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Д.в 報告会? - 03

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* * *



 会議室、という場所に案内されて、その部屋に足を踏み入れて、まず一番初めに――驚いたことは、その広い室内一面、紙で覆いつくされていたのだ。


 紙が壁に貼られているのではない。

 それでも、パっと、視界に飛び込んできたのは、見渡す限り、紙や書類の数々だった。


「どうぞ、お好きな場所でお掛けして、お待ちください」


 執事にそう促されても、目の前に広がる種々多様な紙や書類の数に圧倒され、ギルバートもクリストフも、グルグルと、立ち止まったまま、室内を見渡してしまった。


「これは、一体……!?」

「すごい、量の、書類……ですか?」


 見渡す限り、紙、紙、紙、が広い会議室を埋め尽くしていた。


 四方の壁側には、壁に貼り付けられたのか、ピンのようなもので留められた書類やら、地図やら、他にも全く理解できないような書類が、どこそこに、隙間もなく埋められている。


 簡易梯子(はしご)のような台があるから、きっとそれに上って、上の方の壁にも、紙を張り付けているのだろう。


 中に進んで行くと、目の前には、三脚やイーゼルに置かれた大きな板のボードにも、たくさんの紙が貼りつけられている。それが一つや二つどころではなく、見渡す限り、会議室のあちこちに置かれているのだ。


 それとは別に、ギルバートの背丈は軽くありそうな高い板のボードまでもあって、そこにも、種々多様なサイズの紙が貼られていた。


「――これ、何ですかね?!」

「いや――よく、判らないが……」


 チラッと、中に書かれている内容を読んでみたが、それが何を意味しているのか、示唆しているのかは、ギルバートにもさっぱりだ。


 室内の隅には、ソファーが置かれていたり、背もたれのない一人用のカウチが並べられていたり、小さなテーブルの周りに丸椅子が置かれたりと、統一された会議室ではないのは確かだった。


 そして、中央には、大きな円卓の周りに、椅子が並んでいる。


 ドアが開き、ギルバートとクリストフが、扉側に視線を向けた。


 会議室に見慣れぬ男性が二人いて、ドアの前に立っていた男性数人と女性が、一瞬、驚いたように瞳を大きくした。


「え……っと――あの、失礼、いたします……」


 一気に緊張した様子で、全員が頭を下げていく。


「どうか、我々のことは、気にしないでください」


 今は、まだアトレシア大王国の騎士団の制服を着ている二人は、すぐに、他国から邸にやってきた誰かだろうと、判断されるはずだ。


 おまけに、騎士団など、大抵、どの国でも、貴族並みの扱いである。なにしろ、貴族の子息達が、大抵、騎士になっていることが多いのだから。


 ギルバートに言われ、どうしようか迷っている全員が、おずおずと顔をあげていく。


「我々のことは、気にしないください」


 部屋の中央で立っていたら、いかにも、ギルバート達が邪魔をしているようなので、視線だけでクリストフに合図を送る。


 微かにだけ、クリストフも頷いた。


「我々のことは、気にしないでください」


 クリストフを連れ、ギルバートは隅に置かれているソファーに進んで行った。そこで待っていれば、会議室に入ってくる領民も、ギルバート達に遠慮ばかりはしなくて済むだろう。


 ギルバートがソファーに腰を下ろしたのを確認して、全員が、ゆっくりと円卓の方に進んで行く。


「皆さん、気にしないでください。今夜は、視察の為に、ゲストがいるだけですよ」


 後ろからセシルがやってきて、その場の全員が、ほっと、安堵している様子が伺える。――実は、気まずい間が終わって、ギルバート達も安堵していたのだった。


 セシルの後にも、まだ何人かが連なっているようで、全員が円卓の席に向かった。


「今夜は、隣国アトレシア大王国から視察の為、領地にやって来ているゲストがいますが、報告会はいつも通りですので、あまり緊張しすぎないように」


 集まった領民は十数人ほどいて、男性と女性の両方が混じっている。


「さて、今夜のチェア(議長役) は、誰にしてもらいましょうか?」


 セシルの前に置いてある丸い筒のようなものを、セシルはカラカラと振った。それで、ひっくり返すと、中から小さな丸いものがでてきたが、ギルバート達には、よく見えない。


「私じゃないですね」


 その筒が、隣に座っている男性に渡される。男性も同じようなことをしていき、それが、グルリと、円卓にいる全員に回された。


「では……、今夜は僕が……」


 それほど年もいっていなさそうな青年の手には、端っこに色のついた棒が握られていた。


「じゃあ、ボード出すの、手伝うよ」

「ありがとう」


 二人の男性が立ち上がり、壁際に寄せられていた大きなボードのようなものを、引っ張り出してきた。


 ボードには車輪がついていて、カーペットの上を、大きなボードがゴロゴロと進んでくる。


 ソファー側から、その光景を見ているギルバート達の視界の前には、大きなボードにたくさん貼られた()の山。


 縦側に線のようなものが入っていて、一つ一つの区枠の上には、



TODOすること

「DOING(進行中)」

「DONE(完了)」

「PARKED(一時停止)」

「ISSUES(問題点)」



などと、くっきりとマークされている。


「では、今日の報告会を始めます」


 先程の青年がボードの横に立つようにして、円卓に座っている全員を見渡していく。


「じゃあ、一番端から始めますね。ウェイさん、どうぞ」

「うちは……、今日は、豊穣祭の準備で忙しく、ほとんどアップデートがありません」


「そうですか。確か――冬籠(ふゆごも)り用の食糧庫の確認は、出ていたと思いましたが?」

「ああ、それは、明日する予定です」


「わかりました」


 小さな紙の上に、青年が日付けを書き込んでいるようだった。


「明日は、食糧庫の確認だけで、後は、豊穣祭の準備になってしまうと思います」

「わかりました。なにか問題は?」

「ありません」


 それで、その男性の報告は、終わってしまっていた。


 次に、隣に座っている男性に移っていく。


 それもアッと言う間に終わってしまった。女性も終わり、グルリと、円卓の全員が終えてしまっていた。


 今夜の定例の報告会は、二十分足らずで、簡単に、簡潔に、無駄もなく終わってしまった。


 だが、その報告会の方法だって、ギルバート達は見たこともない知らない方法だ。


「じゃあ、残りは、豊穣祭の準備の報告を済ませてしまいましょう」

「はい」


 セシルは簡単に椅子から立ち上がり、たくさんのボードが並んでいる方に進んで行く。


「あっ、お手伝いします」


 三人の男性も立ち上がり、セシルが――引っ張り出そうとしている、かなり大きなボードを、両端から手伝うようにした。


 ゴロゴロと、このボードにも足には車輪がついているようで、カーペットの上を、全員がボードと足を支えながら、進んでくる。


 だが、その大きなボードを、ソファーから観察しているギルバートとクリストフは――またも、呆然としたように口を開けていた。


 ギルバートの背丈は軽くいきそうなボードを、二つも引っ張り出してきて、横幅だって、軽くベッドほどの長い大きなボードには、さっき以上の紙きれなのか、書類なのか、それらがぎっしりと敷き詰められていたのだ。



読んでいただきありがとうございました。

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Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

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