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В.д 手加減無用 - 03

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「……っうぅ……くそっ……!」


 痛さで顔をしかめながら、一番上に伸し掛かっている男が、起き上がりだした――


「……ぅく……っ……お、い……!」


 だが、一番上の男が起き上がった反動で、すぐ下の男の首輪が閉められ、二番目の男が一番上の男の身体を引っ張り返す。


 その動きで、三番目の男の首が絞められ、同じ動作をしてしまった三番目、四番目と、連鎖反応で、全員が首を絞めつけられてしまったのだ。


 うぐぅ……!

 あっ……くぅ……!


 男達の苦し気な呻き声だけが、響き渡る。


「――お前ら、えげつねーな……」


 反対の壁側で傍観している男達も、少々、顔を強張らせている。


 自分が引っ張っていた縄の端っこを、階段の木枠にグルグルと巻き付け終わった子供が、しっかりと結び目をくくりつける。


「動かなかったら死なないんだから、平気だろ」


 そして、ダマになった六人の男達は、無様な格好と体勢で、ひっくり返ったまま、階段の下でもがき苦しんでいる。


 ここで、忘れられている重要な点は、六番目で一番下に下敷きになっている男は、五人分のいかつい男達の体重を一気に受け、首を絞められるよりも、その重みで――すでに窒息死しているなど、やはり、その点は深く指摘しないでおくべきでしょう……。


 一気に店内が静まり返り、数十秒もしないで、敵は全滅状態。


 だが、外には、店内の気配を伺っていた敵が、まだ残っていた。


 店内がシーンと静まり返っていて、その後から、喧騒が上がってくるのでもない不穏な様子に――店のドアが、ゆっくりと開いていく。


 それで、また他の男達が、ゆっくりと、慎重に、店の中に入って来た。


 四人。風体の悪そうなヤサグレ。


 これ、敵、確定ね。


「あんたら、誰か追ってるの?」


 四人の男達の真正面に、一番小さな子供が立ちはだかった。


「さあな」

「10数えるうちに、退散する?」


「するかよっ。ふざけんな、ガキが!」

「あっそ」


 それを言い捨てると共に、ザッ――と、マントの下から、ボーガンが男達に向けられた。


「なっ――!!」

「はい、一丁上がり!」


 壁側に移動していたもう一人が、手に持っていたナイフで、壁に巻き付けてある縄を斬り落としていた。

 縄が一気に緩んで、天井に吊らしてあったシーツの中には、(おもり)を詰め込んだ木箱が。


 グシャンッ――!

 ガラガラっ、ガシャ――!

 バラバラっ――!


 ものすごい轟音が響き渡り、男達目掛けて落ちて来た木箱が、直撃する。

 全員が木箱の下敷きになり、木箱自体も地面に叩きつけらえて、バラバラと破壊して、木辺が飛び散っていった。


 悲鳴を上げる暇さえなく、男達が無残に木箱の下敷きになった。


 自分のお店でもないのに、子供達が勝手に改造してしまって、店のマスターだって――実は、ゲンナリ……。


 最初、「少しだけ、対侵入者避けの仕掛けをしていいか?」 などと、お願いされた時は、店のマスターだって、速攻でその要望を断っていた。


 だが、その分の支払いはするから、とその分の金額を出されては――まあ、嫌とは言えない。それで、仕方なく、店を壊さない程度ならいい、と承諾したマスターだ。


 それで、イソイソと、嬉しそうに、子供達が天井に(おもり)を仕掛けたり、ドア側に飛び矢を仕掛けたりと――忙しく動き回っているその光景を見ていた客達や、その店でたむろっている傭兵達だ。


 それで、「このガキ共、只者じゃないな」 と、暗黙の了解が上がっていたのだ。


 期待を外さず、期待通り、このガキ共は大暴れしてくれたものだ。


「あの――さすがに……、手加減無用――など、少々、問題になるのではありませんか?」


 唖然としているギルバートが、つい、そんなことを聞き返してしまっていた。


「そう、かもしれませんわね……。つい、行き過ぎてしまうんですのよね」


 階下の惨状を見ながら、うーん……と、セシルもちょっと考えてしまう。


「行き過ぎ――って……、そういう問題ではないのでは……?」

「張り切っていますから」


 いやいやいやいやいや。


 そこで、困ったわぁ……などと、傍観している場合じゃないでしょう?


