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ロボ戦(ロボット戦士)  作者: 吉田 天候
8/12

第8話「海上戦」

ロボ戦(ロボセンと読んでください)の8話目です。妄想バリバリで小説を書いています。書くことは楽しむもあり、苦しくもあります。

前に書いた7話ですが、後半部分を加筆しました。軍団員ビービーとカムリのお話です。ぜひお読みください。

挿絵付きの小説は、pixiv(https://www.pixiv.net/users/84991722)にて掲載してあります。設定画も載せています。お土産とかはありませんが、ぜひ遊びに来てください。

野営地からしばらく歩いたところにある小さな砂浜。ここを見つけたのはストラトスだ。彼曰く、沈む夕日がとてもきれいなのだと。以降、よろづ歩兵分隊の隠れた憩いの場になった。


今日は心地いい波音に不規則な鈍い音が混ざる。


ガン、ビシャ、ズン、ドッ!

「うぎゃ、うむっ、おっ」

荒い息遣いのアクア。銛による突きがことごとくカロに塞がれる。

アクアの銛はモリボックと言い、彼専用の武器だ。

「まだまだ、もっと踏み込んで!コントロールは悪くない。けど、甘いっ!」

銛を拳で弾かれ懐に入られるアクア。しかしカロの攻撃はない。一歩飛び下がりながら仕切り直す。

正眼の構え。

「ふぅーっ」

深く息を吐く。

「ありゃーっ」

ズバババババ

アクアの連続して繰り出された高速の突きがカロに迫る。残像が4本にも5本にも見える。しかし、カロには見えていた。絶妙な距離で回避する。

「リズムが一定なんだよ!」

カロが胸元に突き出された銛をさっと掴み軽く引っ張ると、バランスを崩したアクアが前へよろけた。

「はい、おしまい」

「はぁ、参りました、カロ先輩。稽古ありがとうございました。勉強になったであります」

「別にいいよ。手首の動きで銛をコントロールするのはいいんだけど、攻撃範囲が一定だから一度距離を測られるともう当たらないよ」

「確かに・・・。全て避けられたり塞がれたりしました」

「もっと肩を使うといいよ」

「肩でありますか?」

「そう、肩をこう、ねじってだね・・・」

カロはアクアに左肩の関節の向きとひねりかたを教えた。

「おやっ、さっきより遠くまで銛が届くであります」

「腕が伸びたんだよ。15㎝は伸びていると思うよ。これで、攻撃距離にパターンができる」

「ありがとうございます。突いた時のバランスも悪くありません」

アクアは今更ながら自分の体を上手く扱えていないことを実感した。

「ところでうちの指導教官殿は普段アクアに何かアドナイスをくれる?」

「あっ、はい。ケイ先輩は困ったことがあったらカロ先輩に聞けと・・・」

「あんにゃろう」

きっと、今日のアクアへの稽古もケイの入れ知恵に違いないと思った。

「ケイに何か奢らせねば!」

「任務中失礼!」

挿絵(By みてみん)

二人の背中に語り掛けるしわがれた男の声。




「おじいさん、どうしたでありますかか?」

怪訝な顔をするアクア。オーナメン島は未だに民間人は入ることができない。ならば、敵の残党か、軍の関係者か?

「わしは、第5次復職兵招集で再任用されたタルボじゃ。明日からの任務に備えて島内を歩いておったのじゃが、道に迷ってしまってのう。本部はどこじゃろか?」

二人の目の前にいるのは、かつて共和国の平和を守った先人。

「よろづ歩兵分隊所属カロであります」

「同じくアクアであります」


「ふむふむ、頼もしい戦士達じゃのう。共和国も安泰じゃ。しかしながら今は天下分け目の時。及ばずながらわしもお国の力になりたいと思い立ち馳せ参じたのじゃ」

タルボが胸を叩く。

「それは心強い限りです。我々は、明日の船で海に出ます。敵に摑まった仲間たちを連れ帰ってきます」

カロは。先輩に無礼のない振る舞いをしようと最敬礼をする。

「うむ、どうやらお前たちの代わりにわしらが警備に就くようじゃ。任せておくがいい」


「ところで、タルボさんは、今までにどんな戦場で戦ってきたのでありますか?」

アクアの興味は目の前の老兵の武勇伝にある。彼の祖父もロボット戦士だったから興味があったのかもしれない。

「わしが戦士として初陣を飾ったのは50年前、17歳の時。若いのは知っておるか分からんが、「ガスケ(とう)の戦い」で帝国軍の「虹の軍団」と対峙した時じゃった。上陸した敵兵の攻撃を必死に防いだんじゃ。あと、東ショベル大陸での「アバット上陸作戦」にも参加したのじゃ」

