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ロボ戦(ロボット戦士)  作者: 吉田 天候
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第1話「ケイのいる戦場」

「あぁ、なんて気持ちのいい夜なんだろう。それに今日は一段と星がきれいに見える」

ケイが空を見上げる。

「実際きれいだよ。今の季節は空気が澄んでいるから…。あれがエメラルド星。あっちの青白いのがバーナード星…。ロゼッタ星をこう繋ぐと冬の大バーゲン」

指で星座を描く。

「よくもまあ、飽きないな親友。学者にでもなるつもりか」

それはあり得ないというように、くすくす笑う。

「…ねぇ、ケイはもう決めたのかい」

「もちろんさ。あと1年したら正式に入隊する。俺たちは戦うために産まれたロボット戦士だもの。ロ・ボ・セ・ン。くぅ~っ、たまらん響きだ。はやく戦場に出て帝国の軍団共を蹴散らして、共和国、じゃなかった、この星の平和のために戦いたいよ。アルトもそう思うだろ?」

「…そうだね…ケイ」

「そうだとも。俺たちは親友さ。戦場でもどこでも」



 ――――――――――――――――――――――――――――――

 

「……イ」

「……ケイ」

「きろ、ケイ!」

「おい、生きてるか、ケイ?」

ケイが目を覚ます。

「…どこでも……んいゃ、相棒!どれくらい落ちていた?現状は?」

しかし、未だ脳が肢体(からだ)を支配できていない。

「20秒くらい。今、両軍にらみ合っている。さっきの地雷誘爆弾の衝撃でみんな混乱している。辺りの土やガレキが吹き飛んで戦闘に水を差した感じだけど…。背中ひどいな」

片手で銃を構え、周囲を警戒しながらも、一方の手でケイの背中についた土ぼこりを取る。

「20!あぁ、気分悪い。何か悪い夢を見ていたようだ。それにしても、誘爆弾なんて開戦直後に撃つもんだろう!。こんな時間まで撃たずにおくなんて、どこのひよっこ(新兵)だ」

「長い戦争だ。最近はぞくぞくと新兵が前線に送られてくる…敵も味方もな。おやっ、キチノスケだ」

大きな耳をもった四足の動物が音を立てずに近づいてきた。一般にアータネと呼ばれるこの星固有の動物である。

「ゼングン、イッタン、セントウヲ、テイシセヨ。ヨロヅホヘイブンタイハ、ポイントエムヘ、シュウケツセヨ」

突き出した右耳の先端から声が聞こえてきた。明らかにこの生き物の声ではない。

「銃声も止んだようだ。もう日が暮れる。決戦は明日に持ち越しだな」

ケイはゆっくりと立ち上がり、キチノスケの頭を撫でた。

「そうみたいだな」

カロは銃を下した。



後退命令が出てから2時間。横に伸びた陣列の間には数十台の戦車が置かれ、周囲にはカサと呼ばれる野営用のテントが建つ。ある戦士は忙しく動き、ある戦士は明日のために休息をとっている。

よろづ分隊のテントの前では、同じ隊のダットが大きながれきに腰かけていた。傍らで寝ていたキチノスケが起き上がる。二人が帰ってきたのだ。

「見回りご苦労さん。ケイ、カロ。一杯やろう」

人気栄養補助ドリンク『ボロタミンA(微アルコール)』を二人に手渡した。

「ダット、分隊長はまだかい?」

そう言うと、ケイは一気に飲み干した。

「まだだ。ブリーフィング長引いているようだ。明日の作戦どうなるかな。この島の奪還作戦も三度目の正直で終わりにしたいところだがな。はやく体のサビを取りたい」

ダットが2本目を手にする。

「ぼくたちのいる左翼側の進軍がかなり遅くなってしまった」

カロが今日の戦闘を振り返る。

「今日の戦いで進めたのは、およそ3キロ」

「予定の3分の2ってところかぁ!」

ケイが頭をかく。

「うん。明日の作戦にどう支障が出るか…」

3本目を手にしたダットをカロが優しく止める。本当は5本目なのだが・・・。

「どっちにしろ、しわ寄せは俺たちに来るんだよな。間違いない」

ケイの言葉に二人は深くうなずいた。


「よろづ分隊、いるか!」

テントの中から声が響く。副隊長タリオンの声。

「まもなく、隊長が戻られる。準備しておくように」



「一年半に渡り、帝国の奴らに蹂躙されてきたこのオーナメン島を我らの手に取り戻す時がきた。多くの国民が被災し故郷を追われた。そして、かけがえのない国民や戦士が死んだ。しかし、明日全てが決まる。それを決めるのは!」

