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ロボ戦(ロボット戦士)  作者: 吉田 天候
6/10

第6話「歌姫」

ロボロボセンの6話目の投稿です。半年以上途絶えており、すみません。


今のところロボットしか出てきません。ロボット同士の戦いの話です。気長にお付き合いしていただけると幸いです。

同小説は、pixivで同時掲載しています。pixivでは絵も載せています。遊びに来てくれると嬉しいです。

https://www.pixiv.net/users/84991722

*2023年1月以前のイラストは、前のアカウントのページに載っています。不具合のため管理能力が無くなってしまいました。すみません。今後も、イラストを描いていきたいと思います。

              ―ティアーズ共和国首都ルイセンー

「はぁ、全くと言ったらないわ。大統領になってからというもの心休まる日が一日だってありゃしない」

ティアーズ共和国現大統領であるバディは、港から頻繁に出入りする軍艦や補給船団を見ながら部屋で一番いいソファーに思いっきり腰掛けた。

「現在のお悩みというのはこれでしょうか?」

この国の軍を統括する最高司令官がそう言うと、リモコンの電源を入れた。中空にいくつもの画面が映し出された。どの局もちょうど、今共和国で話題のニュースが放送されていた。ニュースのテロップには「共和国の歌姫ノア様、オーナメン島を視察・激励」とあった。

「ああやっていつも私を困らせるのよ、あの子は!『歌手になりたい』って言ったかと思えば家を飛び出すし、戦争がはじまると『戦士たちを支えたい』っと言うので軍の広報担当役にしたら勝手に視察と言う名の激励会を始める始末。どう思う、ショウグン?」

大統領は一気に話し終えた。

「ですが・・・」

最高司令官であるショウグンは、どのチャンネルにも映し出される歌姫を見ながら、

「あのようなノア姫の姿は国民の励みです。わたしなんかより、よほど国民の人気があります」

一瞬『大統領より』と言いかけたが、彼の自己制御力が勝ったようだ。

「だって、最前線に行くなんて思わないじゃない。わたしは、『ここ(首都)にいて原稿読み上げたり、ロボセンさんたちに暖かなメッセージを送るようにしなさい』って言ったのよ。だ~れが、危険な前線に行けなんて言いましたか!」

「そ、その為に、有能なロボット戦士をマネージャーとして付けてありますから・・・」



2            

             ―オーナメン島 東海岸ノーティ港―

「はぁ、全くと言ったらないわよ。こんな時間まで報道各社のインタビュー受けなきゃいけないなんて!確かに民間の取材は許可したけど、この数は異常よ、異常。この時間があったら病院の訪問してたわよ」

共和国の歌姫であるノアは、無作法に椅子にまたがるとマネージャーに言った。

「フェロン、シャワー浴びたら、病院の訪問するわ」

「ノア様、もう時間も遅いですしおやめになった方がよろしいかと。それより、激励の花とメッセージはどうでしょう?」

「・・・そうね、わかったわ」

「明日の午後、空路でフンメルへ向かいます。次いでオーナメン。最後にルドミラを回って終了です。民間の取材もオーナメンまでです。ルドミラには政府の報道機関と若干の屋台設備のみ同行します」

「ありがとう、フェロン。屋台が建てば皆喜ぶわ。後のこと頼んだわよ」

「はい、ノア様」



アクアが入隊してから一週間。

撤去された旧本部跡に基地ベースが築かれつつあった。基地ベースは、作戦本部、整備、居住、調理・食堂、遊戯施設など、様々な機能を有したブロック施設を現地に運び、土地や作戦規模に合わせて自由に組み立てて作られる。本来は、災害の多いティアーズ共和国において住民の避難施設を作り復興支援を迅速に行うために生み出されたシステムであるが、戦時下でもそれは有効であった。

