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ロボ戦(ロボット戦士)  作者: 吉田 天候
5/10

第5話「初陣」

ロボ戦(ロボセンと読んでください)の5話目です。

今のところロボットしか出てきません。ロボット同士の戦いの話です。前回から1年経ってしまいました。気長にお付き合いしていただけると幸いです。

同小説は、pixivで同時掲載しています。pixivでは絵も載せています。遊びに来てくれると嬉しいです。

https://www.pixiv.net/users/35014452

夕刻、広場に15名のロボット達が集まった。各分隊より選別されたものもいたが分隊での参加もいくつかあるなど、混成部隊であった。よろづ歩兵分隊は、ストラトスを除く6名での参加であった。

「各自、武器弾薬の補充を済ませたな」

作戦指揮を行うパンダ隊長が続ける。

「詳細はこうだ。昼過ぎに警戒中の隊員がルドミラ自然公園付近で帝国軍団員数名を目撃。追撃するものの、公園内に逃げ込んだというもの。本作戦は、園内に逃げた敵兵を保護するもの。なお、園内にいる生き物たちは保護されている。必要以上の接触は避けること。生き物たちに傷を与えることを避けること。以上」


「アクアの初陣が敵兵の探索とは、残念だったな」

「いやいや、むしろいきなり戦場よりはいいかと」

「私が新兵だった時は、最初の任務は災害救助であった。探索とはいえ、戦闘も十分にあり得るので気を付けること。それに・・・」

「それに何ですか、副長?」

「敵兵だけが危険ではないということだ」

「みなさん、ご心配ありがとうございます。しっかりと任務を遂行できるよう尽力するであります」

アクアのぎこちない敬礼がケイ達の笑顔を誘った。



サ、サ、サ・・・・・

「はぁ、はぁ、はぁ」

ササ、ササ、ササ、

ド――――――ン、ド――――――ン!

「ホホロ、俺は間に合わない。ここでお別れだ」

「隊長―――――――っ!」

「お前だけでも生き延びろ。もし、国に帰れたら家族によろしく伝え・・・・」

隊長と呼ばれた男は、言い終わる前に右の茂みに入っていった。男の後ろを巨大な四足獣が追う。歩くたびに地面に巨大な円形のくぼみを付けながら・・・。



辺りはすっかり暗くなっていた。

公園の門が開き、15名のロボット達が園内に入っていく。巨大な木々が連綿と続く森の中を進んでいくと暗さは更に増していく。捜索隊は、最低限の光を灯して進む。園内の生き物を刺激しないためだ。辺りは静寂に包まれているが、時折何かの生き物の鳴き声が響く。



「公園と聞いてたけど、なんなのよこの道?」


アクアの前を歩くケイがつぶやく。

「ここは、生き物たちを守るための保護区だ。不干渉が基本である。我々が歩いているのは獣道。道幅も足場も我々に合わせてはいないぞ。周りの音に注意しろ」

エクスティはケイの疑問に答えつつも周囲の警戒を怠らない。

「アクア、怖くないか?」

ダットが新人を気に掛ける。

「大丈夫であります」

「公園っても自然保護区域だ。それに戦争になってからは、何のチェックもされてない。怖くなったら言えよ」

「はい、大丈夫であります」

しばらく進むと明るくなった。道が開けたのだ。上を見上げると星空が見える。足元を見ると地面には大きな円形のくぼみがいくつか見られた。


「何だろう、風呂かな?一度に5人くらい入れそうだ」

ダットとケイがくぼみに腰かけた。狭い獣道から抜けたからなのか、緊張が解けたようだ。アクアもケイに続く。

「それにしても大きな円だな。最近できたようだ」

カロもアクアの横に腰掛ける。


「スタンタだ」

「スタンタの足跡だな」

「踏まれたらひとたまりもないないぞ」

のんきなダット達とは対照的にパンダ隊長やエクスティ達が焦り始める。スタンタとは、この星にいる生き物で、その強力な足により多くのロボット達の命を奪ってきた。

「パンダ隊長、木の幹に弾痕を発見しました」

タリオン副隊長が銃撃で破壊されたであろう枝を見せたあと、幹の焦げ目を指さした。

「彼らはスタンタと遭遇し戦闘状態に入ったと思っていいな」

パンダ隊長が続ける。

「敵兵は左の獣道を逃げたか。いや、右に続くスタンタの足跡はまだ新しい。何かを追っていったようにも見える。おそらく二手に分かれたか・・・?」

「こちらも二つに分けますか?」

「そうしてくれるか、エクスティ。よろず分隊は左を行ってくれ。残りの我々はスタンタを追う」



ホホロと呼ばれた帝国兵は、ひとりで道無き道を進む。頼れるものは何もなく、何時間も森林帯を上ったり下ったり・・・。しかし、しばらく行くと建物が見えた。窓からは明かりも見える。

