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Е.д 恋の病に苛まされるうら若き王子 - 04

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 かわいい弟には、王族であっても、一応の幸せな結婚を望んで欲しいのは、兄としての贔屓目(ひいきめ)だろうか。


 アルデーラも、子供の時から決められた政治的結婚だったが、それでも、妃であるアデラとは、幼少から、ずっと王宮で一緒に過ごし、育ってきた仲だったから、アルデーラもアデラも、政略結婚であろうと、互いに愛し合うことができた。


 ある意味、王族であり、王太子の立場でありながら、アルデーラの方は、幸せな結婚ができたと言っても過言ではない。


 そのせいか、せめて、末弟のギルバートも、幸せを見つけられるような結婚をして欲しいとは、兄として望んでしまう。


 状況や、政況がそれを許さなくても、兄としては、少し願ってもしまうのだ。


 すぐ下の弟のレイフは――あっちもあっちで、ある意味、結婚が遠いだろう弟ではある。


 頭脳明晰(ずのうめいせき)で、あまりに頭が切れるだけに、並大抵の女性では、全く、レイフの相手にもならないのが目に見えていた。


 政略結婚だろうと、あのレイフの、物も言わせぬ圧力と、付け入るスキをもみせない討論と議論で畳み込まれたら、どんな人間でも、レイフに逆らうことができない、ある意味――最強の偏屈な弟である。


 だから、あの年にもなって、未だに婚約者を持っていないレイフの状況には、アルデーラも全く無視しているし、父である国王陛下も、障らぬ神に祟りなし――と、見て見ぬふりを突き通しているほどだ。


「新年を明ければ、私は国王として即位する」


 あまりに突然に、おまけに突飛な話題を持ち出してきたアルデーラに驚いて、ガバッと、ギルバートが起き上がっていた。


「それは――」

「先日、父上からその承諾を得たのだ。まだ、その情報は伏せて、公開していないが」


「――――父上は、それで、よろしいのですか……?」


 レイフもギルバートも、現状を照らし合わせると、王太子殿下であるアルデーラが、国王として王国を統率するのが、最善だと考えている。


 だが、現国王である父親に、不満があるわけではない。問題があるわけでもない。

 治世は――国王の性格を表しているような、穏やか、ではある。


 表面上は。


 表面下では、そうではない。


 現段階では、王族に匹敵するほどの権力を押さえている“長老派”を、未だ統制することは不可能だ。

 王国内の(うみ)とまで言える、彼らの権力への強欲さは、王族の統治方法を超えるものだ。


 なににつけても意見し、“長老派”の賛成がなくては、政治の決定権も行使できないなど、王族はただのお飾り状態である。


 王族と、貴族達、そして、“長老派”。長い膠着(こうちゃく)状態が続いて、“長老派”の権力だけが肥大していく。


 アルデーラが成人する頃には、今まで、アルデーラが進めてきた密かな改革をやっと推し進め、“長老派”の息がかかった()()近衛騎士団から離れ、全く別の武力を保持し、それを行使できる()()騎士団を設立するまでこじつけた。


 それから、レイフが官僚入りを済ませると、政官側からの抑えもきくようになり、徐々にではあるが、“長老派”の王宮内での権力独占を削り落とすことに、少しずつ成功している。


 “長老派”とは、これから長い戦いになるのは目に見えているが、それでも、国王としての権力がなければ、アルデーラの政策にも、限度があるのだ。


 アルデーラの実力があろうが、最終決断は、国王陛下に委ねられる。

 だから、未だ王太子殿下であるアルデーラには、最後の最後で、決め手となる権力がないことになる。


 まさか――政と武力の統制がバランスの取れている現状でも、そのたった一つの弱点、とでもいえよう問題点を、あっさりと指摘してきたセシルには、本当に、感嘆ものである。


 アルデーラだって、ずっと、その問題に悩んでいた一人であるのは、レイフもギルバートも知っていた。


 父親の国王陛下は、息子として尊敬している。


 特別、問題もみられなく、臣下からも信頼されている父親を押しのけて――アルデーラが即位することは、難しかったのだ。


 だが、セシルに指摘されたからかもしれないが――やはり、兄のアルデーラも、その問題を、真剣に考え直していたようなのである。



「同情や感傷で、一国が治められるのであれば、ある程度、知能のある領民にだって、国王になれることでしょう」



 あれは――きつい一言だった。


 容赦もなく。


 なのに、それを口にする本人は、あまりに淡々として、感情的でもなく、悲観しているのでもなく、(さげす)んでいるのでもない。


 決意と覚悟。

 そして、それをやり遂げる、強い意志と精神。



「穏やかな治世なら、そんなことを要求されずに済むのでしょうが――混乱や動乱の最中、一番に国の被害を受けるのは、誰ですか?」



 もちろん、その答えは、罪もない民だけである。


 あの人は、本当に容赦がない。

 見たくないとか、目を逸らしているとか、そんなことを、一切、許さないあの瞳は、痛いところを簡単に突いてくる。


「父上の治世に問題があったのではないことを、父上も、よく、存じ上げていらっしゃる。だが、現状では――それだけでは、足りぬのだ……」

「はい……」


「それ故、父上は今年で退位なさり、新年を迎え、私が即位することを、承諾してくださった」

「そうですか。――おめでとうございます」


「いや、それはまだだから、来年でいい」


 尊敬している父親を押しのけて、国王という地位につきたいわけではないのだ。

 だが、現状が、いつまでも、そんな生ぬるい感傷を、許さないだけなのだから。


「私が、国王として即位したなら――」


 それから後の言葉を繋げない兄に、ギルバートも黙って待っている。


「それなら――私は、お前の我儘(わがまま)を許しても良い」

「――――えっ?!」


 一瞬、聞き間違えたのかと、ギルバートも聞き返してしまっていた。


「冗談、ですか?」

「冗談ではない」


「なぜ、ですか?」

「かの令嬢の能力は、王国の力となる」


 それは、ギルバートだって、異論はない。


 あの能力は認められているだけではなく、絶対に、この王国にだって、役立つものであるのは、疑いようもないのだから。


 それでも、そんな理由で、あの人の自由を、縛り付けることなどできない……。



読んでいただきありがとうございました。

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