戦士たちは、警備、哨戒、復興をローテーションで行っている。もちろん休息も与えられる。


グリグリグリグリグリグリグリグリ・・・・

ウィンウィンウィンウィン・・・・

「ぷはぁ~、終わった~」

ケイが、まだひび割れが残る滑走路に倒れ込む。

「はい、次はパテで隙間を埋めて」

カロがパテの入ったバケツと刷毛を顔の横に置く。

「午前中に仕上げないと午後までに乾かないよ。きれいに整地しとかないと飛行機来れないし姫様の訪問も無くなる」

「じゃあ、何で隊長居ないの?副長は?ダットは?資材運びに行っているストラトスとお前と俺の3人でやれなんて、どういうこっちゃ!」

「隊長たちは、朝から本部に呼ばれてるし・・・。あとアクアもいるでしょ」

指さした先に微動だにしないアクアの姿。

「おーい、アクア、どこまでできた?」

返事がない。

「おいおいどうした、手が止まってるぞ」

カロが近づいて見てみると、手に持った写真をじっと見つめるアクア・・・。

「ねぇねぇケイ、こっちこっち」

手招きされてやって来たケイが覗き込んでみると、アクアの持っていたものは今日やってくる歌姫のプロマイドだった。

「おいら姫の大ファンなんです。しかも入隊して早々会えるなんて!うれしいっす。はやく来ないかなぁ」

「・・・・・・」



午後、ケイ達4人が会場となる倒壊したビルで作業を始めたころ、修繕間もない滑走路に1機の輸送機が到着した。

「ここが、オーナメン島。上から見てみたけど、やっぱり酷いわね」

最初にタラップを降りてきたのはノア。大急ぎでお付きのフェロンが後を追う。

「お嬢様、お待ちください!そんなに急がれると困ります」

タラップの下に待ち構えるロボセン達。

「お待ちしておりました。ノア様。未だ戦禍の跡が残るオーナメン島までお越しくださり、誠に感謝の思いでいっぱいであります。わたくしは、よろづ歩兵分隊所属エクスティと申します。この者達は、同分隊所属のタリオン副長、ダット伍長であります」

「ノア様にお会いできて光栄であります」

「姫、ようこそお越しくださいました。我らロボット戦士一同、首を長くしてお待ちしておりました」

エクスティ隊長は、準備した車両にノア達を乗せると、基地に向かった。



夕刻、設置された会場にロボット戦士たちが続々と集まった。今日がおぜぜの日(給料日)だということを見越してなのか、会場周辺には、たくさんの屋台が立っている。これらはノア一行が連れてきたものである。もちろん店員は同じロボット戦士であり、民間人ではない。

ケイ達よろづ分隊の4人には、上手後方の席が割りふられた。

「もう、10分ほどで始まるな」

ストラトスは、数時間前に自分が均した地面の具合を足で確かめた。

「ストラトスも何か買って来きたら」

ケイが持っているのは『ぐるぐる目玉焼き』。魚肉と山菜をたまごで和え固めた子どもに人気の屋台商品。

「自分はいいや。お腹空いてないし。おーいアクア、こっちぃ」

「す、すみません。思ったより並んでて・・・」

嬉しそうにアクアが戻ってきた。

「み、見てくださいよ。このノア姫のプロマイド、キラキラカードなんですよ。すごくないですか!これを手に入れるには、ノーマルカードを5種類買わないといけないんです」

「すごいじゃん。5枚買うともらえるのか」

「いいえ。5枚買うとキラキラカードを買う権利が得られるんです」

「そ、そうなのか・・・・」

ストラトスは、何も言わなかった。


しばらくしてカロが戻り、4人がそろった。

「また、銀行か?貯金とは恐れ入る。それよりさ、壊れたゴーグル直したほが良くない?」

ケイがささやく。

「まぁね。でも、ぼくはあんまり使わないし・・・。それに・・・」

「それにぃ?」

「いや、何でもないよ。それより、あれじゃないか?」

舞台上手で何かが動いた。会場前方がざわついたかと思うと、静かになった。静寂が会場全体に広がっていく。


ノアが舞台中央に歩いてきた。コツコツと足音だけが聞こえる。

ノアが口を開く。

「今度の戦争で、多くの戦士が命を失いました。ここオーナメン島でも、島奪還のため、傷つき倒れた戦士が数多く出ました。今を生きている我々は、彼らに感謝し彼らの分まで進まねばなりません」

か細い声の中に力強い確信めいた意思がこもる。

「世の始めにカミありき 定めこの地に降り立ちて 母なる聖地を築きたり・・・」

彼女の口から語られたのは、ティアーズ共和国に伝わる「はじまりの書」の冒頭の一節。共和国のロボット達で言えないものはいない大切な言葉であり、ティアーズ共和国こそ元祖ロボットの国という証が記されている。

