そうですよね。マイレディーは、あまり着飾ることがありませんからぁ……」


 残念ですぅ、と呟きたいアーシュリンの気持ちは、オルガも非常に理解できる。


「それに、第三王子殿下さまのことを、気安く口に出したり、騒ぎ立てたりするものではありませんよ」

「はい……、申し訳ありませんでした……」


 そうやって、セシルからも注意されていたことだ。極力、王国との関係を公にしないように、と。

 そこまでの問題をちゃんと諫めたので、オルガも、それ以上、叱りはしない。


 ただ、「お姫さまと王子さま――」 の部分は、さすがに、繊細な話題なだけに、オルガごときが口を挟めることではないのだ。


 オルガ達の大切な領主さまは、お若く、お美しく、才能も能力もあり、オルガにしたら、贔屓目(ひいきめ)だろうと、今いる独身貴族の令嬢の中でも、“最良物件”とさえ断言できる。


 だから、素敵な殿方や貴族――まして、王族の王子――が現れて、セシルに魅了されてしまうのは不思議もない。



* * *



 大広間に続く長い廊下をゆっくりと進んで行き、ギルバートの隣で、セシルも大きな扉の前で止まる。

 この大きな扉は、以前にやって来た会場の大広間の扉である。


 あの事件の後、すっかり傷跡も消えて、今では、以前と変わらぬ重厚な扉が前に(そび)え立つ。


 前回は、イシュトールのエスコートで、変装もしていたし、左程、夜会に興味もなかっただけに、どうでもいい感じで大広間に向かったものだが。


 だが、今夜は……さすがに、あの時と状況が全く違う。


 まさか――隣国からやって来た伯爵令嬢のエスコート役が、第三王子殿下自身だったなど、きっと、会場内では、疑いようもないほどの波紋を作り、大騒動となってもおかしくはないだろう……。


 これ以上、王国でも王宮でも、アトレシア大王国とは関り合いになりたくないのに。


 そのセシルの切に願っている願望は――絶対、今夜の夜会で、完全に消滅させられてしまうことだろう。


 だが……、セシルの護衛をしているのか、ギルバートは、今夜のセシルのエスコート役である。


 本人は、この状況を全く不思議に思っていないのか、気にもしていないのか、これから――簡単に予想される大波乱を前に、普段と全く様子が変わらない。


 以前も見た騎士団の――たぶん団長と副団長だけなのだろうが――正礼装は、白地の制服だった。制服と言うよりは高位貴族のイブニングコートが、少し軍服化したような見た目だ。


 ジャケットの胸元には階級章なのか、金の飾りが何個も連なり、ジャケットや袖の襟元や裾には、アクセントが入る赤地のストライプなど。威厳が更に強まった雰囲気でもある。


 右肩からは金の飾緒(しょくしょ)が下がり、他の装飾や刺繍も金でなっている。中から少し覗くベストも、白地に豪奢な金の刺繍がされていた。


 そして、マントの代わりに足首まで届きそうな長い白いコートを羽織り、その肩には、金のエポレットが、裾も乱れず並んでいる。


 これだけの豪奢な整いに、輝かしいほどの金の装飾が白地に反射して威厳があり、立ち姿が凛々しくて、女性の前にその姿を見せただけで、一瞬にして虜にしてしまいそうな出で立ちは、誰しもが目を奪われてしまうことだろう。


 これぞ、お伽話に出てくる王子さまの()()()()()()()である。


 実際に、ギルバートは、王子サマなのではあるが……。


 国が変われど、世界が(異世界が) 変われど、昔から、軍服を身に着けた男性は、見目麗しく見えるものだ、などと言われているのがあまりにも納得だ。


 これだけ目の惹く様相で、格好で、凛々しい騎士サマが隣にやってきたら、普通の女性など、一瞬で卒倒ものだろう。


 おまけに――このギルバートは、本当に物語にでてきそうな“王子サマ”の容姿を持っている。きっと、王族の正礼装をしても、見劣りはしないであろう。


 背が高く、鍛え抜かれた体躯がしなやかで、それだけでも凛々しく見えるのに、切れ長の瞳が色香を映して憂い、長い睫毛(まつげ)に影が落ち、スッと伸びた鼻梁(びりょう)も、大き過ぎず小さすぎない唇も、その全て、完璧に整ったものすごい美貌なのだ。


 さすが、異世界の王子サマ。


 溜息がでてきそうなほどの、(うるわ)しの貴公子、である。


 王子殿下だからというだけではなく、騎士団の副団長としても、ギルバートは――疑いようもなく“最良物件”の貴族男児のはずだ。


 こんな(ある意味) 派手な男性にエスコートされて会場入りするセシルは、もう絶対に……会場中の女性から、憎悪と嫉妬の対象にされるのは間違いなかった。


「――――ノーウッド王国ヘルバート伯爵令嬢、ご到着っ!」


 扉の向こうで、大きな呼び声が聞こえた。


 セシルの前で、大きな扉がゆっくりと開いていく。



読んでいただきありがとうございました。

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