1.消えたパンツ
自分がスマホで活動していた時の作品です。
「あれ…おかしいな…」
俺の名前は桜田伊月、2カ月前に高校2年生になったばかりの容姿、頭脳共に平凡な男子高校生だ。
そんな俺だがあることに気づいた。
「パンツがない…」
俺のお気に入りの青のボクサーパンツがない。
昨日たたんでタンスにしまっていたはずだが見当たらない。
一応ベランダや部屋中探したが見つからない。
仕方なく俺は違うパンツを適当にタンスから取り制服に着替えた。
◇
「いってきまーす」
見送ってくれる人はいないのについ癖で言ってしまう。
俺の通う神崎高校は家から通うには遠かったため1人暮らしを始めた。
妹を除いて両親は心良く俺の背中を押してくれた。
「いたっ!?」
突如、後頭部を何か固いものでしばかれた。
とは言っても犯人は分かっている。
「おいラケットで俺の頭を叩くな、俺はボールじゃないぞ?」
幼馴染の柳木芽衣。
明るめな茶髪のポニーテールにくりっとした大きな目、引き締まった身体に胸もそこそこある。
女優と言われても誰も疑わないだろう、そう思えるほどの完璧な容姿を持っている。
「伊月はわたしのボールだから」
「なんだそのジャイアン方式は!」
さっき俺の後頭部をしばいたラケットをブンブンと振り回していてたまらず叫んだ。
去年の芽衣の誕生日にプレゼントしたラケットが俺を苦しめている。
部室に置いていたらいいのにいつも持ち歩いている。
「まあでも県内の期待のエースのボールになれるなんてある意味誇らしいな」
芽衣はテニスで全国的に活躍するであろうと言われている注目の選手だ。
去年は不慮の事故で怪我をしてしまい大会に出ることはできなかったが本人も今年こそはと意気込んでいる。
「ほ、褒めたって何も出ないんだからね!」
頬を少し赤くし、プイッとそっぽを向く。
「なんだそのツンデレみたいなセリフは」
「ツンはあってもデレはない!!」
「うがっ!?」
さっきよりもはるかに強い威力で後頭部をラケットでしばかれた。
◇
学校に到着し、下駄箱で芽衣と別れた。
俺は2-2組で芽衣は2-4組とクラスが違う。
まだ芽衣に叩かれた頭が痛い。
頭をさすりながら俺は教室に入り奥の窓側の列の1番後ろの席につく。
我ながら席替えの引き運の良さに惚れ惚れする。
芽衣はああいう暴力的なところが無ければ普通の可愛い女の子なのに。
「桜田くんおはよう」
「あっおはよう七宮さん」
声の主の方に視線を向け、挨拶を返す。
隣の席の七宮咲さん。
七宮さんは学年…いや学内1番の有名人かもしれない。
黒髪のショートカットに誰もがすれ違うと振り向いてしまうほどの整った容姿。
そして性格も良くみんなに優しく、勉強も常に上位をキープしている。
文化部ではあるものの運動部にも負けない運動神経を持っている。
七宮さんほど完璧な人は見たことがない。
「ん?あーまた柳木さんに叩かれたの?」
俺が頭をさすっていたのを見て察してくれたようだ。
また…というようにほとんど毎日朝からラケットでしばかれている。
「そうなんだよね。あいついつも朝容赦なくラケットでしばいてくるんだよ。家出る時間変えてもなぜか遭遇してしまうし…」
「ふーん…」
さっきまでの笑顔がなくなり少し考えこむように七宮さんの表情が硬くなり真顔になった。
「どうかしたの?」
「いやなんでもないよ。相変わらず仲が良いんだね?」
「えっ良くないよ、たぶん芽衣は俺のことボールとしか思ってないよ」
「きっと柳木さんは桜田くんのことーーー」
チャイムが鳴り七宮さんの言葉が途切れる。
チャイムは朝のHRの合図で担任の先生は厳しい人なので教室は静かになりみんな席に着き始める。
俺と七宮さんも前に向き先生が来るのを待った。
(七宮さん何言おうとしたんだろ…)
最初は気になったものの先生の長話の間に忘れてしまっていた。
次回は8月7日の12時に投稿します!
読んでくださりありがとうございました。