「亡くなられた戦士たちに、敬礼」

ロボット達の右手が上がる。涙するもの、苦しさを噛みしめるもの・・・思いが一つになると言うより、思いが重なると言った方が良いのかもしれない厳かな瞬間。

続いて、共和国の国歌「旅路」を皆で斉唱した。

「ロボット戦士のみなさん、今日はありがとうございます。この時間だけは疲れを忘れて楽しんでください。会場警備の人もどうぞよろしくお願いします。現在任務中の方、ありがとうございます。入院中の方、中継は繋がっていますか?それじゃあ、聞いてください。『お気に入り』」

曲が流れると会場の雰囲気が変わった。


「お気に入り」

いつしか無くした髪留めを

あなたが持っていたと知ったのは

だいぶ、後になってから

感じる視線

振り向くと反らす目


わたしの写真をぺろぺろと

舐めているのも気づいていたし

出かけた後、部屋に入って

ベットで眠り込んでいたのも

知っていた


今だって悪びれもなく

ふてぶてしい顔をして

わたしの膝の上ですやすや

わたしのペット

超お気に入り


ノアのデビュー曲。会場が盛り上がり、客席のペンライトの光が浮かぶ、揺れる、踊る。

その中には、熱狂するアクアの姿も。彼だけじゃない、ストラトスもカロもケイもみんなそうだった。

その後、トークをはさみながら「どおりで」や「ぺっ」、「ロボット戦士」など何曲か歌い、1時間ほどで終了した。


「今日は最高の気分でしたぁ」

ステージを降りていくノアを見ながらアクアが興奮の面持ちで語る。

ケイとカロもうなずく。

「あれ、あそこにいるの隊長達じゃないか?」

ストラトスがステージ下手横のテントにいるエクスティ達に気づく。ちょうどタリオンが段差を降りようとするノアに手を差しのべているところ。

「な、な、な、何で隊長たちが姫と一緒にぃ!」

アクアの目が青から赤色になった。

「そうか、隊長たちの任務はノア姫の護衛だったのか」

ストラトスは合点がいった。

「水くさいな隊長。俺たちに言ってくれないなんて」

「ケイ先輩の言う通りであります。し、しかも副隊長殿は姫に触って・・・。ず、ずるいであります!」

「まぁまぁ、ノア姫は来賓扱いだし。情報漏れたら、それこそ一大事だ。少数による護衛任務の方がいい」

「おいらは納得できません!あー、何だか嫌な気分になったであります」

その間に、エクスティ達とノア姫を乗せた護送車は基地に向け走り出した。

「きっと、これを逃したら二度と姫には会えないと思うであります。おいら、今から会いに行くであります」

カロ達が止める間もなくアクアは車を追っていった。

  

   

