表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロボ戦(ロボット戦士)  作者: 吉田 天候
2/10

第2話「ここからが始まり」

ロボットファンタジーの物語です。今のところ人間は出てきません。出てくるのは、ロボット、ロボット、ロボット…。

早朝5時。薄暗い中、両軍は周囲約16キロの旧市街地を挟んで布陣した。そこは、未だ建物の残骸が多く、道は窪んだり、めくり上がったりしており、戦士達の行く手を阻んでいた。

「あそこにレース場があったんだよ」

ダットが栄えていた頃の街を懐かしむ。

「確か、遊技場も併設されていて、週末になると家族で遊びにくるロボ達が多かった」

背中にミサイルランチャを背負いながらタリオンが思い出を重ねる。

「もう一度あそこで走りたかったぁ」

彼の瞳に映るのは、あくまでも昔の街の姿。

「今じゃどこもかしこも地雷原。踏んだら一発でコースアウトだ」

カロにランチャを背負わせてもらいながらケイがつけ加える。

「オーナメン島が我らが手に戻れば復興も可能だろう。たとえ時間がかかったとしても…」

黙って聞いていたエクスティが立ち上がった。

「全員配置につけ!キチノスケはタリオンに任す」

「了解!」

「わたしを中心に通信可能範囲内で動くこと!行こうか、キチノスケ」

「キィーン、キィーン」

ティアーズ共和国軍、ハルミ連隊のロボット戦士3000名が旧市街地を半包囲する。建物の残骸が視界をさえぎっており、戦車による砲撃も限定される。

よろづ分隊の6名(現5名)が展開するのは最左翼で、更にその左にはアガス川が流れ、両軍の展開を阻止している。

先手を打つのは共和国軍である。時間が経てば経つほど帝国軍に撤退の時間を与えるからだ。


空が少しずつ明るくなってくる。

5時22分、山の奥から微かに日の光がもれた。


「全軍、撃てーっ!」

指揮官の合図に合わせ、ロボ戦達は肩のミサイルを撃ち放つ。

バーン、バーン、バーン!

「来るぞっ!」

誰彼の言葉に、ロボット達は腰をかがませ大地をつかむ。

放たれた千近くのミサイルが隙間なく街に降り注ぐ。


ー地雷誘爆弾ー


大地が振動し地面とガレキが浮き上がり、掘り出された地雷が一気に爆発する。

ドカーン!ドカーン!ドッカーン!!

地形がめくり上がり、誘爆弾の衝撃波と地雷の爆風、閃光が両軍の兵に襲いかかる。体中の細胞がバイブレーションを起こし、踏ん張りきれない者は敵味方問わず後ろに吹き飛ばされた。

「あいつら、どんだけ地雷埋めたんだ!」

「敵さんにとっては撤退戦だぞ。余計な物は積みたくないだろ」

そんな戦士達の傍らを、

「お先に!」

と、衝撃波と爆風が収まらないうちに肩のランチャをパージしたケイとカロが飛び出した。

「歩調を合せるんだ、2名とも!」

タリオンは頭の中で作戦計画にすこし修正を加えた。

「前進!」

「前進っ!」

「前進~ん!」

ロボ戦達が進軍を開始した。


ビビューン、ビビューン

ケイの持つホイケンガンは中距離射程の銃で、向かってくる敵を散らす。

カタカタカタカタ…

その敵をカロの持つ近距離用ガンガラガンで1人ずつ狙い撃つ。

これは、彼らのいつもの戦い方…。


「うらららららららら…」

2人の後方では、ケイたちが切り崩した敵兵列をダットがアガス川側より銃撃して内側へ追い込む。

「そこ、おりゃ!行ったぞ!」

ズズズギューン!

