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Д.д 新たな - 06

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 四人が列になって並び、クリストフが、基礎から剣の持ち方、構え方を指導している。

 クリストフも若いのに、指導の仕方が様になっていて、年期が入っているものだ。


「水風呂の場合、あまり、冷たい水がなくてはできませんか?」


「できないことはないと思いますが、流し水のように、水を温まらせないのでしたら、たぶん、大丈夫だとは思いますわ」

「流し水、ですか――」


 ふーむと、その可能性もどうやってすべきか、ギルバートも考える。


「お水が温まっていると、あまり効果がないようですので、水に浸かる時間も長くなってしまいますでしょう? それだけと、ただ、体を冷やしてしまうだけになってしまいますから」


「なるほど。確かにそうですね」

「冷たいもので、一気に冷やし込む、という形になるのです」

「そうですか」


「お試しになられるのですか?」

「やってみようとは考えていますが、水場をどうしようか、そこが問題でしてね」


「貯めている水では、雑菌が増えてしまう恐れがありますので、その場合は、毎回、清潔に、水場やお風呂を洗い流してくださいね」


「そうですか、わかりました。ご令嬢は、本当に、色々な知識をお持ちなのですね」

「いえ、ただ、以前に聞いたことを、真似しているだけですの」


 でも、それは一体どこで聞いた話で、知識なのだろう?


 不思議な女性だ。


 ギルバートも、そんなことを思ってしまう。


 王国にいた時は、セシルのあまりにずば抜けた能力を見せつけられ、唖然として、そして、嵐が過ぎ去ったような跡だけを残し(いや、跡が残ったのか……?)、消え去ってしまったご令嬢だ。


 この領地にやって来たギルバートとクリストフの前では、たぶん、これが普段のセシルの行動や態度なのだろうが、セシルは王国にいた時とは、全く違った雰囲気をしていた。


 質問したことには、いつも、きちんと返答をしてくれて、丁寧に説明をしてくれる。

 いつも、質問を促し、他人の感想を聞くことを(いと)わない、柔軟性もあるように見える。


 きっと造詣(ぞうけい)が深く、医療関係の知識だって、かなりのものだ。


 それなのに、そんな自分の立場を威張り散らすこともなく、その知識を生かし、領地を統治し、運営し、領民にまで、その知識を簡単に授けてあげることができるご令嬢だ。


 王国にいたままでは、こんなセシルの本当の姿を、垣間見ることもできなかっただろう。


「ご令嬢には、視察を許していただきまして、本当に感謝申し上げます」

「あら、よろしいのですのよ」


「それに、邸にも滞在させていただき、お世話にまでなってしまっています」


「邸の者も、他国からのゲストを迎えることなど滅多にありませんから、緊張しているのもありますけれど、きっと喜んでいることでしょう。この邸には、中々、そういったゲストがやって来ませんものね」


「それなら、いいのですが……」


 ギルバート達は来賓(らいひん)扱いで、丁寧に世話をされてしまっている。

 押しかけて来た身では、少々、申し訳ないほどに。


「今夜も、報告会があるのですか?」

「ええ、そうですね」


「ご迷惑でなければ、私もまた、見学させていただいてもよろしいでしょうか?」

「構いませんわよ。お疲れではありませんの? 訓練もしていただいたのに」


 あの程度、ギルバートにとっては、訓練のうちにも入らないのだが、そのことはギルバートも、特に、話はしない。


「ええ、私は問題ではありません」

「さすが、王国騎士団の騎士のお方なのですね。訓練をした後でも、まだ体力が残っているんですもの」


 はは、とギルバートもただ笑っているだけだった。


 実は、ギルバートなら、この倍の訓練を軽くこなしているし、騎士達にもさせて(しごいて) いると知ったら、このセシルでも目を回してしまうのだろうか。


 出会ってからというもの、セシルはいつも冷静で、どんな時でも、落ち着いた態度が変わらない。

 だから、セシルが驚いてしまうような光景も、あまりギルバートには想像ができなかった。


「――あなたは、本当に、不思議な方ですね」


 セシルに話しかけた言葉ではなかった。

 ただ、ギルバートが漏らしたような呟きだった。


「そうですか? よく、変人、とは言われていますが」

「ええ? そうなのですか? それは、失礼な物言いですね」


 貴族のご令嬢という立場は抜きにしても、失礼な物言いだ。


 セシルは、くすり、と笑みを漏らし、

「口では言っていませんのよ。ですが、たぶん、心の中で、きっとそう思っているんですわ。だって、葛藤している様子が、バレバレなんですもの」


「そう、ですか……」


 セシルに驚いて、それで、唖然として――葛藤してしまっている人間がいるかもしれないことは、ギルバートも理解できる。


 ギルバートだって、全く、同じ立場だったから。


「きっと、驚いてしまって、言葉が出ない――というような状況では? 変人、というのは、さすがにひどい形容です」


「私は気にしていませんわ。ある意味、それも誉め言葉でしょう?」

「そう、でしょうか……?」


 なにか違うような気がするのだが。


「ええ、そうです。人とは変わっている、()()。なんてね?」

「まあ……、そういう解釈も、あるかもしれませんが……」


 少々、こじつけっぽくも、聞こえなくはない。


 だが、セシルは、全然、気にしている様子でもない。


 そういうのを悪口とは取らないんだなと、また、新たな発見をしていたギルバートだった。



読んでいただきありがとうございました。

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