表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/547

В.г いいでしょう - 05

ブックマーク・評価★・感想・レビューなどなど応援いただければ励みになります! どうぞよろしくお願いいたします。

「……ぅがぁ……っ……!!」


 男の太腿(ふともも)からは出血が止まず、ジンジンと、足がもげそうな激痛が襲い、壁に激突された痛みで、目の前で火花が飛び散った。


「そのまま、その男を壁に押さえつけておいてください。あまり大きな悲鳴を上げられたら、他の者が驚いて、様子を見に来るかもしれませんので」

「――え?」


 ギルバートの顔が、あまりに信じられないことを聞いたと、セシルを振り返っていた。


「しっかりと、壁側に押さえつけておいてくださいね」


 そして、全く落ち着いた態度も変わらず、セシルがギルバートの隣に寄ってきて、マントの下から、その足が前に出て来た。


「では、失礼」

「――――っ……ぐぁ……がわ……ぁっ……!!」


 あまりの激痛に襲われ、男が反射的に体を反らし、ギルバートの腕から逃れようともがきだす。


 仕方なく、ギルバートが両腕で男の顔を壁に押し付けていた。そして、片足は、少し開いた男の股の下を押さえつけるように。


 このセシルは――全く躊躇(ちゅうちょ)もなく、手加減もなく、怪我をしている男の太腿(ふともも)を、後ろから踏みつけていたのだ。


「大抵は、ここまでひどい尋問(拷問) はしないのですが、今回は、時間が限られていますので、さっさと済ませてしまいましょう」


 そんな冷静に、おまけに、「さあ、後片付けをしましょう」 なんていう軽い雰囲気で、セシルの尋問は容赦がない。


 この令嬢……一体、なんなんだ!?


 もう、さっきからずっと、この疑問ばかりが頭に上がってくる。


 壁に押し付けられ、顔の形も残っていないほど潰されている男が、もがきながら叫び返している。

 モゴモゴ、グワガワ……と、全く聞き取れない発音が羅列される。


 ギルバートが、少しだけ男の顔を壁から離していた。


「裏にいるのは誰だ?」

「…………っ……くそ……っ……きさ、ま……」

「足りないようですね。では、もう一度」


 そして、容赦なく、セシルのブーツを履いた足が、男の傷口目掛けて、踏みつける。


「……っ……ひ、ぎゃぁ……あぁぁっ……!」

「裏にいるのは誰だ?」


 そして、リズムを崩しもしないギルバートの尋問が、また割り込んでくる。


 あまりの激痛に、男の頭の中が滅茶苦茶になり出していた。


「では、傷口に塩を塗り込みましょう。たくさん塩があるので、たっぷり塗り込んであげますよ」


 本気で、塩なんてものを持ち歩いているのですか?


 少しだけ、隣にいるセシルに向いたギルバートの顔が、かなり疑わし気だ。


 そのギルバートを無視して、セシルの片手がマントの中から出て来て、男の(もも)に何かをこすりつけていく。


「……っい……あぁっ……!……や、め……ぅがあっ……!!」

「さて、時間の無駄です。どうしますか?」


 肩で激しい呼吸を繰り返す男が、涙目になって、懇願する。


「……やめ……やめ、てくれっ!……ハコン、だっ……!……ハコン、って男……雇ってきた……」

「聞いたことがないな」

「……どっか、の……っひぃ……お偉いさん、仕えてる……って話、だ……。も……やめ……!」


 聞き慣れない名前しか出て来ず、大した情報でもないのは、残念なことだ。


 もう、用無しの男なので、ギルバートは渾身の力を込めて、男の頭を壁に向かって叩きつけた。

 頭蓋骨が割れそうな嫌な音が響き、頭突きされた男は、速攻で気絶していた。


 下衆をわざわざと支えてやる気もないギルバートは、簡単に、男の頭から手を離していた。


 ドサッ――!


