表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/547

В.д 手加減無用 - 05

ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。

* * *



 なぜかは知らないが、先程からずっと、それも、一時間近く、セシルは、店内にいる十人程の傭兵達、プラス、自分の付き人達、プラス、ギルバート&クリストフの為に、トースティを作っている状態だ。


 最初は、セシル達のご飯にしようと思っていたのに、セシルが台所を借りて、大きなフライパンでトースティ―を作り出すと、店のマスターとコックらしき男性が興味を示し、セシルに作り方を乞いてきた。


 ええ、これ、王宮の厨房でもしましたよ。


 シェフが目を輝かせて調理法を聞いてきたので、厨房の片隅を借りてしまった手前、仕方なく、セシルもトースティ―の作り方を教えてあげたのです。


 子供達も張り切っているだけに、大きなパンを買い集めるだけではなく、籠一杯の卵も買い込んできたようで、今回は、チーズだけのトースティではなく、卵も入れた、ちょっとだけ贅沢志向のトースティと、半々だ。


 (とろ)けたチーズの匂いが店内にも行き渡り、鼻を刺激し、食欲を刺激する。


 それで、興味を惹かれた傭兵達が、金を出すから同じの作ってくれ、と頼んできて、なぜかは知らないが、セシルは全員分の食事を作る羽目になってしまったのだ。


 トースティは、この世界にはない。すごく簡単に作れて、とろけたチーズとバターが絡んで、香ばしい匂いが食欲をそそり、ホッと体が温まる料理だが、この世界では知られていない。


 すでに、何十個目か分からないトースティを焼き上げて、やっと、セシルの食事にありついていた。


 ギルバートとクリストフは、最初、遠慮していたが、全員分を出してヤケクソのセシルに勧められて――結局、ちゃんと全部平らげている。


 実は――二人にとって、初めて食べる“トースティ”なるものは、バターは入っていないが、とろけたチーズに半熟の卵が絡まって、随分おいしいものだったのだ。


 貴族のご令嬢が料理をするのか……?!


 などという疑問は、この際、置いておいて、二人も(密かに) トースティを満喫してしまっていたのだった。


「また、ハコン、ですか?」

「同一人物ですね」

「そのようですね。どうやら、そのハコンという男が、雇い主の連絡係をしているようですから」


 遅くなった昼食を食べ終えた全員は、店の片隅にテーブルと椅子を寄せて、陣取っている。


 新たに入手した情報を元に、作戦会議だ。


 捕縛した郎党達は、裏口からあまり目立たないように、指示された騎士団に連行され、店から消え去っている。


「当初の計画で言えば、今頃、私を捕縛して、いい気になっていたことでしょう」


 だが、セシルの先制攻撃で、計画が滅茶苦茶に台無しにされてしまっただけではなく、連れて来た郎党が全滅させられて、逆に捕縛されてしまった。


「今夜の集合場所で、私を手渡す手筈だったのですから、その機会を、そのまま利用させてもらいましょう」

「囮、ですか? それは危険です」


「いえ、もう、囮になる必要はなくなりました。別に、私が顔を出さなくても、私を提供するように見せかければ、いいだけですので」


 それで、セシルの眼差しが、後ろの椅子に座っている二人に向けられた。


「いいぜ。別料金なら」

「いいでしょう」

「怪しまれないでしょうか?」


 この傭兵二人を使い、集合場所で、セシルを手渡す振りをするのはいい案だ。だが、雇った郎党の顔が違い、怪しまれる可能性もある。


「顔が変わろうが、下っ端の下っ端まで覚えているような奴は、いないだろ。言い訳はなんとでもなる」


 ケティルの付け足しに、セシルも簡単に同意する。


「そうですね。その点は、あまり心配していません。それから、もうすぐ、もう一人がここに戻ってきます。その一人が混ざったら、行動開始しましょう。移動には、馬が必要になるのですが?」


「わかりました。用意させましょう」


「もしかしたら、私の身柄と交換に、口封じに投じてくるかもしれませんね。こちらも予防策として、かなりの数を投入すべきでしょう。ですが、全員での移動は、目立ち過ぎます」


「わかりました。全員、私服に着替えさせ、今から集合場所に数を散らして、飛ばしましょう。それと並行して、先行隊を派遣し、周辺の確認も済ませておくように、指示を出しておきます」


「お願いします」


 それで、セシルが、自分の護衛と子供達を見やる。


「抵抗する者は、手加減無用で気絶させなさい。逃げ出す者も、同じです。誰一人、取り逃がさないように」

「わかりました」


「待てよ」


 ケティルが、そこで割って入って来た。


「このボウズは使える」


 それで、一番小さな子供が覆面の下でも、かなりの膨れっ面をする。


「俺が小さいから?」

「そうだ」


 簡単に同意され、益々、嫌そうに子供が顔をしかめていく。


「ですが、逆に言えば、一番危険な任務で、そして、たぶん、集合場所での親玉を捕獲する、一番のチャンスとも言えますね。どうしますか、κ(カッパ)?」


 セシルの指摘に、子供の方も少し考えてみる。


「わかりました」

「ですが、無茶をしてはいけませんよ」

「わかっています」


「では、κ(カッパ)にお願いしましょう。その補佐は、η(イータ)ι(イオタ)に」

「わかりました」


 そこで、今夜の作戦は決まったようである。


「では、準備をお願いします」

「わかりました」


 ギルバートがただクリストフに視線を送ると、クリストフが無言で頷き、サッとその場から立ち去っていた。


 クリストフがいなくなり、ケティルが、ただ、ジーっと、セシルを凝視している。


「あんた、何モンだ?」

「それは、ここで話し合うような話題でもありません」


 あっさりと返され、相手にもされていないようだが、ケティルが、まだ慎重にセシルを凝視している。


「騎士団を足でコキ使う女なんて、聞いたことがないぜ」


 ギルバートは、ただ、無言の視線をケティルに向けるだけだ。


「別に、大騒ぎしよう、って言ってんじゃないぜ。ただな、偉そうな騎士サマを足でコキ使うような女なんて、見たこともないぜ」

「今だけですよ」



読んでいただきありがとうございました。

一番下に、『小説家になろう勝手にランキング』のランキングタグをいれてみました。クリックしていただけたら、嬉しいです。


Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Funtoki-ATOps-Title-Illustration
ランキングタグ、クリックしていただけたら嬉しいです (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
小説家になろう 勝手にランキング

その他にも、まだまだ楽しめる小説もりだくさん。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