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Д.г コキ使います - 03

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今回は、一気に詰め込んでしまいました。字数の関係で、二部に分けるよりはいいかな、と。

 後ろで控えているラソムも、全く嘘をつかない、それでいて、公正なギルバートに、面白そうに、微かにだけ、瞳を細めている。


 これからの訓練が、随分、楽しみになってくるではないか。


「では、今の整列している形のまま、一人ずつの間隔を少し開けて、並んでもらいたい」


 最初の指示で、整列していた全員が、等間隔に、横に広がって行く。


「最初は、剣を両手で持ち、止めの姿勢で構えるように。膝を軽く曲げて、腰を落とす」


 ギルバートは手に剣を握っていなかったが、握る真似をしながら、膝を曲げ、腰を落とした姿勢を全員に見せる。


「この姿勢のまま、5分間。全員、位置について。号令と共に、腰を落とすように」


 全員が言われた通りに、剣を抜いた。


 正位置で構え、「始め」というギルバートの号令と共に、全員が、ギルバートのように膝を曲げ、腰を下ろした。


 ギルバートは、端から、整列している騎士達の前を通り過ぎて行き、その構えを確認する。


 騎士見習いでも、まだまだ若い子供の騎士の前で止まり、剣の持ち方を調整し、角度を調整し、腰の落とし方も教えて行く。


 全員が同じ姿勢で動きはせず、ずっと構えたままだ。


 数分が過ぎ出すと、まだ幼い騎士見習いの何人かは、腕が震え始めている。

 それでも、剣を揺らさないように、必死で、構えているようだった。


「五分です」


 自分の着ている制服のポケットから、懐中時計を取り上げていたクリストフが、時間を確認して、淡々とそれを告げる。


「では、今から呼ぶ騎士は、剣を置き、私の左側に集まってもらいたい。他の騎士は、そのままの姿勢を続けるように」


 それで、ギルバートの腕が上がり、君、君、君――と言う風に、ギルバートが腕で騎士達を指名していく。


 今の所、ほとんどが、騎士見習いの騎士達だった。


 騎士見習い達がギルバートの近くに集まると、ギルバートは次の指示を出す。


「残っている騎士は、更に腰を深く落とす。こうやって」


 さっきまでは、軽く膝を曲げる程度だったのだが、今度は、かなり深く、膝が折れていた。


「この姿勢で、5分」


 残りの騎士達が、更に腰を深く落とし始めた間、ギルバートは、側に呼んだ騎士達を振り返る。


「君達は、まず、基礎体力を上げる必要がある」


 それから、何を思ったのか、きょろっと、訓練場を軽く見渡したギルバートが、騎士達に向きなおる。


「ここの訓練場の外周を、そうだな――最初は、20周。外側を、グルリと走ってくるように。20周を終えたら、また、この場に戻って来るように。では、初めて」


 その指示が出され、集められた騎士見習い達が、端側に向かって駆け出していく。


 そして、次の五分が終わっていた。


 そこからも、ギルバートに呼び出された騎士達が少し集まり、外周を走ってこい、という指示を受ける。


 残っているのは、ほとんどが正騎士の騎士達ばかりだったが、それでも、騎士見習いも残っている。

 その数を見やって、ギルバートも少し満足そうだ。


「では、この場に乗った騎士には、次に、素振りを100回。最初にした姿勢のまま、正位置の構えで、素振りをすること。構え」


 その掛け声で、騎士達が、きちんと真っ直ぐに、剣を構え直す。


「始め」


 1、2、3――と、クリストフの掛け声と共に、騎士達が素振りを始める。


 ギルバートは、先程と同じように、騎士達の前を一人一人通り過ぎ、素振りの構えを確認する。


 100回の素振りを終えると、次は、更に腰を落とした次の姿勢で、100回の素振りを。


 大した、激しい動きをしているのでもないのに、さすがに、腰を低く落とした姿勢でい続けると、足が震えだしてくる騎士達もいる。

 その100回を終えると、微かに息が上がりだしていた。


「次は、お互いに向き合って、素振りをしてもらう。丁度、前後2列だから、前列は後ろを向いて、後列と向き合うように」


 それで、前列と後列の騎士達が、向かい合う形になる。


「距離は、振り落とした時に、丁度、相手の剣が当たる距離で。数が合わなくても、心配しないように。互いに向き合ったら、正位置での構えからの素振りを10回。きちんと、相手の剣に当てるように。力を入れる必要はない」


 これは、向き合った時でも、きちんと正位置で剣が構えられるように、相手がいても、剣をぶらさないように訓練する、基礎運動だ。


 領地の騎士達は、大人と子供が混ざっているので、身長差がある場合の訓練にも、丁度良いものだ。


 慣れ親しんだ相手との素振りや、剣闘では、慣れてくる癖が出てしまう。

 それで、10回程度の素振りで、次にローテーションを回し、違う相手と向き合うと、身長や、剣の長さ、そういった違いに、また自分の構えをリセットしなければならない。


 素早いローテーションを繰り返すことにより、リセットの時間を収縮する訓練になるのだ。


 素早い状況判断、相手の力量の判断ができなければ、ただただ、力任せに剣を振り回しかねないからだ。


「10回終われば、右に移動し、次のパートナーと素振りを繰り返す。後列の初めの騎士は、前列に上がり、前列最後の騎士は、後列に並ぶ。数が合わず、相手がいない端の騎士は、一人で同じ素振りを繰り返す。ここまでで、質問は?」


