第4話「7番目の戦士」
ロボ戦(ロボセンと読んでください)の4話目です。
今のところロボットしか出てきません。ロボット同士の戦いの話です。月一で更新出来たらと思います。気長にお付き合いしていただけると幸いです。
同小説は、pixivで同時掲載しています。pixivでは絵も載せています。遊びに来てくれると嬉しいです。
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1
翌朝、仮設の軍病院で背中を治療したダットが最新情報をタブレット(小型のデータカード)に入れて分隊テントに帰ってきた。
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ハルミ連隊 作戦司令本部
共和国軍死者 24名
負傷者 213名(含重軽傷者)
不明者 0名
帝国軍死者 21名(オーナメン島で確認された数のみ)
捕虜 45名(含負傷者)
現在、領土内に帝国軍兵が潜伏している可能性があり、第2警戒態勢は維持。近日中に討伐隊の編制及び派遣を検討中。
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「まだまだ、安心できる状況に変わりはないな」
ケイの肩の傷はさほどの事ではなく、テント内の治療装置で済んでいた。
「死傷者の中には、僕たちが守るはずだった戦車隊の隊員もいる…」
「カロ、結果はどうあれ、俺たちは戦士としてできるだけのことをした。ただ、それだけ。副長、討伐に回せる数なんてあるんでしょうか?」
負傷者の数と現行戦力数からストラトスが考える。
「敵兵がどこかに潜伏している可能性がある以上、速やかに対応しなければらならん。まずは、被害が軽微な隊が派遣されるはずだ」
「よろづ分隊には出番あるかなぁ」
「隊長がダットを負傷者1で報告しているから、どうだろうか。それに、沿岸警備やがれき撤去作業の手伝いもある。ストラトスに至っては、偵察任務との兼任だ」
「ダット、残念だったな」
「まずは、傷を治すのが先だよ」
「ちょっ。もう元気なんだけどなぁ」
ヴォ―――――――――――――ッ!
その時、桟橋から大きな汽笛の音が鳴った。
「副長、軍艦です。軍艦が来ました」
「巡洋艦のソナーだ。昨夜の海上戦闘のものか、それとも補給物資がのっているのか…」
タリオンの予想とはちがい、軍艦から下りてきたのは多くの新兵だった。
2
「うむ、皆に伝えておくことがある。今日からよろづ分隊に新隊員が加わる」
このニュースは、午前中にケイ達ががれきの撤去作業に追われた後、エクスティによってもたらされた。
「おー、よろづ分隊にも新兵ですか」
「やったな、カロ。新しい仲間が増えるぞ」
「えっと、隊長、副隊長、俺、ストラトス、カロ、ケイに続いて7番目の隊員か。女の子だったらいいなぁ」
「ダットには残念だが…」
「隊長、もういいです」
「で、その新しい仲間はいつ来るんです?」
「うむ、実はもうそこに来ている」
隊長が、指さしたテントの入り口に影が映る。
「入ってきなさい」
入ってきたのは、若い少年兵。背は分隊の誰よりも低く、体は全体的に丸っこい。青い顔に大きな目…。まだまだ歩き方も敬礼もぎこちない。
「お、おいらは、この度よろづ歩兵分隊に配属されることになりましたアクアと申します。半年間、訓練学校で学んでまいりました。ロボット戦士として不退転の決意をもって任務に臨む所存であります。先輩方、よろしくご指導のほどお願いいたします」
ぎこちない挨拶をし終わると、この新しい仲間のこわばった表情が少しゆるんだ。
「よろしくな、アクア。俺はダット」
「ずるい、俺が先なのに。俺はケイ。よろしく」
「カロです。よろづ分隊はすごくいいところだよ。仲よくしようね、アクア」
「わたしは副隊長のタリオン。戦術面でいろいろサポートする立場にある。健康面での相談も私にするがいい。それと、あの隅で休んでいるのがキチノスケ。戦闘時に物資輸送や伝令を行ってくれる強い味方だ。目が覚めたら挨拶してやってくれ。あともう1名、ストラトスという隊員がいるが、今は別任務でいない。今度改めて紹介しよう」
「うむ、先ほどもアクアに言ったが、わたしが隊長のエクスティだ。ようこそ我がよろづ歩兵分隊へ。分からないことがあればわたしやタリオン副隊長に聞くように。ただ、年はケイやカロと近いだろうから話は合うかもしれんな。そうそう、忘れていたがアクアの指導教官はケイに任せる。頼んだぞ」
「え―――――――――――――っ、俺ですか」
「うむ、そうだ」
「無理無理無理無理…そんなのやったことないし。それに、指導教官は同期のカロの方が向いている!だろ?」
「いやいや、ぼくは君より前に入隊しているから、僕の方が先輩なんだよ」
「前って言っても、たった2日だろ!同期、同期」
「がんばれ、ケイ」
「うむ、頼んだぞケイ」
「さっそく、午後の沿岸警備から一緒に行動するように」
