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А.б またアトレシア大王国にて - 06

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 ローズオイルとかよく昔も耳にしたが、実は、生産は、それほど簡単に出来上がるものではなかったような記憶があるが?


 かなりの量のローズを用意しても、小瓶程度くらいのローズオイルや、沪過した場合でも、ローズウォーターだって、小瓶程度だったと思ったのだが。


 それが、石鹸に香りを滲ませるなど、かなりの労力がかかるはずだ。特に、()()()()では。


 石鹸など、ものすごく高価な品物として、貴族の貴婦人だって、お金持ちでなければ入手できないし、入手できても、数が限られている。


 セシルの領地では、セシルは育てているローズが限られているから、ほとんどローズオイルなどの嗜好品(しこうひん)は作っていない。


 一応、香水程度のローズウォーターは挑戦してみたが、それだけである。


 近年、やっと領地でもアーモンドとオリーブの生産ができるようになった。まだ少量で、市場や交易の場に出すほどの出荷量もないが、それでも出だしとしては好調である。


 この時代で――記憶を取り戻し――目を覚ましたセシルは、まず、生活の不便さに辟易していた。


 それで、パサパサになる髪の毛を、ぶっつり切り落としてやろうか、とさえ考えたほどである。



「やっぱり、椿オイル?」



 それは有名だ。


 でも、自分で作ったことなどない。


 だから、領地に移って一番初めに考えたのは、領地開発と伴い、椿などの役に立つ花を植えることから始めていた。


 邸の侍従や侍女達などは、



「まあま、お嬢様は、綺麗なお花が、よくお似合いですわね」



と花の趣味があるセシルに喜んでいたが、実際は、そんな理由で花を育て始めたのではない。


 要は、椿オイルの生成!


 それだけだ。


 それで、初めて椿オイル(らしき) ものをうろ覚えで作ってみて、一応、成功した時の感動と言ったら。


 それで、セシルは、(一人だけ贅沢に) 椿オイルを使って、髪の毛や体を洗うことができたのだ。


 今は、オリーブオイルとアーモンドオイルを作ってもらったので(セシルが頼み込んで)、その二つを混ぜて、石鹸までも作ってみた。


 ここまできたら、「夏休みの自由研究がんばろうっ!」 の勢いである。


 どこかで、誰かがブログで話していた石鹸は、苛性ソーダを使っていたような?


 だが、「苛性ソーダって、この時代で何?」 と、次の疑問が浮かぶ。


 それで、巷で有名な〇〇ストーンでは、確か、海から取った貝で石灰にして、それで、油を混ぜてうんたらかんたら?


 あいにく、セシルの領地の周囲は、完全な陸続き。


 それで、確か……うーん、などと頭を悩ませて、石灰はアルカリだから、誰かが木灰を使えばいい――と言っていたのを思い出して、セシルは、もう、躍り上がってしまった。


 「水」「油」「アルカリ」その三点。


 何度も、色々な配合を混ぜ合わせ、やーっと、セシル自作の石鹸ができた時は、天にも昇る心地だった。


 皆さん、見てよ、この苦労!


 きらきらした舞踏会やら、フリルの一杯ついたドレスが、なんぼのものですか!?


 そんなもの、現代なら簡単に使用できる、どこでも買える、でも、今は全然手に入らない石鹸に比べたら、大差で役に立たないじゃあないですかっ。


 シャンプーだって、コンディショナーだってない時代。


 それをどうやって、パサパサ髪から守るって言うの?


 椿オイルのおかげで、セシルの真っ直ぐな髪の毛は、今でも真っ直ぐなのだ。

 ゴワゴワとしているのでもないし、枝毛がひどいのでもない。おまけに、(つや)もしっかりある。


 ほら、なんて科学の発明は素晴らしいのでしょうっ!!


 でも、この時代だと、本ー当に一苦労ものなのだ。


 そんな苦労を思い出しながら、セシルは髪の毛も洗い終えていた。


 いつも一人で何でもできてしまうセシルは、体を乾かす時とて、侍女の手を借りない。

 それで、大きなタオルで体を拭いて、ガウンを羽織り、バスルームを後にする。


「もう、よろしいのですか、マイレディー?」

「ええ。とてもゆったりとして、気持ちが良かったわ」


「それはよろしゅうございました。では、髪の毛を乾かしましょうね」

「ええ、よろしく」


「その後は、マッサージもよろしいでしょうね」

「――それは、いらないんじゃなくて?」


「いいえ、マイレディー。明日はパーティーなのですよ。王国中の貴族が集まるその場で、マイレディーが疲れたお顔を出すなど、絶対にいけません」


「いえいえ。もう、この湯浴みで、気分は最高ですわ」


「ご心配はいりません。王宮ですので、マッサージ用のベッドがございませんが、こちらのベッドにタオルを敷きまして、マッサージもできますわ」


「――いらないでしょう?」

「いいえ、ダメです。明日は、マイレディーの完璧な整いで、その美しいお姿をお披露目なさるのです」


 いや、お披露目する気もないし、セシルはただのゲストの一人に過ぎない。


 だが、マッサージは――恒例のことである。豊穣祭の後夜祭の前には、邸中の侍女が、寄ってたかってセシルを飾り立てる。


 もちろん、お肌が疲れていてもダメ。乾燥していてもダメ。


 それで、後夜祭の前には、必ずマッサージをさせられるセシルだった。


 別に、マッサージが嫌いなのではない。

 オルガなど、昔からそういったことを訓練されているから、エキスパート並に気持ちいいものだ。


 だが、王宮など、自分の邸でもない場所で、ベッドに裸で寝転がるなど――セシルも、少々、抵抗がある。


「さあさ、こちらへ。髪の毛を乾かしますわね」


 オルガとアーシュリンに勧められて、鏡台の前で椅子に腰を下ろしたセシルの周りで、気のせいではなくて――オルガもアーシュリンもご機嫌だ。


 王宮にいるから?


 いや、部屋が豪奢だからと言って、驚いて感動することはあるが、大張り切りで、ご機嫌になる理由がない。


「――なにかしら? オルガもアーシュリンも、長旅だったのに、疲れていないの?」


「はい。十分に、休ませていただきましたから。それに、明日は、マイレディーをお披露目するパーティーですもの。疲れなど、見せてはいられませんわ。そうでしょう、アーシュリン?」


「はいっ。マイレディーを、完璧にドレスアップしますよね、オルガさん」

「もちろんですわ」


 なるほど……。


 それで、いつも以上に、余計なやる気が出ているわけだ……。


 セシルを着飾らせる機会など、()()()ない。

 それだけに、セシルを敬愛している邸の侍女達は――ああ……、そうだった。セシルを着飾らせる時には、ものすごいやる気を出すのだった。


 セシルは、別に、かつらを被って、昔からしているような、あの野暮ったいドレスを着ても構わない。


 これ以上、王国から、王宮から、目立たないようにするのならば、笑い者になってさっさと消えたいくらいだ。


 まさか、セシルがそんな――末恐ろしいことを考えているなど、オルガ達には、口が裂けても言えないセシルだった。



読んでいただきありがとうございました。

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