知らない訳はない。この2つの戦いは共和国の子どもたちはみんな学校で学んで知っている。前者はティーアーズ共和国で大きな損害を被った戦争の1つであり、後者は、共和国の反転攻勢の狼煙を上げる戦いだったからである。

感心するカロとアクア。

目の前にいる老人は若者たちにとって伝説の人でもあった。


「お見受けしたところ、タルボ殿は海の戦士とお見受けしましたが・・・?」

カロは、タルボの姿から海での戦いが得意だと踏んだ。

「できれば、ここにいるアクアに何か助言をお願いいたします」

後輩思いのカロ。ケイとはまるで違う。

「よ、よろしくお願いいたすであります」

アクアの目も輝いている。

「いかにも、わしは海を得意とする戦士じゃ。しかし、助言と言っても参考になるか分からんが・・・」

ゆっくりと昔の記憶を引っ張り出す。

「そうさのう、海が得意と言っても海上、海中、砂丘、岸壁など戦場は様々なじゃ。淡水や河川でも違う。わしは、海中が得意じゃった」

タルボは続ける。

「海中戦闘と言うのは・・・潮の流れを掴んだものが勝つんじゃよ」

「一体、どういう訳ですか?」

アクアは持っている銛を強く握りしめる。

「海の中ではな、海流と言うものがあってな。あぁ、もちろん知っているな。海の中では絶えず海流が流れ入り組んでいる。そして刻一刻と変化する。海流に逆らえば一割の力も出せんじゃろ」

「はい」

「だから、海流の動きを察知し味方に付ければよいのじゃ」

「ど、どうすればいいのでありますか」

「五感で感じるんじゃ」

「五感でありますか?」

「そうだとも。海流にはそれぞれ固有の色、匂い、味、温かさ、感触がある。性格といってもよい。体が浮き上がる海流、沈ませようとする海流・・・。海の生き物たちは知っているのさ。魚の動きも重要じゃぞ。それを感じることができれば怖いものはない」

アクアにとってはこれ以上の助言はない。海での戦いを得意としないカロでさえ実際に水中にもぐって確かめたいと思うほどだった。

「ありがとうございます、タルボ殿」

「自分も海の戦士として精いっぱい頑張るであります!」

「うむ、君たちの任務の成功、心より祈っておるぞ」

タルボは、カロが教えた道順を頼りに去って行った。カロ達も明日に備えて戻っていった。




翌朝、よろづ分隊はオーナメン(こう)まで移動。港には、戦艦テレコン1隻、巡洋艦ソナー2隻が出航の準備をしていた。

戦艦テレコンには西部方面軍司令官エスパ、以下主要幹部クラスが搭乗、巡洋艦ソナーには主にオーナメン駐留の西部方面軍より選ばれた2中隊400名が乗船した。午後1時、よろづ歩兵分隊の7人はソナー201番艦に乗り込んだ。

「出発まで4時間を切った。それまで自由時間とする。各自体調を整えておくように」

船室は基本4人部屋。エクスティの指示で隊長はダット、カロと同室。副長、ストラトス、ケイ、アクアの4人は隣の部屋になった。今回キチノスケは留守番である。


「ふぅ、現地到着まで1日半もあるぞ。暇で仕方ない」

「待機も任務のうちだぞ、ケイ。現地まで片道40時間の長旅。自己管理も戦士の務め」

タリオンは気を抜かない。

「なぁ、この船の食堂の飯美味しいの知ってた?さっき食堂の前を通った時に船員が話しているのを聞いたんだ」

偵察用カメラのレンズを拭きながらストラトスが話を変える。

「そう言えば、さっきいい匂いがしたであります」

「そりゃ、いいや。はやく食べたいなぁ」


出航は予定より1時間ほど遅れ、午後6時に3隻の艦船は港を発った。

帝国軍との折衝により交換の儀は戦艦テレコンの甲板上で行われる予定である。



翌々日の午前6時、起床のベルと共にケイ達は起きだした。ケイは、寝ずに航行に携わっていた戦士たちを横目に空気を吸いに外へ出た。それは陸とは違う重く湿った空気。甲板から見渡す景色は全方位が海であり、水平線から上る太陽だけが方角を示していた。