「ケ、ケイ先輩、よろしくお願いします、です!」
「頑張ってね、き・ょ・う・か・ん!」
「キ―――――――――――――ッ!」
3
昼過ぎからよろづ分隊は沿岸の警備。エクスティとカロ、タリオンとダット、ケイとアクアの3組に分かれての任務になった。
岸に到着し、警備を始めるケイとアクア。周りに警戒するのが第一の任務なら、コミュニケーションを図り情報を共有するのも大切な任務である。しかし…
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・(新人め、何とか言ったらどうだ)」
「・・・・(先輩、何か言ってくれないかな)」
「・・・・(こういう時は先に、「先輩の得意なこと何ですか」とか聞くもんだろ)」
「・・・・(こっちは初めてで緊張してるし「生れはどこだい」とか緊張ほぐす言葉とかあるのでは)」
「副長、あいつら見てくださいよ。ケイは、なんだか緊張しているみたいですけど」
「まぁそうだろう。ケイにとって初めての後輩になるわけだし、そういう経験も必要だ。ケイには組織にいるものとしての責任感をもってほしいのだ。そうすれば少しは突っ走ることもなくなるだろう…」
ダットの話に答えつつも、タリオンの瞳は常に海からそらさない。
「・・・・(仕方がない。俺から話しかけるか)」
「・・・・(ようし、こっちから…)」
「なぁ」
「あのぅ」
2つの言葉が空中でぶつかった。
「・・・(しまった。声がかぶった)あー、アクア君。気分はどうだい?」
「(き、気分?)おっ、えっ、とてもいいですね(しまった、会話が途切れた!)」
「そりゃ、よかった。(そ、そうだ)ところでさ、アクアの後頭部にある目、あれは本物なのかい?」
「(やっと自分の話キター)おっ、自分の後頭部にあるのは本物の目ではなく、眼状紋というにせものの目なのであります。生まれたときから付いていました」
アクアがうれしそうに後頭部を指し示す。
「いいな、それ。俺もはじめは驚いた。戦いでは敵のフェイントとして使えるな」
「そうなんです。おいら、泳ぐのが得意で水中にもぐるんですが、よく魚たちが驚いて逃げていくであります」
「なるほど、水中が得意分野なんだな。だからアクアが持ってる武器は銛なのか」
「はい、モリボックと言います。電撃を溜めて撃つことができるであります。ロボセンだった祖父が使っていたもので、今回携行が許可されました。少し手を加えて地上でも使えるであります。ケイ先輩の武器も、他の皆さんと違うみたいですが…」
「あっ、これね。これは…」
言いかけると、ケイのベルトのライトが音を鳴らしながら点滅した。ボタンを押すとそこからエクスティ隊長の声が聞こえた。
「よろづ分隊、警備終了後に集合。次の出撃命令が出た。以上」
アクアは持っている銛をグッと握りしめた。
4
ルーフ軍港は、ティアーズ共和国の有する2つの大陸の1つであるスローズ大陸の最東部に位置する東の要であり、現在も海洋上で帝国軍との武力衝突が続いている。
ハルミ連隊がオーナメン島を奪還したニュースが共和国中に伝わったころ、ルーフ軍港でも一つの小さな動きがあった。
「ノアさま、今日もお疲れさまでした。無事に32師団の出撃を見送ることができました。明日は朝7時の出発です。はやくお休みください」
「ねぇフェロン、わたし決めたわ」
「何を…ですか?」
「行くのよ、オーナメン島に」
「オーナメン島ですって!敵軍は撤退したとはいえ、まだ安全ではないんですよ。無茶言わないでください」
「だから行くのよ。ハルミ連隊のロボセンさんたちは、もう何か月も戦いづめなのよ。今行かなきゃいつ行くの!予定組めるでしょ?」
「明日はクロック基地の訪問と激励。翌日はそのまま首都ルイセンに戻り大統領と会食の予定です」
「じゃあ、大統領との会食をキャンセルしてちょうだい!そのままオーナメン島に向かうわ」
「よいのですか?大統領にお会いするのは半年ぶりなんですよ」
「別に構わないわよ。母は母、わたしはわたし。母は、お飾りのつもりでわたしを軍の広報代理にしたつもりだけど、そうはいかない。わたしはちゃんとしたいのよ」
「わかりました。調整します。ですが、危険な場所に行くということは心得ていてくださいね」
「ありがとう。さすがフェロン。それに何があってもあなたがいれば安心だもの」
「はぁ、おだてないでくださいノア様。まぁ、一応私もロボット戦士ですけどね」
北部討伐隊に編制されたケイ達よろづ歩兵分隊。広大な樹海に向かう彼らを待ち受けていたのは軍団兵だけではなかった。次回「初陣」
お読みくださってありがとうございます。出張も多い仕事ですのでなかなか更新できない時もあるかと思います。「目指せ月一!」
子どもからは「キャラ多い」と指導を受けました。んー。
誤字脱字あろうかと思いますが、ひとまずは完走を目標にしていきます。よろしくお願いします。
吉田 天候より