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ロボ戦(ロボット戦士)  作者: 吉田 天候
12/12

第12話「回想①」

「ロボ戦」第12話です。遅筆でございます。楽しく読んでいただければ幸いです。pixivでも挿絵付き小説や設定画を載せております。よろしくお願いします。

まだpixivの方に挿絵付きの話は上げられていません。挿絵が出来上がるまでお待ちください。設定資料も載せていますのでお楽しみください。


現pixivのアドレスです

https://www.pixiv.net/users/84991722


編集不可になった前アドレスです。

https://www.pixiv.net/users/35014452/illustrations

―――数年前―――



6月


ビシッ、ガッッ、キュイーン、ドサッ

デュボッ、サッ、ドキュ、ササッ

クルッ、ピカッ、ペロック、スーーーン

ガシャ、チン、ズン、グニョ

キョチャラシャンシャン、ペロッチョ

ヒュンヒュン、スリッ、テケテケ、テンテンテン

ピキピキ、プペ・・・


「それまでっ!」

教官の手が上がる。周りで1対1での近接戦演習をしていた数十人の生徒たちが崩れ落ちる。1人を除いて。

「15分で音を上げるやつがおるかっ!実戦ではこうはいかんぞ。ほぉ、お前だけは立っておるな」

生徒たちの視線が一点に注がれる。


「あいつは特別だよな」

「いいなぁ、体格に恵まれて」

「やっぱアルトはすごいや」

「才能があるやつは違うよな」

「きっと今年の卒業演武大会は優勝確実だな」

当の本人には嬉しくもない感想が聞こえてくる。

「はぁはぁはぁ、残念ですねぇ。今年の優勝は俺だよ、アルトぉ」

アルトの足元で息も絶え絶えなケイ。先ほどまでアルトと戦っていたのは彼。


「人をうらやむ暇があったらとにかく稽古じゃ稽古。が、今日の授業は終了。昼飯の時間にしよう」

教官が去った後、三々五々、生徒たちも運動場を去っていく。


「ケイ、自分たちも食べに行こう」

アルトが手を貸す。

「そうだねっ」

ケイは立ち上がりとともにアルトの頭をパコッと叩く。

当然、何のダメージもない。

「こんにゃろう、次は絶対に俺が勝つからな、親友」

「うん、待ってるよ」




2人の通うガモフ中等訓練学校は、共和国西部にある街センサから東に50kmほど離れた町ヒアマにあるロボット戦士専門の養成機関である。ヒアマは国内では中規模の都市に分類されている。町のほとんどが軍工廠と関連した企業で成り立っており、ここでは秘密裏に開発試験が行われることもある。そして、作られた兵器は国内の軍施設に送られる。


ケイやアルトが通うガモフ中等訓練学校の日課表は次の通りである。


月曜日

・ホームルーム(8:00~8:10)

1時間目:国語【言語、暗号等】(8:15~8:55)

2時間目:数学(9:00~9:40)

・休憩(9:40~10:00)

3時間目:実践【格闘、武器】(10:00~10:40)

4時間目:道徳(10:45~11:25)

5時間目:歴史学(11:30~12:10)

ランチタイム(12:10~12:50)

6時間目:軍規・法令(13:00~13:40)

・ホームルーム/下校(~13:50)


火曜日 *時間は略

・ホームルーム

1時間目:国語【言語、暗号等】

2時間目:数学

・休憩

3時間目:技術(武器の組立、メンテナンス等)

4時間目:技術

5時間目:戦闘心理学

ランチタイム

6時間目:国語

・ホームルーム/下校


水曜日 *時間は略

・朝礼

1時間目:科学(化学)

2時間目:数学

・休憩

3時間目:実践【格闘、武器】

4時間目:地理

5時間目:総合

ランチタイム

6時間目:国語

・ホームルーム/下校


木曜日 *時間は略

・ホームルーム

1時間目:歴史

2時間目:国語

・休憩

3時間目:歴史

4時間目:模擬訓練(2年時以降は、戦車等を使った戦闘訓練も行う)