 あまりに無造作に、力なく、男が地面に落ちてしまった。


 この王子サマも、なかなかのものですのねえ。


 表情一つ変えず、かなり乱暴な尋問(拷問もどき) をしていながら、全くの同情も見せないなんて。


「やはり、分かれた組と合流すべきでしょう」

「この下衆共は、どうなさるのです?」

「そうですね――」


 ふむと、少し考えたギルバートは、まず、周囲で待機している騎士達に、指示を出さなければならない。


 ちらっと、地面を見下ろす限りでも、この下衆共は気絶しているのがほとんどで、今更、目を覚ます気配はない。

 さっきの少年に瞬殺された輩は、まず、死体の回収も、必要になってくる。


 ここで、王都の警備員や護衛にあたっている騎士隊に、色々、詮索されるのは困るのだ。


「すみませんが、こちらへ」


 そっとだけ、セシルの肩を押すようにして、ギルバートはセシルを連れて、その場を離れていく。


 通りに戻る手前、先程の子供が、ただ静かに、ギルバート達の様子を見ている。


「ここで待っていてください。あの輩が目を覚ますことはないと思いますが、その場合は、すぐに私を呼んでください」


 なんだか、ものすごい真剣な様子で、セシルが返事をしなければ、ギルバートは、絶対にこの場から動きはしないであろう迫力もすごくて、セシルは仕方なく返事をした。


「わかりました」


 それで、一応、納得したのか、ギルバートが通りに出て行った。――だが、セシル達から完全に離れたわけでもなく、ただ、セシル達が自分の視界内に留まる範囲で、通りの向こう側に進んだだけだったのだ。


 すぐに、一人の男が近寄ってきて、ギルバートの顔に少し顔を寄せるようにして、二人が密談を交わす。


 男はすぐにギルバートの元を離れ、ギルバートと言えば、またセシルの方に戻って来た。


「ここの後始末と片付けは、騎士達に任せました。我々は移動しましょう。下手に騒ぎが見つかると、色々と詮索されかねませんので」


「そうですわね。これから移動すると言っても、次に襲われる可能性を考慮しまして、ある程度動ける場所で、密談もできる場所など、ありませんか?」


 それは、かなり難しい注文だった。


 うーんと、ギルバートもそんな場所があるか、真剣になって考えてみる。


「宿屋――は無理があるでしょう。敷地の周辺を囲まれてしまっては、逃走経路を確保するのは、難しいでしょうから」

「そうですわね」


 おまけに、宿屋内で紛争にでもなったら、他の宿泊客にも危険が及んでしまう。


「――ここから少し進んだ場所に市場があります。その後ろには、広場――というか、草わらで、少し、広く空いた場所はあるのですが」

「わかりました。では、そこに向かいましょう」


「よろしいのですか?」

「いいですわよ」


 草わらなど、きちんと座れる場所もなければ、貴族のご令嬢がいくような、整った場所でもない。


 ギルバートも疑わしそうな目を向けているが、仕方なさそうに、セシルに同意した。


「わかりました。私があなたの右手に付きますので、その少年はあなたの左手に」

「わかりました。――そうしてね?」


「はい」

「では、非礼を失礼いたします」


 突然、ギルバートはセシルの肩を抱いてきたのだ。

 隣を歩くだけではなく、セシルはギルバートに肩を抱かれて、歩かされるようだ。


 まあ、騎士だから、後ろから襲い掛かって来る敵を警戒して、セシルを後ろ側からでも、庇う為なのだろう。


「では、こちらに」


 しっかりとセシルの肩を抱いたギルバートが動き出し、その動きに沿って、セシル達も歩き出した。


 肩を組んでいるからと言って、ギルバートの身体は、セシルには密着していない。


 むしろ、肩を抱いてはいるが、ギルバートの身体が、半分はセシルの後ろ側に立っている状態で、自分のぶら下げている剣をいつでも抜けるように、セシルとギルバートの身体には、少しだけの隙間ができている。


 この王子サマ、随分、実践型の戦闘タイプで、かなりの場数を踏んでいると考えても、おかしくはないだろう。


 大国の第三王子殿下なのに。


 この国の王子殿下というのは、ここまで武力に通じている立場なのだろうか。


 そんなことが、セシルの頭にも浮かんでいたことだった。





読んでいただきありがとうございました。

一番下に、『小説家になろう勝手にランキング』のランキングタグをいれてみました。クリックしていただけたら、嬉しいです。


Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Funtoki-ATOps-Title-Illustration
ランキングタグ、クリックしていただけたら嬉しいです (♥︎︎ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
小説家になろう 勝手にランキング

その他にも、まだまだ楽しめる小説もりだくさん。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