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В.ж すっぱり清算 - 04

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 重厚なドアの真ん中が、グチャリ、と突き出るほどに曲がっていて、すぐに、そのドアをおもいっきり蹴飛ばすような勢いで、ドアが吹っ飛ばされた。


 半分はドアが(くだ)け、半分は無様にぶら下がっているようなドアの間から、誰か――黒い(かたまり)が姿を出した。


 覆面をした新手の男が、サッと、教会内を一気に見渡し、壁側にセシルがいることも確認していた。


「随分、派手にやってんな、あいつら」

「おいおい。またかよ」


 すぐ後ろからやってきた二人も、教会内の――惨状を見て、覆面の奥で、苦笑いを浮かべている。


「相変わらずだな、あのガキ共」


 リアーガ達が入り口にやってきたのを確認し、フィロが叫んでいた。


「全員、一斉攻撃開始っ!」

「「了解っ」」


 子供達が全員、今、相手にしていた敵を無視して、祭壇に向かって駆けだした。


「もう、護衛は必要ありませんよ」


 なにしろ、心強い援軍がやって来たのだから。


「クリストフ」

「わかりました」


 クリストフもその場を捨て、子供達が放棄した男達に向かい、駆け出した。


 入り口から突入してきた新手の男達は、どうやら、屋敷の外で待機させていた騎士達も、一緒に連れてきたようである。


 どうやって騎士達を説き伏せたのかは知らないが、バラバラ、バラバラと、吹っ飛ばされたドアから、騎士達が乗り込んでくる。


 これで、完全に形勢逆転だ。


「くそっ……! くそっ……っ! こっちに近寄らせるなっ」


 自分の護衛に囲まれて、後ろでせせら笑っていたフリイス公爵が、予想外の形勢逆転劇に、慌てふためいて、(わめ)き散らし出す。


「さっさと殺せっ。なにをしているっ!」


 大声で(わめ)き散らされ、命令されて、屋敷の護衛達が、子供達の前に立ちはだかって剣を抜く。


 だが、ジャン、ケルト、ハンスは勢いを止めず、まず、狙い定めた真ん中の護衛に、全員で斬りかかって行った。


「なにをっ――!」


 剣での戦いになると、大抵、正攻法に陥る状況が多い。

 二人、剣で向き合ってしまうと、周囲で茶々入れできないと考えているのか、隙ができるまで、周囲にいる者は、剣を構えたまま、待ってしまう護衛達がたくさんいるのだ。


 だが、ジャン達は、昔から、チームで行動してきた子供達だ。

 卑怯だろうとなんだろうと、大人相手に戦って、生き延びる術を身に着けて、生き延びて来ただけに、全員攻撃は、子供達の十八番(おはこ)だ。


 朝飯前のお手のもの。


 それで、ジャンが最初に斬りかかり、ジャンの剣先を受け止めた護衛の横から、ケルトとハンスが同時に攻撃に参戦する。――というより、ケルトが、剣で思いっきり突き刺した、と言っても過言ではないだろう。


 ハンスの方は、グルグルと早い回転させたファイアーボールの鉄球を、思いっきり、男の頭に振り落とす。


 グシャリッ、直撃して、それで、男は完全に気絶していた。


 シュッ――

 ブシュッ――


 後衛からは、ジャン達に斬りかかろうとした護衛に、トムソーヤがナイフを投げつけていた。

 威力がなくとも、その後すぐに、フィロがボーガンの矢を放つ。


 まだ動きがあった護衛の頭には、ナイフが突き刺さり、意識を保っていたはずの胸には、ボーガンの矢が。

 それで、ドサリッと、護衛の一人は完全に落ちていた。


「ひいぃっ……!! ――なにをしているっ。殺せっ、殺せっ――!」


 バタバタと、次から次に、フリイス侯爵の目の前に陣取らせていた護衛が倒れていき、フリイス公爵が護衛を放ったらかしで、祭壇の後ろに逃げ込んでいった。


「さっきも言ったけど、ここの出入り口は、全部、塞いでんだよ」

「そうそう。入り口は、後ろのあのドア一つ」


「ふざけるなっ! きさまら、タダで済むと思うなよっ」

「だったら、なんだって言うんだ」


 シュッ――

 ブシュッ――


 かなり距離があるはずなのに、子供達が迫ってきている後ろから、ナイフと矢がフリイス公爵に向かって飛んでくる。


「うああぁっ……!」


 ナイフと矢の両方が肩に刺さり、フリイス公爵が大声で叫んでいた。

 あまりの痛さにしゃがみこんで、フリイス公爵が肩を押さえつけながら、前のめりになった。


 ジャンが一気に祭壇まで駆け上がり、思いっきり足でフリイス公爵を蹴り上げる。


 ガガツッ――


 これは、一発、フリイス公爵の顎に入った。


 ふっ、とジャンが軽蔑したような冷笑を投げ捨てる。だが、その口元は、随分、満足そうな、薄い笑みが上がっていた。


 ジャンの皮ブーツは、ただの靴じゃないのだ。

 改造して、靴底とつま先には、(なまり)(おもり)を入れ込んである武器だ。


 普段からも、その重さに耐えられるように、動き回れるように、ジャンは、もう、ずっと昔から、この余分な重さを足したまま、訓練し続けてきたのだ。


 そんな重さのあるブーツで思いっきり蹴り上げられたのなら、顎の一つや二つ、粉砕していてもおかしくはない。


 現に、床に吹っ飛ばされたフリイス公爵の口が、変な方向に曲がり、口を閉じられない場所から、血と(よだれ)が零れ落ちていた。


 床にくたばっているフリイス公爵の周りには、覆面をした五人の子供が、冷酷にフリイス公爵を見下ろしている。


「お前、マスターを監禁するなんて、死罪確実だな」

「絶対許さねー」


 うがっ、うがっ……と、壊れた顎では喋ることもままならいフリイス公爵の目には、恐怖が浮かび上がり、ずるずると、身体を引きずっていく。


 ハンスとケトルの手には、ボーガンが。


 シュッ――

 ブシュッ――


 今度は、ボーガンの矢が、フリイス公爵の両脚に突き刺さっていた。


 その様子を遠巻きに見ていたギルバートが動き出しかけ、その腕に、セシルの手が乗せられた。


「殺しはしませんよ」


 セシルを振り返ったギルバートは、無言でセシルに問いかける。


「殺しはしません。大事な証人ですからねえ、大罪人としての」


 セシルの手がギルバートを押さえ、動きかけているギルバートを止めているので、ギルバートも、仕方なさそうに溜息(ためいき)をついていた。


「わかりました」


 リアーガ達が参戦したことにより、残りの郎党も全滅だ。

 騎士団が混ざって、フリイス公爵の護衛達も全滅だ。


 これで、幕は下りた。


「一件落着、のようですね」

「そう、ですね……」


 信じられない話だ!


 一件落着――したのは、隣国の伯爵()()がいたからで、令嬢に従う()()()がハチャメチャにしてしまったからだ、など……。


 あまりに前代未聞の状態に、結末に、ギルバートもすでに言葉が出てこない。


「期限の二週間前に事件が片付いたようで、安堵なさっているでしょう?」


 その皮肉にも、もう……、反応も反論もありません。




読んでいただきありがとうございました。

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