5時間目:模擬訓練

ランチタイム

6時間目:数学

・ホームルーム/下校


金曜日 *時間は略

・ホームルーム

1時間目:模擬訓練(振り返り)

2時間目:国語

・休憩

3時間目:実地訓練(砂漠、岩礁、海、対空、対戦車等)

4時間目:家庭科/保健

5時間目:科学(化学)

ランチタイム

6時間目:地理

・ホームルーム/下校


土曜日 

学校開放につき、各自自主学習が行える。


日曜日

休校につき、学校に来ても誰もいない。(休日出勤で先生はいるかも)




10月


「おい、アルト~っ。通知表どうだった?」

後ろからケイが走ってくる。

「ん、まあまあだね」

今日は前期の修了式。彼らロボット戦士のひよっこ達に細かい成績が知らされる日である。

「ど~れ、ど~れ」

ケイがアルトの手にしている本に挟まれた通知表になまめかしい視線を送る。


「全く、ケイは!いつも教官に『目指すべきは自身の成長。他人と比べるは愚かなり』って言われてるじゃないか」

やれやれと言った面持ちで本に挟まっていたものを渡す。


「素直でよろしいアルト君。・・・。格闘SS、剣術S、射撃S、砲術S・・・・・歴史SS・・・。おい、軒並みSじゃないか!」

ケイの顔が青ざめる。

「あっ、まぁ、さすが俺の親友だな。ご、合格点だ」

偉そうなケイ。


「今度はケイが見せるばんだよ」

隠そうとするケイの一瞬の隙をついて通知表をきれいに奪う。

「格闘S、剣術A、射撃C・・・C?」

「なっ、おかしいだろ。俺の射撃悪くないじゃん。なのにCだよC。おかしいよ」

ケイは不満でしょうがない。

「あっ、きっとあれだよ。前に集団で走り撃ちの訓練している時、味方撃っちゃっただろ?模擬弾だったから良かったけど。きっとあれだよ原因は」

アルトが手を叩く。

「いや、あわ、あれは小石につまずいてだな・・・」

戦場では許されない言い訳をする。

「しかもさ、前を走っていたのに後ろの同期に当てちゃったの!あれ、未だにどうやったか分からない奇跡の動きだって教官たちも言っていたな」


「ぐぬぬ、今回もアルトに負けた。夏の1対1個人戦でも負けたし・・・。いつもお前だけには勝てない。2月の卒業演武大会まで練習するぞ。そして必ず勝つからな!」

「・・・」

アルトは持っていた本をギュッと握った。




12月


「資料室にいるなんてめずらしい」

アルトが驚いている。

「う~っ、歴史学のテストが悪くて勉強してるんだよ。再テストだよぅ」

恥ずかしがるケイ。

「だったら僕に言ってくれよ親友。教えるのに」

たくさんのペケマークが付けられたケイの答案用紙を覗き込む。


「いいかいケイ、ここの問題は『はじまりの書』から出題されている。詩の一節に、『6つの嘆き悲しみに/母より産まれた幾万の/子らは挑み旅立った』とあるから、答えは『母より産まれた』だよ。ちなみに母って言うのは我らがマザーのことだ」

アルトの話し方は流暢で的確。

「次、『115年、はじめて大陸の外の世界を旅したのは?』答えは探検家キューブ。『840年、世界で初めて戦うためだけに産まれた戦闘ロボットが誕生した出来事を何という』答えは『ルッタール・ショック』」