「ノア様、本日もお疲れさまでした。島に到着後、ほとんど休んでおりません。今日はゆっくりお休みください」

「ありがとう、フェロン。わたし、今日は頑張ったの。だから、ロボセンさん達の心が少しでも癒えてくれるとうれしいわ」

ノアは基地ベース内に与えられた部屋に入っていった。

「『今日も』ですよ」

外に残ったフェロンは、つぶやいた。   

しばらく端末で、各地の戦況や周囲の情報を収集していると、近くに何者かの気配を感じた。

「こういう時のためにわたしがいるんですから・・・」

それは、少しずつ近づいてくる。

やっと何者かがフェロンに気が付いた。

「お、お前何もんだ?」

それはアクアだった。

フェロンは、何も答えない。必要を感じないからだ。

「さてはお前、ノア姫に近づこうとする追っかけだな。握手したり、おしゃべりしたり、ハグしたり気持ち悪い欲望をむき出しにした怪しい奴め」

武器を構えるアクア。自己紹介も甚だしい。

「なるほど。君、お待ちなさい」

「問答無用、うぉりゃーっ」

アクアは、銛でフェロンの胸部を突き刺そうとする。しかし、上半身だけを巧みに動かして避ける。

ならばと位置を変えつつ4度、5度と攻撃を繰り出すが、フェロンにはかすりさえしない。

たまりかねたフェロンは、アクアが繰り出してきた銛を軽く手で払うと腕をつかみ、

「まっ」

アクアを背負い、

「た」

地面に叩きつけた。

「くぅ」

アクアは沈黙した。


「アクア~。アクア~」

暗闇から声が近づく。

「いたいた、アクア。あれっ寝てる・・・」

ケイが倒れたアクアに手を当てる。

「こりゃ、一発で伸びてるな。君かい?」

後から来たストラトスが、フェロンに問いかける。

「ええ、この者が自分のことをノア様に近づく不届き者だと勘違いしたので・・・つい」

「はははは、そんなことだろうと思った」

ケイは、その言葉が本当の事だと分かった。

間もなくカロが隊長たちを連れてやってきた。

「フェロンさん、先ほどはどうも。それに、うちの部下がしでかしてしまったようで申し訳ありません」

エクスティが頭を下げる。

「いえいえ隊長。今日は一日護衛してくださりありがとうございました。しかし、若い者はいいですね。活気があって。でも帝国軍だったら容赦はしませんが」

「ごもっとも」

エクスティはまた頭を下げた。


「どうしたの、フェロン。騒がしいわ」

外の喧騒が気になったのか、ノアが表に出てきた。

「ノア姫、こんなに近くに!」

ストラトスが手の汗をカロの頭になすり付ける。

「ロボセンさん達、こんばんは。あら隊長さん、今日は一日ありがとうございました。どうしたんです?」

「すみません。うちの若いもんが姫に会いたいばかりに先走りまして」

未だ意識を戻さないアクアの頭をツンツンするケイ。

「でも、アクアの教育係はケイ、お前だぞ」

頭を拭きながらカロが茶化す。

「ムカムカぁ~。俺だってアクアの事よく分からんし‼」

「でもさ、アクアの猪突猛進な所、なんかケイに似てるよ」

カロが付け加える。

「ご事情お察ししました。わたしは別段気にしておりませんので、どうぞ許してやってください」

「ノア様がそう仰られるなら」

隊長は安堵した。

「俺は姫様を間近に見られたし話もできたので言うことなしだ」

ストラトスのフォローは優しい。

「にしても、隊長、何で俺らには姫様の護衛任務のこと言ってくれなかったんですか。ダットもだよ。ずる過ぎる」

「そうですよ。そういうことはちゃんと言ってください」

今度は矛先が隊長達に向いた。

「ごめんな、みんな。俺も今朝知らされたんでな」

「これも任務なのだ。与えられた役割を全うすことこそ戦士の証である」

しかし、ダットとタリオンの表情は緩みっぱなしだ。

「ふふふ、とても良い(チーム)のようですね。みなさま方7人、これからも戦士としてのお仕事お願いします。アクアさんと言ったかしら。若い戦士さんも」

そう言うと、しゃがみ込んだノアはアクアの頭を優しく撫でた。



翌朝、アクアは隊長に口頭注意を受けた。上には報告されずに済んだのだ。

「まぁ、しょぼくれるなよ若い戦士さん」

ダットがアクアに向かってにやにやと笑う。

「姫に会えなくったって何だって言うんだ」

続けてケイがアクアの頭を撫で回す。

「ぷんぷんぷんぷん!ぷしゅーっ!」

悔しいやら、恥ずかしいやら、ケイのされるがまま頭が揺れるアクア。

「腐るな、腐るな。真っ当に生きてれば良いことあるさ。なっ、カロ?」

「そうそう、ストラトスの言う通り」

よろづ分隊の6人は、アクアが伸びている間に起こった事を伝えなかった。そして、それは正解だったようだ。



突如、帝国軍から打診された捕虜交換。それを受け入れる共和国軍。2つの軍隊が海上で相対する。次回「海上戦」お楽しみに。


お読みくださってありがとうございます。出張も多い仕事ですのでなかなか更新できない時もあるかと思います。

今回、国歌「旅路」も作詞したのですが、結局カットになりました。pixivでは、歌詞とイラストを掲載していますので見に来てください。

誤字脱字あろうかと思いますが、ひとまずは完走を目標にしていきます。目標は38話くらいで終わることです。よろしくお願いします。


吉田 天候より

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