 一切、止めに入らないセシルに、ギルバートとクリストフも更に唖然としてしまう。


「なんなんですか、あなたは……?!」


 つい、ギルバートの口から、洩れてしまっていた呟きだ。


「ただの伯爵令嬢です」


 そんなわけないでしょう……!


 そうしている間にも、階下では、壁側に寄っていた客達が、「いいぞっ、ガキ共!」 などと、やんや、やんやと、喝采を上げている。


 最早(もはや)、店の中では、子供達が大暴れしている状況が見世物と化して、誰一人、止める者もいない。


 酒の(さかな)になって、そこで飲み食いしていた客達が、賑わっている。


「契約通り、破損した器物などは、全額、弁償してくださいね」


 そして、抜け抜けとそんなことを言ってくるセシルに、ギルバートとクリストフの顔が、かなり引き攣ってしまっていた。





 階段の真下では、捕縛された男達がダマになっているので、そこを通過することはできない。


 それで、ある程度の階段の下まで降りて来たギルバートは、仕方なく、手すりを(また)ぎ、そこから飛び降りていた。クリストフも同様に。


 セシルも手すりを(また)いでくるので、ギルバートがセシルの前に両腕を出していた。


 手すりに掴まって、階段の端に立ったセシルが、その出された腕を見下ろす。


 まあ、親切に、女性を気遣ってくれているので、セシルもギルバートの腕の方に手を置き、体重を乗せるようにした。


「非礼を失礼いたします」

「――!」


 ふわっと、ギルバートの腕がいきなりセシルの腰を掴み、そのまま持ち上げる形で、セシルを床に下ろしていたのだ。


「非礼をお詫びいたします」

「いえ――」


 まあ、セシルは無事に床に降りられたので、文句を言う場面でもない。


 だが、今の一瞬、ギルバートは、抱き上げたセシルの長い前髪の下で、本当に一瞬だけ覗かせた、その深い藍の瞳を目撃していた。


 薄暗い室内でもはっきりと色を分けるほどの、深い藍の瞳だった。

 大きな、藍の瞳だった。


 長い前髪が邪魔で、今まで一度として、セシルの顔を確認できなかった中で、ほんの一瞬だけ垣間見たセシルの顔立ちは――たぶん綺麗な部類に入るのだろう。


 顎の線や、そういった顔のパーツが整っている感じで、もしかしたら、野暮ったい外見に反して、整った容姿なのかもしれない、と疑い始めていたギルバートの憶測は、あながち間違ってはいなかったらしい。


 子供達は、せっせと敵の郎党から、武器をかき集めている。


 ドサッ、ガタッ――


 手に抱え込んだ武器を持って、子供達がカウンターの上に武器を投げた。


「これ、換金したら、少しは金になるかも」


 所有者から勝手に奪って、承諾も得ていない武器を持ってきた子供達も、随分、図太い神経をしている。


 カウンターの奥で、マスターが、ちらりと、カウンターのテーブルの上に乗っている武器に視線を向けた。


「まあ、いいだろう」

「それなら、俺にも見せてくれよ」


 壁側で余興を楽しんでいた男達が数人立ち上がって、気軽にカウンターに寄って来た。

 勝手に武器を取り上げ、勝手に見分している。


「大した価値はありそうもないけどなあ――」


 などと、それでも、勝手に見分するのは止めないらしい。

 タダで手に入る武器なら貰っておこう、ってなもんだ。


 武器の没収が終わったので、三人の子供達は指示もないのに、木箱や(おもり)の下で下敷きになった男達の回収に、バラバラになった木箱を片している。


 姿が見えて来た男達は、全員、気絶していた。


 男達一人一人を放り投げて、後ろ手で縛り上げていく。



読んでいただきありがとうございました。

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