「俺たちの直系の御先祖様だな。ルッタール・・・。うん思い出したぞ。ありがとうアルト。さすが歴史Sは違う!」

嬉しそうに解答を直していく。

「はやめに終わったから、これから素振りしてくるぜ!俺は2か月後の卒業演武大会でトーナメントに勝ち上がって、決勝でアルトに勝って気持ちよく卒業したいからな」

アルトの決勝進出は確実なのだ。後はケイの努力だけ。

ケイは資料室を後にした。




2月 卒業大会当日


「えっ、いない」

少し遅れて学校の格技場に来たケイが自前の武器を落とした。周囲がざわついている。

「アルトが学校に来ていない」

「母親が言うには、2時間前には家を出ているって」

「アルトは今日の決勝トーナメントに出るはずなのに」

「なにか事故でも起きたんだろうか」

「アルトの優勝はほぼ決まっていたのに。どうして・・・」

生徒達の口から憶測だけが広がっていく。しかし、ケイの頭の中はからっぽ。何も考えることができない。


しばらくして教官たちが集まってきた。情報を合わせると母親の言う通り、2時間前には家を出ていること。その時に部屋にあったいくつかの荷物を持って出ていっているということ。置手紙があり、「母さん、みんなごめんなさい。自分は旅に出ます。探さないでください」と書いてあったこと。機車(機械列車)に乗りこむところを目撃されていること。向かったのは南であるということ。


卒業演武大会の開始の時間はとっくに過ぎている。始まる気配はない。そもそも始めることができるのか。アルトは無事なのか。どうしたのか。参加者や観覧者が口々に不安の声を上げる。


1時間ほどして、学長から大会の開催を告げられた。アルト無しの開催である。


結果はケイの優勝に終わった。

表彰台に上ったこと、多くの拍手をもらったこと、学長から熱い握手を受けたこと・・・。ケイには何の記憶も感情もない。と言うより戦って勝ち進んだという記憶もない。「アルトがいなかったから優勝できた」というやっかみの言葉すらケイの心には届かなかった。彼は無だった。


しかし、優勝と言う実績は、ケイの進路を決定づけた。卒業後すぐの共和国軍入隊が約束された。本来なら、入隊試験や適性試験、健康チェックなど複雑な経路をたどるが、ケイはその多くを免除された。


「アルト・・・」

ケイは夢を叶えた。新しい目標に向かって一歩進み始めることができた。しかし、大きく心に穴が開いた。怒り?悲しみ?寂しさ?不安?心配?心残り?これらが入り混じった感情がどっと押し寄せてくる。


「アルト・・・」

必死に心の奥底にしまおうとするが、風船を水に沈めても浮力で浮き上がってしまうように無意識の底から意識の水面に戻ってきてしまう。


「アルト、どうして?一体どこにいる・・・俺はロボ戦(ロボット戦士)になったぞ!」

時が過ぎていくこと・・・これがアルトを忘れるのに一番の薬であった。


 ―――――――――――――――――――――



窓から差し込む日の光が眩しい。・・・ゆっくりと目が覚める。

「おはよう、ケイ」

カロが窓の外をじっと見ている。

「はやいな相棒」

ケイが起き上がりカロと同じものを見る。

「着いたのか。あれがキンデ連邦か!大きいな」

カロの肩に手をやる。

「あと1時間で到着だと隊長が言ってた。軽く食べる?荷物の整理は後にする?」


「先に食べるにしよう。あーっ、いよいよ連邦に来てしまいましたか」

「来てしまいましたねぇ。にしても連邦の人たちってどんな感じなんだろうか?信じているマザーも違うし、今回の戦争にも消極的だし」

「そういう政治の事って分からん。とにかく、帝国の連中をぶっつぶして世界の平和を守る。ただそれだけだ!もし、連邦が帝国に与することになったらまとめてやっつけるだけ」

「ははは、ケイらしいや。今回は僕たちの検診が目的だから任務ってことはないだろうし、とにかく楽しもうじゃないか」

「そうだそうだ。着いたら何食べようか?」

「妖精ドリアが食べたいな。上にいっぱいゼロバンチーズが振りかけてあるやつ。あと、僕は電化製品を見てみたい。連邦はこっち(共和国)より科学が進んでいるから」

読んでいただきありがとうございます。乱筆乱文お許しください。

12話完成しました。今回は回想回でした。①ということは②もあるんでしょうか?気になりますね。えっ

気にならない?気にしてちょうだい!


次回、第13話「上陸(仮)」楽しみにしてください。     ごむぬけより


追伸 11話のチャプター3の帝国の部分加筆修正しました。

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