「われらロボセン!」

エクスティ分隊長の檄に隊員が呼応する。

「その通り。500万のティアーズ共和国民が祈りを捧げて待っている。これは終わりではない。新たな戦いの始まりなのだ。明日の作戦を説明する。」

隊長の言葉とは反対に、落ち着き澄んだ声のタリオンが立体投影された地図をもとに詳細を説明する。

「現在、海洋上にて共和国艦隊と敵艦隊双方にらみ合っており、敵艦からの戦闘機の発進はできず、十分な増援もできない。よって、残るは港にいる残存部隊のみ。だが、敵は撤退準備を始めるもただで立ち退くつもりはないだろう。今まで以上の反撃が来るのは必至である」

タリオンが続ける。

「我々は、ジャレ湖を背にしてルドミラ港まで敵を包囲し追い詰めてはいる。しかし、港の敵基地には未だ複数の砲台と戦車部隊が守りを固めている。わが軍が砲撃を加えるためには手前の丘陵地帯を上る必要がある」

エクスティが付け加える。

「我が分隊の任務は、戦車隊が無事丘を上りきり敵基地を砲撃するための道筋をつくること。全軍が一糸乱れぬ動きをするために今日進めなかった分も取り戻す必要がある。明日の作戦の肝はわたしたちにある!」

「ポジションを伝える。エクスティ隊長を大将として、先鋒はケイとカロのツートップ。次鋒はダット。ストラトスは中堅。そして副将はわたしが務める。なお、ストラトスは途中参戦になるのが決まっている。ダットの負担が大きくならないようにわたしもフォローするつもりだ」

「大丈夫です副隊長。心配いりません」

ダットがケイの肩を叩く。

「先鋒の二人には、いつも無理をするなと言っているが、明日だけは…」

「大丈夫ですよ隊長。僕らそんなにやわじゃありません」

カロが隊長の言葉をさえぎる。

「そっちこそ、遅れないでくださいよ。でないと、俺ら先行っちまいますよ」

今度は、ケイがダットの耳をつかむ。

「各々明日の準備をするように。全員解散」



その頃、ルドミラ港では撤退準備に入っているショベル帝国「陰の軍団」の姿があった。

そこに、一隻の小型船が着港した。

船から、所々破れたマントを身に纏ったロボット達が下りてくる。

その中で、先頭を歩く男だけが他の者を残してもぬけの殻になりつつある基地に入っていく。

男はすんなりと指令室まで案内された。

「なんか忙しそうなのに、悪いな」

マントを外しながら、男は気さくに話しかける。

「忙しそうというより、忙しい」

そう答えたのは、ショベル帝国4大軍団のひとつ「陰の軍団」軍団長カルタス。その間にも、少ない言葉で部下たちに適切な指示を与えている。

「もう、祭りも終わりだぞ。今更何しに来た」

「何って、これさ」

男は手に持っていた長方形の箱をした機械を見せた。グリップに付いたボタンを押すと展開し剣になった。

「ズッケイ社の開発した武器、チョウホウ剣。モニターしろってさ。んで、データ取るなら実戦が一番だろって…」

「実戦というより、お前が使っても壊れなかったという保証が欲しいんじゃないのか」

カルタスは、この男が物を雑に扱うことをよく知っている。

「そりゃ有りうるな」

男が笑う。

「それより、お前の軍団は大丈夫なのか?」

「部下が優秀でね。軍団長がいなくても意外と何とかなるもんさ」

「『光の軍団長アリスト失踪す』なんて見出しが帝国新聞にでも載ったらさぞ騒ぎになるだろう」

「いっそのこと軍団長解任してくれた方が自由でいいかな」

アリストは剣をたたみ、マントを身に着ける。

「明日の作戦に水を差すようなことはしない。だが、少しでも敵の戦力はさいておくようにするよ。挙げた星はそっちの団員たちにうまく振り分けてくれ」

「残った兵も頃合いを見て撤退する手はずだ。遅れるなよ」

部屋を出るアリストの背中に向かってカルタスが言葉をかけた。


「奪われた国土を取り戻せ」ロボ戦達は、果敢にも銃弾が降り注ぐ戦場に飛び込んでいく。息を切らすな!警戒を怠るな!この戦いが終われば、いっときの安らぎが待っている。いっときの…。

次回、「ここからが始まり」



お読みくださってありがとうございます。ストックもありませんので完走まで時間がかかると思います。

個人的には、プリントアウト&製本して子どもと楽しく読みたいと思っています。(漢字とか子ども向けじゃないの使っていますが…)

次回は、後書きに書かないほうがいいと思ったのですが、もう戻れないのでこのままです。

誤字脱字、軍関係の設定がばがばお許しください。

pixivでは絵も載せています。

https://www.pixiv.net/users/35014452


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