「さぁ、これから俺達の出番だ」



朝食後、隊長の部屋に集まりブリーフィング。あらゆる場面を想定しての対応策や指示について話があった。


午前10時、帝国軍の艦影が目視される。

「こりゃ、驚いた!ヘリオウスだ」

第一発見者はストラトス。頭上へ飛んでの確認である。これはずるい。

よく知らないアクアにタリオンが説明する。

「要塞空母と言われる最新鋭の帝国軍の旗艦だ。ヘリオウスを動かせるのは皇帝クラウンのみ。よもや皇帝が乗っているとは思わないが」

「あいつら見せびらかしてやがるんだ」

「何だか見下ろされているみたいで気分が悪い」

見ている間にも徐々にヘリオウスが大きくなる。共和国軍の戦闘空母ガレリオンよりも数倍はする大きさの船体が所々太陽の光を反射する。


「我々もいくぞ」

エクスティの言葉で隊員たちが動く。7人はソナーに積み込まれた舟艇ヘリアーに乗り込んだ。ヘリアーは船体右舷の格納庫からクレーンで海面に降ろされると、すぐさまソナーから離れる。計14隻のヘリアーが洋上に展開、乗り込んだロボット戦士たちが警戒の任に就く。


午前11時、共和国軍の展開が終了。戦艦テレコンを中央にして半円状に対峙する。眼前を各軍の輸送船が行き来する。

「会見は12時からだろ、隊長?」

ケイが望遠鏡で様子を見つめる。

「こういうことは事前にやっておくもんだ。遺品をチェックしたり、戦士たちの所属も確認したりしないといけない。エスパ司令が出てくるのは最後なのだ」


「ケイ、あれかな?あの中に仲間たちが乗っているようだ」

カロが輸送船の中から戦士が乗っている船を見つける。

「あれか、あれだな!」

「よっしゃー」

「お帰り!」

戦士たちが歓声を上げる。

「やっと335人の同志が戻ってくる」

タリオンの言葉が皆の心に染みる。その数の中には生きて祖国の地を踏めない者も含まれているからだ。

戦艦テレコンからも捕虜をのせた船が何隻もヘリオウスに向かう。アクアが見つめる先には彼らが助けた若い帝国軍団員の姿も見えた。

「確かホホロとか言っただか。良かったであります」

敵である相手の姿に安堵する。アクアの中にかすかな罪悪感が沸き起こった。



正午、戦艦テレコン甲板上に共和国軍と帝国軍の幹部クラスが一堂に会した。総勢50人余り。しかしそれ以外の戦艦テレコンの乗員達が帝国軍幹部を取り囲んでいる。帝国軍からしたらアウェーだ。

共和国軍代表は西部方面軍司令エスパ。帝国軍は「水の軍団」軍団長モートル。


「この度はわざわざ我が庭までお越しくださいまして、ご苦労でございました」

「庭」・・・この海域が帝国のものであると言いたいのか、それとも海が彼の専売特許であるとでも言いたいのか。それとも・・・。海水に塩分が含まれているように、モートルの言葉には嫌味が含まれている。

「いいえ、こちらこそ将軍(軍団長)におかれましてもわざわざこちらの艦までお上がり下さり感謝いたします。当方最新鋭の船ではござりませぬ故、船酔いにはお気を付けくださいまし」

モートルの牽制にもエスパは動じない。

2人は甲板に置かれた椅子に腰かけテーブルの上に置かれた名簿(これは形式的なもので既に双方に渡っている)に目を通すと署名をし携えた親書とともに交換した。


式自体は簡素なものだあった。実務的なことは既に始まっており、式が終わる頃には行き交う輸送船もそれぞれの艦に収容されていた。



「終わりましたね指令」

同行していたパンダが安堵の表情を浮かべる。

「そうだね、家に帰るまでが遠足だよね」

エスパは艦橋から少しずつ小さくなるヘリオウスを見つめながら考える。


ドスン!

