綺麗な花には棘がある
教室に戻ると、すでにホームルームも終わっており、各自帰り支度を始めているようだった。
「あ、宮野!大丈夫か?」
心配そうに佐野が近づいてきた。
「大丈夫だ。なんともない」
「あんだけ派手に倒れてたくせに、、」
呆れたようにため息を吐かれた。
「ま、本人が大丈夫っていってんだから大丈夫だろ。」
永井がぽんぽんと佐野の頭を叩き、
「疲れたんじゃないか?部活も忙しかっただろうし」
とフォローにはいる。
佐野は納得したらしく、「とりあえず昼飯でも食いにいこうぜ」と俺の鞄を差し出した。
「そうだな。」と答えながら、俺は自分のとなりの席に目をやる。
転校生の姿はなかった。
「ん?何見てんの?」佐野も振り返り、俺の意図に気づいたらしく
「あ、榊さんなら終わってすぐ帰ったぜ。女子が囲んでたけど、家の用事で早く帰らなきゃって。」
さすが周りの話をよく聞いているだけある。
「もしかして、一目惚れとか?」
茶化したようににやにやと永井が言ったが、即座に
「ちがう。」と否定した。
詳しくはわからないが、倒れてしまったのは彼女を見た時だった。原因かもしれない奴にそんな感情は一切湧き上がってこない。
「変わってそうな人だから気になっただけだよ。」
「あー、まああんな美人、この辺で見たことないよな!」
うんうんと同意しながら強く佐野が頷いているのに多少の苛つきを覚える。
「美人っていうか、校則ゆるいからって銀髪はすごいよな、、」と呟くと友人2人が不可解な顔をしている。
「お前、やっぱり体調悪いんじゃないか?飯食わずに帰ろうか?」と永井が心配そうにみている。
その顔はからかいなどではなく、本当に心配しているようだった。
「榊さん、綺麗な黒髪だったじゃないか。」