表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/547

А.а 始まり - 02

ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。

「ドレス、って……あの豊穣祭で着ていらっしゃったドレスでは、いけないのですか?」

「あれは――この領地では着ているだけでして、王宮などでは……」


「問題、があるのですか? 門外不出など?」

「いいえ、そのようなことではございません。ただ――あの手のドレスは、隣国でも、きっと、今流行(はやり)のドレスの型ではございませんから」


 確かに、セシルのドレスの形は、ギルバートもあまり目にした型ではなかった。

 むしろ、王国内でも、初めて見るようなドレスだった。


 だが、あまりにセシルに良く似合っていた。


 似合い過ぎていた。


 とてもでないが、ドレスの型が王国で流行っていないから野暮ったい、などと思えるようなドレスではないはずだ。


 形が違っていようと、あのドレスは、まさに、セシルに着られる為に作られたようなドレスで、それで――ギルバートは、我も忘れても、見惚れてしまっていたくらいである。


 あのドレスを着たセシルが笑いものになるなど、絶対にあり得ないだろう。


「あの……、私は、貴婦人のドレスのことは良く分かりませんが――それでも、ご令嬢が豊穣祭で着られていたドレスは、とても素敵なドレスだったと、私も思っております」


「ありがとうございます」

「差し支えなければ――あのドレスで、パーティーに参加していただく、というのは?」


 やっぱり、そうなりますよねぇ……。


 今の所、もうこれ以上の言い訳があるのでもない。


 これ以上引き伸ばしても、ただ単に、セシルの我儘だけで、誠意を仇で返すような失礼な令嬢になってしまう……。


「――本当に、あの手のドレスで、よろしいんでしょうか……」


「もちろんです。男の私がこのようなことを申し上げても、あまり……真実味に欠けているかもしれませんが、豊穣祭に着ていらっしゃったドレスは、とてもよくお似合いでした。ドレスの形が違っていたとしても、ご令嬢は隣国の方ですから、「隣国ではああいった形のドレスなのだろうか?」 と、受け止められるのではないでしょうか」


「そう、かもしれませんわね……」


 はあぁ……。


 本当に、胸内で溜息がこぼれてしまう。


「この度は、このようにご招待いただきまして、ありがとうございます。私も、パーティーへのご招待、快く受け賜わりたくございます」

「ありがとうございます」


 まずは、難関の第一段階はクリアしたようで、ギルバートもホッとしてしまう。


「移動や護衛の件なのですが――」

「さすがに、年を明けてから新国王践祚ともなれば、国中で、警戒なさっていることでしょう?」


 さすが、セシルだけあって、話が早い。


「パーティーが開かれる二月には、王国の出入りは、そこまで厳しくはならないだろうとは思うのですが、王都、または王宮内は――申し訳ありません。新国王陛下即位のすぐ後ですので、警備も厳重になると思われます。王都への出入りも、厳しく取り締まられるはずです」


「わかりました……」


 そうなると、やはり、セシルの領地の騎士達は、連れて行くことは難しいようである。


「せめて――ご令嬢個人の付き人が数人、お付きの者、または、護衛が数人なら、たぶん、何とかなると思いますが」

「わかりました」


「では、二月の初めに、我々の護衛をこちらに送ります。移動は六日、もしくは、ゆっくりしても、七日で王都に到着できますので、ご令嬢は、一日前に到着なされるように、こちらで手配いたします」


「わかりました」

「滞在は――一週間ほど予定しておりますが、いかがでしょうか?」


 六日もかけて移動しなければならないのに、まさか、パーティーの翌日帰ります――などと、そんな失礼なことは言えないだろう。


 セシルを迎えにくる騎士達は、王都からの往復で、優に十二日は費やしてしまうのだ。


「いえ……、問題はございません」


 あぁ……、もう、段々と足を掴まれたまま、ズルズルと、あの王国に引っ張り込まれている気がするのは、セシルの気のせいなのだろうか。


 今まで、自国での社交界を一切すっぽかしていたツケが、一気に回って来たわけでもあるまいに……。


「あの……」

「なんでしょう?」


「護衛の帯刀は、許されておりますか?」

「もちろんです。ただ、王宮内を護衛だけでの移動、または、動くことは無理ですが」


「いいえ、そういったことはさせませんので。私が移動する時に、もし、護衛が付いてくる場合は、どうしたら良いのかと、思いまして」


「ご令嬢がご一緒であれば、問題ではありません」

「そうですか……。ありがとうございます」


「他に、なにか質問はございませんか?」

「今日は、どちらにお泊りですか?」


「これから宿場町の方で、宿を探させていただこうかと」

「それなら、お部屋を用意させますね」


「いえっ――そのようなお気遣いはどうか。このように、先触れもなく、こちらに伺ってしまったのは、我々の方ですので」


「いいえ。遠路より、わざわざ、このようにお越しいただきましたので、せめて、できることと言えば、お部屋を用意することくらいですので」


 セシルがギルバート達を呼びつけたのではない。

 はっきり言って、ギルバート達の方が、連絡もなく、勝手に押しかけて来た方だ。


 だが、騎士団がわざわざ招待状を届けに来てくれた誠意は、礼儀で返さないといけないと思っているのか、律儀なセシルの好意に、ギルバートも甘えることにした。


「そのようなお心遣い、感謝いたします」

「皆様は、何人でいらっしゃったのですか?」


「私を含め四人です」

「――随分、少ないのですのね」


「そうでしょうか?」

「こう――申しては失礼かと存じますが――」


「なんでしょうか?」

「新国王陛下の践祚がお決まりになったのでしたら、副団長様のお身も、そう、安全ではございませんのでは?」


 今までは第三王子殿下であっても、騎士団の方が優先されていたので、ギルバートが狙われるより、まず、第一、第二王子殿下のアルデーラや、レイフが狙われる確率が高かった。


 アルデーラの身に何かあったとしたら、レイフが、次の王太子殿下としての後継者となるからだ。


 (まつりごと)から離れ、騎士団に所属しているギルバートは、余程のことがなければ(レイフの身まで危険にさらされたのなら)、ギルバートは、あの時点では、王家に呼び戻される可能性は低かった。


 だが、アルデーラが新国王陛下として即位したなら、今までの後継者の立ち位置が、変わってくるはずだろう。


 噂では、アルデーラには後継者となる王子殿下がいるそうだが、まだ幼く、王太子殿下として即位させるとは、まだ考えられない。


 最低最悪でも、あと数年は待つはずだ。


「その可能性は、出てくるかもしれませんが、今はまだ、そこまでひどい状態ではないと、判断しております」


「お帰りの際に――我が領地の騎士を、国境側まで護衛につけることはできますが――失礼になってしまいますか?」


「いいえ。そのようなことはございません。お気遣いに感謝いたします」



読んでいただきありがとうございました。

一番下に、『小説家になろう勝手にランキング』のランキングタグをいれてみました。クリックしていただけたら、嬉しいです。


Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Funtoki-ATOps-Title-Illustration
ランキングタグ、クリックしていただけたら嬉しいです (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
小説家になろう 勝手にランキング

その他にも、まだまだ楽しめる小説もりだくさん。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