空気を伝う轟音。

右舷のソナーの艦尾より煙が上がる。

ズン!

船底から海を通じて鈍く浮き上がるような衝撃が伝わる。

「来たね。応戦!」

エスパが指示する。



「爆発だ」

「敵襲~!」

それは、よろづ歩兵分隊が乗り込んでいる舟艇ヘリアーが収容されるのを待っている時だった。

「周囲に警戒っ!」

エクスティの指示が飛ぶ。他の分隊も警戒の指示を出す。

ストラトスが上空に飛ぶ。

「海底に敵影発見、来ます!」

ズキューン、ズキューン、ズキューン。

ストラトスが影に向かって撃つ。だが海中の敵には届かない。別の意味がある。

「ありがとう」

カロ、ケイ、ダットが海に撃たれた場所を凝視する。動く敵影に向かって銃撃する。

アクアはタリオンと共に周囲を警戒。


船底から鈍い音が続く。しかし、敵の数が読めない以上、海中へ潜るのは危険だ。


「上がられた。船首だ」

タリオンが気づいた。


「ここに、きーめた」

場にふさわしない可愛い声。モートルが組織した水の軍団精鋭部隊スペシャルエリーターズが1人、ローマ。腰の浮き輪を取ると甲板に投げつけた。

「みんな、突撃~~~ぃ」

一斉に襲いがかる軍勢。戦士たちが反撃する。

「銃は使うな!」

状況が変わる。混戦になる。銃撃は味方にも損害を与える。ケイは剣、ダットはナイフで、エクスティは巨体を生かした打撃で敵を倒し、カロはキックで反撃する。アクアは銛で戦うが狭い空間での戦いには向かないようだ。本格的な実践は初めてだからというのもある。すぐさまタリオンがサポートに入る。ストラトスだけは上空からの銃撃で上ってくる軍団員を阻む。

挿絵(By みてみん)

狙われたのはアクア。

「そこの君ぃ、わたしと、あ・そ・ぼ」

タリオンの隙をついてローマが襲い掛かる。とっさに銛で受け止めるアクア。手加減されているのは明らかだ。

「きみ、海の匂いがするね」

タリオンのサポートの隙をつき、ローマは見つけたおもちゃを壁に押し込めると、そのまま海に叩き落し、自らも海に落ちて行った。

「ケイ、アクアを!」

タリオンの言葉をケイは聞いていなかった。彼は既に海に飛び込んでいた。



ぶくぶくぶくぶくぶくぶく・・・あわわわわわわわわ。

「ぐ、ぐるしい・・・このまま溺れて・・・・・・・・・・。あっ、自分は水中平気でありました」

アクアは正気を取り戻した。ふと下を見ると帝国軍の潜水艦の群れが見える。しかも数十機だ。

「攻撃してこない。・・・。あんなに、どこへ行くんだろう」

そう考えている刹那、後ろから攻撃を受けた。

「そうだ、海に落とされたんだ。今は戦闘中だった」

「ぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐ(ちょっと遊ばせてくれない)」

ローマの攻撃が上下左右から繰り出される。

「ぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぐ(自分も水中は得意であります)」

しかしローマの動きの方が速く、銛で防ぐことしかできない。攻撃する隙も無い。いいようにあしらわれる。

「ぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐ(愛用の銛も上手く使えないようじゃ)」

ローマは体中にある鋭利な刃物や突起を使い、アクアを切り刻む。手に持つカッターナイフがアクアの脇腹を捉える。

「ぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐ(痛たたたた)!」

崩れた姿勢に更にローマの攻撃が追い打ちをかける。

「ぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐ(もう終わりだね)」

沈むアクア目がけて最後の攻撃態勢に入る。頭のラム(衝角)による突撃。ローマの得意技。


「うっ、だめだ・・・・やられるであります」

沈みゆく海の底を見つめるとある変化に気づいた。

「匂いが違うぞ。色も・・・。そうか!」

アクアは力を振り絞り更に深く潜った。

「ぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐ(逃げたな)」

アクアを追うローマ。

「ぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐ(これでおしまいよ)」

頭のラム(衝角)がアクアを貫こうとした瞬間、アクアの体が視界から消えた。瞬間、アクアはローマの上にいた。立ち位置が入れ替わったのだ。頬に衝撃が走る。アクアの銛による突き。


「ぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶくぶくぶくぶくぶく・・・(こいつ、海流の違いを利用して高速移動した・・・)!」

ローマはアクアの機転に気付いた。

「上手くいったであります。タルボさんありがとうであります。はやくみんなの所に戻らねば」

アクアは深追いはせず、すぐさま海面に向かって泳ぎだした。しかし、傷ついたとはいえローマはスペシャルエリーターズの1人。今度は下からアクアを追い詰める。


「あともう少しであります」

が、ローマ徐々に近づいてくる。

「ぶく、ぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐぶぐ(君、いい戦いだったよ)」

突き出したローマのカッターナイフがアクアに迫る・・・・・その時、上から一筋の光の刃がローマの腕に突き刺さった。

「ぼこぼこぼこぼこぼこぼこ!(ぎゃああああああああ!)」

アクアが上を見るとケイがいた。彼の投げたホイケンガン・ソードモードがローマにヒットしたのだ。

「ぶくぶくぶくぶく(先輩っ)!」

黙ってグットポーズをするケイ。息を止めているからだ。みるみる顔が青ざめるケイは逃げるローマを見届けるとアクアに戻る合図をし、そそくさと海面に向かった。



「ぷは~っ。はぁ、はぁ、はぁ。苦ちぃ」

海面に出ると軍団兵は撤退を始めている。大丈夫だ、心配ない。

「アクアは大丈夫。戻ってこられる」

ダットに引き上げられるとケイは周囲の様子を見た。ヘリアーが何隻か沈みかけている。巡洋艦ソナーの機関部から火災も起きている。大分やられた。

「これがあいつらのやりたかったことか!」

「分からん、もしそうならあまりにもくだらない理由だ」

憤慨するケイにエクスティが答える。


「ねぇケイ、アクア全然戻ってこないじゃん。ちゃんとフォローしたの?」

カロの表情が焦っている。

「したよ、ちゃんと」

「わたしが潜ってみましょう」

タリオンが申し出る。

「ただいまであります」

海面にアクアの顔が浮き出る。アクアの手にはケイのホイケンガンが握られていた。

「遅くなりました。先輩のホイケンガン、取りに行ってたであります」


「お帰りアクア」

「ったく心配させて。よくやった」

「ご苦労だった、アクア」

仲間たちは安堵した。




―要塞空母ヘリオウス内―


「ははは、随分やられたではないか」

負傷したローマに笑いながら近づいてくるのは同じスペシャルエリーターズの1人、ワジャ。

「笑いたかったら笑えばいいじゃん。今度は負けないから」

「いいや、笑わん。傷は団員の勲章だぞ」彼の体には多くの傷がある。彼はそれが誇りなのだ。

「2人ともお疲れさま。戻るのが遅くなっちゃった。あれっ、ローマ、やられたの?珍しい」

3人目のスペシャルエリーターズ、コレオス。

「あんたはどうなのよ」

「ぼく?ぼくはいつも適当さ」

「敵の船を3隻も沈めておいてよく言うわ」

「ははは。確かに団長は『あばれてこい』とは言ったが『沈めて来い』とは言わなかったな。やりすぎだ」

「別に沈めるつもりなんてないさ。敵が弱すぎたんだよ」


「3人ともご苦労だったな。ローマ、けがの具合はどうだ?」

「問題ありません、団長。ところで今回の作戦無事達成されましたか?」

「うむ。上手くいった。3日後にアポラン潜水艇は共和国の警戒網を抜けてキンデ連邦の領海に入る予定だ。カルタスの兵がしくじらなければ上陸できるはずだ」

「であれば、我らも戦った甲斐がありますな。ははは」

「僕のコレオス部隊には多くの若い軍団員がいます。今作戦でよい経験を積むことができました」

「我が『水の軍団』は益々強くなる。これは陛下の望みでもある。次の戦いも頼んだぞ」

久々の更新です。お読みくださってありがとうございます。出張も多い仕事ですのでなかなか更新できない時もあるかと思います。

誤字脱字あろうかと思いますが、ひとまずは完走を目標にしていきます。よろしくお願いします。

吉田 天候より

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