9.灯台下暗し
新章開幕
「よいしょっと…」
学校へ行くための支度を終えて洗濯物を干している。
今日は台風が過ぎた後のような晴天でよく洗濯物が乾きそうだ。
目潰しされていて七宮さんがあれからどうしたのかをすぐに見ることができなかったが、Yシャツはちゃんと畳んで脱衣所に置いといてくれていた。
ああ良かった、今回は何も盗まれて……
「……パンツが1枚足りない」
昨日履いていたパンツがない。
芽衣がいる状況でもパンツだけは持って帰っている。
どうやら懲りていないようだ。
◇
俺は部屋を出て鍵を閉める。
何回もドアノブをガチャガチャとさせて閉まっていることを確認する。
まあ閉まってても入られるけど……。
階段を降りて道にでる。
「いぎっ!?」
後頭部に衝撃がはしる。
後ろに振り向くとやはり芽衣が立っていた。
約5時間前にあんなことがあったのに毎朝の習慣の後頭部叩きはやるらしい。
「痛いなー、後頭部ハゲたらどうするんだよ」
「助けてあげたんだからいいでしょ?」
じゃあ今まで1000回以上叩いてきたこともチャラにしろということですか?
でも確かに夜中のときは助かったから言い返せない…。
「あのとき芽衣が来てくれていなかったら……それにしても芽衣の登場はナイスタイミングだよな」
「そ、そうかなー偶然じゃない?」
本当に偶然なのだろうか?
小学生のときは隣の家同士で早く家を出た方が遅いほうの家の前で待っているというのが習慣だった。
しかし中学生に入った途中から俺が家を出るのと同じタイミングで芽衣も家から出てきて一緒に登校するようになっていた。
今まで考え込むことが嫌いであまり気にしてなかったが新ためて考えてみるとすごい確率なのではないだろうか?
「もしかして俺たち赤い糸で繋がってたりしてな!」
と俺は冗談を言ってみた。
いつも通り「うっさいバーカ」と言ってラケットで叩いてくるだろう。
そう思って目を瞑り身構えていたが中々叩かれない。
俺は異変を感じて目を開くと芽衣は湯気がのぼるのではないかというほど顔を真っ赤にしていた。
「ど、どうしたんだよ芽衣らしくない」
いつもと違う芽衣の様子に困惑する。
「いや…その…わたしのこともちゃんと見てくれてたんだなと思って…」
「いや何言ってんだよ、いつも(毎朝)俺は見ているよ」
するとさらに顔を赤くさせてうつむいてしまった。
「わ、わたしもだよ」
ボソッとそうつぶやいた。
何当たり前のことを言っているのだろうか?
だがそれでも普段とは違う乙女チックな様子に違和感を覚えながらも一緒に学校へ向かった。