赤い閃光がダットの横を通り過ぎ、眼前の軍団兵に直撃する。

「ぅぎゃぁ…!」

ダットが追い込んだ敵を砲撃で仕留めるのは隊長エクスティ。彼が肩に担ぐのは、フンガロウと呼ばれる長距離電磁砲。

「隊長が3仕留めた。そのまま前進!」

隊長の少し前で状況判断するタリオンがみなに状況を伝える。

「カロ、200前方に敵影4。ケイは前に出すぎだぞ。ダットはそのまま敵を排除」

「了解」

ケイとカロは敵陣に切り込み道を切り開く。昨日の遅れを取り戻すように。

ダットは戦車隊に近づく敵を迎撃する。

よろづ分隊に導かれて4機のハテハチと呼ばれる共和国軍戦車が旧市街地を通過していった。


10時過ぎ、後方にいた第2陣のギンエ分隊と交代命令が出る。

「全員呼吸を整えろ。弾薬の補充だ。エネルギーのないものは充電しておけ」

さっきまで地雷が埋まっていたであろう荒らされた大地に座りこみながら、各自隊長の指示にしたがう。

その間にも、少しずつ前線が遠ざかっていくのが見える。

よろづ分隊の傍らを補給部隊の貨物車両ヘリオスが医療車を牽引して通りすぎていく。

ダットが小さく手を振った。

「あれかい、ダットが前いた部隊って?」

微かな声でカロが聞く。

「そうだとも。いい奴らでさ。でも俺、どうしても前線に立ちたくってさぁ」

「僕はあまり考えてなかった。言われるままにテストを受けて、今ここにいるよ」

カロは、ダットとは考え方が違うのだなと思った。

「俺は分かるなぁ。戦ってこそのロボ(せん)だろ」

「そうだよな、ケイ。特に初見の戦場なんか、もうたまらなくてさぁ。暴れたいんだよ」

「それって暴れたいんじゃなくて走り回りただけでしょ」

カロはダットの言葉を訂正したが、ダットにはそれが嬉しかったようだ。


10時20分過ぎ、突如前線から大き爆炎が見えた。すぐさま、よろづ分隊の5名は立ち上がった。

「ありゃ、戦車か何かの砲撃ですね」

「位置は割り出せるか」

「お待ちください」

タリオンはすでに動いている。

「また砲撃です」

「見えているよ、カロ。……アガス川下流からのようです」

出撃準備をしていると司令部からノイズの混じった通信が入る。

「テキノ、ホウゲキアリ。タダチニ、テキヲ、ハイジョ、セヨ」

「次の砲撃で位置を割り出すぞ。移動も考えられる。索敵範囲を共有しろ」

「はい」

「了解」


爆炎の上がった現場では、先行していたハテハチ戦車1機が煙を上げていた。横には自軍の兵が何名か倒れこんでおり、救助活動が行われていた。

横目で現場の様子を見るよろづ分隊…。しかし、彼らの任務はここにはなく先を急いだ。

1キロほどいくとアガス川の岸に着いた。

川幅は広く、岸には多くの小石や砂利が広がり非常に足場が悪い。

「カロ、どこに敵戦車があるのか?」

ケイが辺りを見回しても敵の姿は見えない。

「もう、移動してしまったのかもしれないよ」

「あれから砲撃もないしなぁ」

「ねぇ、隊長。帝国軍は浮遊型戦車を使ってるから足跡なんて見つけられませんよ」

「隊長、副長、どうします?」

「ガルルルルル……」

タリオンは声を震わすキチノスケの背中をさする。

「まだ、どこかにいる…」

「警戒を怠るな」

しばしの静寂が5人を包む。


「2時の方向、距離300m。地中です!」

頭の上から6番目の声がした。

「撃てぃ!」

隊長の命と共に、持てる武器の最大出力をそこに叩きつける。

ズドーン!

吹き飛んだ砂利の中からオクトン戦車が煙を上げて浮き上がってきた。

「ストラトス!」

「遅いぞ」

「遅れました。隊長、みん…」

戦車の砲口がよろづ分隊に向く。

バッバッバッバッ!

ストラトスは、背中の翼を大きく広げて戦車に迫り攻撃を加える。

オクトン戦車の砲口がストラトスに向けられるが、彼を捉えることはできない。

その間に、地上の5人は足元の浮遊装置に狙いを定めて攻撃を加える。

「ダメです。浮き上がった砂利が周囲を覆っています」

「もっと近づかないとだめか」

「俺が行きます!援護ヨロシク」

カロとダットの話を聞いていたケイが飛び出した。

「まったくぅ‼」

ケイの逆方向をカロが走り出す。

「敵の目を逸らすぞ」

「了解‼」

エクスティの指示で戦車を半円状に取り囲む。

カタカタカタカタコタ

ドズーン、ドズーン

ズキューン

攻撃に押されオクトン戦車が川を背にする。

動きを封じられた戦車が反撃を開始する。近づくカロに向かって機関銃が火を噴いた。

しかし、カロの前にシールドを持ったタリオンが防御する。

「攻撃を止めるな」

「はい」


「効かないのなら、効かせるだけだ!」

エクスティは、電磁砲を拡散モードに変えた。

ドキューン!

撃ち放ったエネルギー弾は戦車の目前で大きな光になり目を眩ませた。

敵が視界を遮られている間にダットが狙ったのは機関銃の1つ。見事破壊した。

「いっちょあが…」

しかし、狙っていたのは敵戦車も同じだった。巨大な砲口がダットを狙う。

ドッキューーーーン‼‼

今までダットがいた場所が爆炎に包まれる。

「ダット!」

「ダット――――ッ!」


「みみみみ、みんん、にやぁ、だだだ、だいじょょょうぶらぁ」

炎の中から三輪バイクに変形したダットがガタゴトと砂利の上を走り抜ける。

「ダット、感謝!」

その間に、川から上がったケイが戦車の底に滑り込み、浮遊装置を破壊した。

周囲の砂利と共に戦車が降下する。

「脚をこわせ」

よろづ分隊の攻撃が集中し1本の脚が折れる。

「よし」

「やったぁ」

シュルシュル、ピキーン

オクトン戦車は倒れこみ活動を停止した。

間もなくして、敵戦車から白旗が上がった。




敵戦車を破壊したよろづ歩兵分隊。しかし、戦いはまだまだ続く。丘陵地帯を突破しようとするケイ達に謎の敵が現れる。その強さにケイはどう立ち向かうのか。次回「交える剣」

更新が不定期です。気長に見ていただくと助かります。誤字脱字多いと思います。どうぞ御容赦ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