「公園を管理している建物…?」

残っていた銃弾の数を数えつつ身構える。

「誰かいたらどうする・・・?ひとりでもやるしかないのか」

自問自答しながらゆっくりと近づく。5mほど手前でしゃがみ込み機会を伺う。

「何か食べ物がほしいな。いやその前に水だ。そうだ、ぼくは水が欲しかったんだ」

足元にある程よい小石をつかむと、窓めがけて投げつける。

―――――――――コン・・・・・・・

「・・・誰もいない?」

周囲を見回し、四つ這いで窓の下まで近づく。ゆっくりと窓の中を見る・・・。

その時、地面がゆっくりと大きく揺れるのを感じた。



パンダ隊長らと別れた後、よろづ分隊は更に奥を進んだ。

「副長、我々は今、どこを歩いているんでしょうか」

カロは木の幹や枝をつかみながら器用に前へ進む。

「恐らく海岸線に沿った森林地帯を歩いているはずだ」

「地図を作ったとしても、半年もすれば地形が変わる。そなぜならここに住む生き物たちが変えてしまうからだ」

タリオンの説明にエクスティが付け加える。

「隊長、これ以上の追跡は我々にとっても危険が・・・」

タリオンが言いかけた時、地響きとともに遠方に光が走った。

「見つけた!何かいる」

初めに目視したのはカロ。

「こっちに来ますよ」

地面に手を当て、大きくなっていく振動を直に感じるダット。

「全隊員、臨戦態勢。周囲に目を配れ!アクアはケイと離れるな!」

「はい!」


ド――ン、ドーン、ドン、ドン、ド!

突然、目の前の木々が吹き飛び、視界が開けた。

後から続く強風とそれに運ばれてくる石礫がロボット達を襲う。

各々体を守りながらも、それらの元になった存在を凝視する。

「イエティだ!」

エクスティが声を上げる。

彼らの10倍はあろうかと思われる巨大な生き物は、両手を振り回して辺りの木々をなぎ倒す。

「隊長、頭に誰かいます」

飛んでくる石や木片を自慢のホイケンガンで払いのけながらも、しっかりと対象から目を離さないケイ。

暴れているイエティの頭にしがみつくロボットを確認すると、

「原因はあれか!全員、イエティ頭部にしがみつく兵士を救出せよ!なお、イエティへの攻撃は禁ずる」

エクスティが命令を出す。

「こりゃ、厄介だ!」

ダットは、左右から繰り出される拳を避けつつ近づこうとするが、足場も悪く動きが制約される。

「イエティを傷つけないで、どうやって救出する?」

「隊長、ぼくが行きます。ケイ、フォロー頼む」

カロが持っていた武器を腰にしまった。

「ぼくは、少しなら飛べる…」

腰を沈め両足に力を集中させる。足首の朱色の発条が凝縮される。

ぴょ~~~~ん。

足の発条が解放され、カロが飛び上がった。

「そこの君、つかまれ!」

カロは空中でイエティの頭部に摑まる敵兵に向かい手を差し出す。反射的にホホロも飛び上がりカロの手を掴む。生存本能がそうさせたのである。

地上では、エクスティ、タリオン、ダットが牽制、ケイがカロをアクアがホホロをそれぞれ受け止めた。

「大丈夫だったか?」

アクアの問いも怯えすぎて頷くことでしかできないホホロ。

よろづ分隊がアクアの周りに集結する。

「全員撤退、閃光弾一斉謝!」

バババア―――――――ン!!