「ありません」

「では、互いに向き合って、構え」


 騎士達が、一歩前に出てきたり、それで、互いの距離を合わせたりすると、全員がまた、正位置の構えに戻って行く。


「始め」


 10回ずつだと、すぐに剣を当てた素振りが終わり、また次の相手にと移って行く。

 ローテーションが早く、かなりのスピードで、1周、2周のローテーションが終わっていた。


 そこら辺から、外周を走っていた騎士達が、ぼちぼちと戻り始めて来て、それで、集合場所では、肩で息をしている騎士達もかなりいる。


 まだ、残っていた騎士達が、素振りのローテーションを終えていた。


「では、今度は、君達が外周を走って来てくれ。まだ体力があるようだから、20周くらいなら、簡単にこなせるだろう」


 抜け抜けと、そんなことを漏らすギルバートに、騎士達の顔も、少々、引きつってしまう。


 素振りをしていた騎士達が外周に走りに行って、戻って来た騎士見習いの騎士達は、今度は、素振りからまた始まる。

 ローテーションの素振りも混ぜて。


 まだ、訓練が始まってから、30~40分も経っていないのに、おまけに、ものすごい激しい動きをしたわけでもないのに、騎士達の額からは汗が流れ始め、半数近くだって、呼吸が上がりだしてくる者も出始めていた。


 実は、基礎運動だからと舐めてかかると、大変なことになる。


 基礎運動だからこそ、きちんとした構えを常に心がけ、常に集中していなければならない。


 剣闘になると、ほぼ、自分達の慣れた動きで剣をさばき、剣を動かす癖が出てきてしまうから、手首を曲げたり、腕だけで振り回したりする騎士達も、出てくるのだ。


 だから、徹底した同じ姿勢、同じ構え、同じ動作を繰り返すことによって、まずは、体に基礎を叩き込んでいかなければならない。


 それと同時に、少しでもだらけてしまうと、すぐに構えの乱れが目についてしまうので、ギルバートに注意されてしまう。


 簡単そうな動きに見えるが、実は、集中力をかなり要する動きなのだ。


 続けざまの集中力が要求され、あまり動かない固定された筋肉で、姿勢を保ったままでい続けるのも、簡単なことではない。


 自分達で考える以上に、頭脳と筋肉の両方が消費されるのだ。


「全員が揃ったようだから、剣を地面に置き、次は、腕立て伏せ50回」


 くるっと、ギルバートがラソムを振り返った。


「腕立て伏せを、教えるべきですか?」

「いえ、大丈夫です」

「そうですか」


 それなら、わざわざ初めから、腕立て伏せのやり方を教える必要がなくて、簡単だ。


「では、構えて」


 また、クリストフの号令と共に、騎士達全員が、腕立て伏せを始めて行く。


 快調な掛け声と号令。

 腕立て伏せの高さや角度も調整していくギルバート。


「では、剣を持って。先程のローテーションを、今度は全員で始めるように。素振りは5回ずつ」


 今度は、先程の以上にテンポを上げ、スピードを上げ、構え直す時間を与えさせない。


 無駄がなく、テキパキ、テキパキと訓練を続けて行くギルバートの後ろで、ラソムもかなり感心している。


 一体、どんな訓練になるのかと想像していたら、動きは、ほぼ基礎運動が多い。難しいことをさせているのでもないし、剣に頼るような指導ばかりでもない。


 ギルバートの訓練内容を観察しながら、ラソムも、ギルバートがどこに訓練の焦点を当てているのか、段々と理解し始めていた。


 領地の騎士達は、子供達が多い。

 剣を習い始めてからも、まだまだ時間も少なければ、経験も浅い。


 それだけに、基礎を学んでも、それが徹底して、体に叩きこまれていないことも、よくあることだ。


 だから、ギルバートの基礎訓練で、その問題が、更に明らかにされたようなものだ。


 ギルバート達が領地を去って行った後も、ラソムも、ギルバートがそれぞれに選別した騎士達の、その弱点強化の訓練を継続することができるだろう。


 どの騎士達が、基礎運動がまだ必要なのか。

 どの騎士達が、腕の筋力が足りないのか。


 他人の訓練方法を観察して、ラソムもかなり学ぶことがあった。

 やはり、今回の訓練は、またとない機会である。


 もうそろそろ、訓練が始まってから、一時間ほどが過ぎようとしていた。


 だが、その一時間の間、みっちり、ギルバートの訓練が止まず、途切れず、無理をさせているのでもない運動のはずなのに、領地の騎士達は、すでにかなりの数で、呼吸が上がっていたのは言うまでもない。


 そして、今度は、片膝を曲げて、地面に着く前まで腰を落とした形の素振りである。


 あれは、きついことだろう。


 太腿(ふともも)の筋肉の安定と、重心を動かさない姿勢。それから、剣を振る動き。


 どれも、(変な意味で) 最高潮に、普段使用しないであろう筋肉を使わなければならない体勢なのだ。


 さすがに、正騎士の騎士達だって、腕が震えているのが何人もいる。


 ふむふむと、ラソムは、その訓練方法でも、騎士達の弱点を再確認していたのだった。


 為になるなあ、などなど。


 ギルバートは、基礎運動で、きちんとした剣の構え、姿勢を教えるだけではなく、それと一緒に、騎士達の弱い部分の筋肉強化もしてくれるらしい。


 ギルバートや、側で付き添っているクリストフの立ち姿からしても、あの二人がかなりの剣の使い手であることは、ラソムにもすぐに気が付いたことだった。


 姿勢が良い、良くないという次元ではなくて、あの二人の立ち姿からしても、全体に筋肉が均等についているのが、制服を着ていようが、一目瞭然だったのだ。


 余程の鍛練を積み重ねて来た騎士達に、違いないのである。


 たぶん、この二人なら、今している訓練とて、全く息も上げずに、終わらせることができるはずだろう。


 アトレシア大王国の騎士団副団長と、付き添いの騎士。


 どうやら、隣国では、優秀な騎士を輩出するらしい。



読んでいただきありがとうございました。

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