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Д.д 新たな - 03

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* * *



 午後からの訓練には、午前中に交じっていない騎士達が揃っていた。

 日課の仕事や任務の順番で、午前と午後に分けた訓練で、明日もそれは同じだ。


 ただ、調整の利く騎士達は、自己参加できることになっているので、セシルの話だと、時間がある騎士は訓練に参加します、と伝えられた。


 並んでいる騎士達を見渡して――ギルバートの気のせいではなくて、見慣れた顔が並んでいることに、ギルバートは気が付いた。


 見慣れた()、ではない。


 あの時は、常時、全員が覆面をしていたので、目元や、顔の輪郭がなんとなく見えていたものだが、それだけだ。


 それでも、見覚えのある顔立ち、体型や体格が、きっと、ギルバートの見間違えではないと伝えていた。


「ああ、やって来ましたねえ」


 どうやら、クリストフも気が付いたようだった。


 口元だけを微かに上げ、並んでいる騎士達を面白そうに見返している。

 この顔は、自分でしっかりとしごきに行きたい時の、クリストフの顔だった。


 今回の訓練は、クリストフはギルバートに全部押し付けて(なにしろ“鬼の副団長”サマだから)、



「ただ見学しています」



などと、初めから不参加を言ってきていたのに。


「まさか、午後から参加すると、でも?」

「いえいえ。ギルバート様が、()()()()()訓練なさるのですから、邪魔はしません」


 でも、クリストフの視線の先には、ある一か所だけに、焦点が絞られている。

 気になって、しょうがないのだろう。


 だから、ウズウズと、しごき虫がうずいているはずなのだ。


 午前中と同じように、午後からの訓練も、まず、ギルバートの確認から始まっていた。


 動かない姿勢のまま、5分。次の5分。

 腰を深く落として5分。

 そして、外周回りの走り込み。ローテーション。


 テンポよく、途切れることなくスムーズに、ギルバートの訓練は進んで行く。


 その間、傍で号令を出したり、時計で時間を確認しているクリストフだって、つい、その視線の先がある一点に向いて、確認してしまうのだ。


 ほう、まだ生き残ってますか、などなど。


 それで、面白そうに、その口端がほんの微かにだけ、つい、上がってしまっているのだ。


 午後からの訓練も、ラソムは参加していた。

 午前中の訓練を終わり、その後、昼食に向かう前に、ギルバートに何点かの質問点を聞いてみたら、親切にも、時間を割いて、全部、きちんと説明をしてくれた。


 それで、基礎運動のアドバイスも受け、随分、為になる訓練となった。


 だが、質問を持っていたのはラソムだけではなく、ギルバートの方も、ラソムに質問があったのだ。


 領地は子供達が多い。それで、子供の騎士見習いがたくさんいる。


 身体的には成人した大人には敵わないが、それでも、早くから、騎士訓練やその修行をする子供には、大人から騎士になる訓練を始めた王国の騎士達よりも、遥かに、その吸収力も、成長も早いだろう。


 そう言った、大人と子供の違いなど、ラソムが気付いたかどうか、ギルバートも質問してみたのだ。


 今の王国騎士団の政策は、それほど悪いものではない。

 18歳になると、騎士団に入る為の騎士養成学校に入学できる。そこで一年、騎士になる為に勉強し、鍛錬し、修行して、一年後に騎士入団試験を受けることができる。


 ただ、騎士入団試験に受かり、騎士団に入団しても、それから数年は、ほとんど使い物にならないのが常だ。


 徹底した騎士の基礎を教え込み、騎士の仕事や任務を教え込み、それから、騎士団に慣れさせていく。


 経験組の騎士達と組ませ、王都の巡回や警備をやらされて、それから、初めて、ある程度動けるような経験を積むと、王宮での警備に当てられる。


 貴族などは、初めから剣技を習っているものばかりなので、騎士養成学校にやって来ても、剣技の科目は、ある程度、問題なくこなすことができる。


 だが、王国騎士団は、ただ剣を振り回せばよいというだけの仕事ではないから、その他の戦術も習えば、色々な科目を終了していかなければならない。


 一年でも、ほとんどが、基礎知識で終わってしまっている。


 だから、もし――騎士になる資格である年齢を下げた場合、一体、どんな問題が上がって来るのか、考慮しなければならないのか、気を付けなければならないのか、ギルバートもラソムに聞いてみたかったのだ。


 この領地にやって来なければ、たぶん、ギルバートだって、そんなことを考えもしなかっただろう。


 別に、成人した大人が騎士になり始めても、問題はない。

 今までだって、騎士団は成り立っているし、緊急だろうと、きちんと機動できている。戦力にはなっている。


 それでも、今まで考えもしなかった新たな可能性は、出てきたことになる。


 これも、セシルが言うように、新たな()()、というものなのだろうか。


 少々、セシルに感化されて来てしまったのだろうか。


 ギルバートも、自嘲気味に、微苦笑を浮かべてしまう。


 ここ、連日、連夜、定例の報告会に参加させてもらっているギルバート達は、端にあるソファーに座って、会議の邪魔はしない。


 でも、定例の報告会に続き、豊穣祭の報告会も見学させてもらっている。

 いつも、いつも、その会議があまりにスムーズで、簡潔で、無駄が一切なくて、ただただ感心させられてしまっている。


 そんな中で、問題が上がって来ても、今まで見て来たセシルは、



「なぜですか?」



必ず、理由を聞いていた。


 「少々、無理かもしれません……」 という対応でも、セシルは、必ずその理由を聞いていた。


 絶対に、頭ごなしに言葉だけを信じなくて、それで、理由を聞いて、必ず、状況を理解することを、心掛けているように見えたのだ。


 だから、他の者にとっては、難しくなってきた仕事でも、セシルにとっては問題ではなく、すぐに、当座の解決策が上がって来る令嬢だった。


 解決が素早いなあ……と、何度、ギルバートも感心してしまったことか。


 それで、できないと決めつけず、セシルは、簡単に次の道を、他の方法を探し、そこで、まごついていないのだ。



「では、今年は、それで挑戦してみましょう。いい機会だから」



 とも、何度か、聞いたセリフだ。


 何事も、自分達の知らない経験でも、未知の知識でも、セシルは立ち止まってなどいない。

 それで、少しでも挑戦してみて、どうなるか判断してみましょう、といつも前向きなのだ。


 失敗を恐れていない。

 失敗は“次の改善余地” になって、セシルにとっては、“貴重な経験と知識” となってしまう。


 なにもかもが、前向きで、そのセシルを見ているギルバートも、なんだか、セシルの行動を見ていたら、何でもできそうな気になってきてしまうのだから、不思議なものだ。


 それで、王国内で子供の騎士学校はない。だからと言って、そんな考えを禁止する理由もない。


 少々、検討してみる価値はあるのではないだろうか。






読んでいただきありがとうございました。

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