イエティの眼前で閃光が広がった。視界が塞がれたイエティは闇雲に拳を振り回して暴れ回る。そのうちの一撃が岩を砕き、その破片がカロの顔面を直撃した。

「カロ―――――っ!」

すぐに駆け寄るケイ。

「平気だよ、それよりここを離れよう」

「でも、ゴーグルが・・・」

見るとゴーグルのレンズにひびが入っていた。これが彼のお気に入りだったことをケイは知っていたのだ。

「しかたない、しかたない」

カロはかすかな声でつぶやいた。



よろづ分隊が捜索隊を分けた場所に戻ると既にパンダ隊長たちが待っていた。

「これ以上戻るのが遅くなったら、お前たちを置いて帰るところだったぞ」

パンダがエクスティに本気とも冗談とも受け取れる口調で言うと、

「お待ちさせて申し訳ありません。こちらは敵兵を一人保護しました」

と冷静に報告すると、アクアがホホロをパンダの前に連れでてきた。

「部隊名と名前は?」

「………ホホロ」

「ホホロ君、君の身柄の安全は我々が保障する。我々共和国軍のロボット戦士は戦時中であろうとも敵に対して紳士として振る舞う。君の信奉する国王に対してもだ」

「クラウン皇帝です!」

「あぁ皇帝だったな。…そうそう、君の他にもう一人逃げていた者がいたようだ。これに見覚えはないか?」

パンダがホホロに見せたものは帝国軍団員の持つ標準ハンドガン。しかし、持ち手が歪み銃口は潰れている。

「スタンタの後を追って、道を分け行ってみたらこれを持った軍団兵が倒れていた。あの生き物は、我々の戦車であっても踏みつぶす力があるのだ」

敢えて『倒れていた』と表現したのはパンダの優しさかもしれない。

「これは・・・隊長のです・・・」

ひしゃげた銃を摩るとホホロは涙を流した。

「彼らは、この星の先住民。我らロボットは後からやってきた新参者なのだ。我々はこの星で慎ましやかに生きなければならないのだ」

パンダはうなだれるホホロの肩に手を置いた。

捜索隊は、すぐさまその場を後にした。



捜索隊が戻る頃には真夜中を過ぎていた。

エクスティ隊長とタリオン副隊長は捕虜 (保護をした軍団員) を連れ本部に向かった。先に戻ったケイ達はテントの外で今日の任務を振り返る。

「冷えてるの飲むか?」

ダットは、人気栄養補助ドリンク『ボロタミンA(微アルコール)』をケイ達に渡した。

「アクア、初任務どうだった?」

ケイは、冷えたドリンクをアクアの顔に近づけた。

「何だか、よく分からないまま終わってしまったであります」

「今度はぼくの番。アクア、ぼくの活躍はどうだった?」

「カ、カロ先輩かっこよかったっす。自分は得意分野は水中でありますので…、あんなに飛べるなんて凄いであります」

「ははは、よかったなカロくん。じゃあ聞くけど、指導教官殿はどうだった?」

ダットの目つきが異様にいやらしい感じがする。

「ケイ先輩でありますか?ケイ先輩は・・・・」

「ケイ先輩は?」

「射撃ポーズがかっこよかったであります!」

「おっ、そうだろ、そうだろ。さすがよろづ歩兵分隊の期待の新人だ。分かってるねぇ」

ケイは、腰に装着してあるホイケンガンを手に取る。

「これは俺のお気に入りなんだぜ。振ってもよし。回してもよし。撃ってもよしだ」

「ケイ、お前の得意技見せてやれよ」

2本目を飲みながらダットが煽る。

「ど、どんな技でありますか?」

「えっ、見たい?見たい?」

「見せてやれよ、ケイ」

相棒も背中を押す。

「仕方ないなぁ」

ホイケンガンを腰に戻すと、左手を前に出してポーズを決める。

「ふぅ~、はっ!」

右手を腰に当てたと同時に掴んだホイケンガンを前に突き出す。剣のくぼみに指をひっかけて回転させ、一瞬のうちに銃モードに変化した。

「いいぞ、ケイ。もっと見せて!」

「よく見えなかったぞ。もう一回」

「も、もう一回いくぅ?」

まんざらでもないケイ。

今度は、銃から剣へ、そして剣から銃へ、何度も何度も・・・・・その時、

ビュー――――――――――ン!!!!!!

上空に向かって光線が走った。ケイが誤って放ったものである。その直後、

「うわぁ―――――――っ」

空から何かが落ちてきた。ストラトスである。

「何だ、敵の攻撃か!?」

「敵襲?敵襲?」

他の分隊のテントからロボット達が飛び出してきた。しかし、ケイ達の姿を見るなり、

「何だよ、よろづか」

「ケイ、いい加減にしろ」

「はやく寝ろ」

と、口々に呪いの言葉をかけるとテントの中に戻っていった。



「いたたたたた、何だよ急に。ケイ、どういうことだよ」

ストラトスが状況を尋ねる。

「ど、どういうことって、いろいろあって、ごめん」

「一発だけなら、誤射かもしれないし」

カロが意味のない言い訳を加えた。まぁ、本当に誤射そのものであるのだが。

「あ~ぁ、羽根もげちゃったよ。あれ、そこの君、もしかして新人君?」

「あっ、はい。自分、名前をアクアと申すであります。よろしくお願いいたしますであります」

「うんうん、よい挨拶だな7番目。俺はストラトス。よろしくな。ところでみんな、最新情報あるけど聞きたい?」

「おっ、聞きたい」

ダットが起き上がろうとするストラトスに手を貸す。

「内緒だぞ。6日後、ここに姫様が来るらしいぞ」

「姫って、どこのよ?」

「姫って言ったら、現大統領の娘、共和国のアイドル、歌姫のノア様にきまってるだろ」

お読みくださってありがとうございます。出張も多い仕事ですのでなかなか更新できない時もあるかと思います。

誤字脱字あろうかと思いますが、ひとまずは完走を目標にしていきます。よろしくお願いします。

吉田 天候より

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