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妖ヲトメと妖怪退治  作者: はち
3/8

嵐の前の静けさ

席につき、窓の外に目をやると、春の穏やかな日差しの中で桜が舞っているのが見える。

(いい天気だなあ...)

込み上げてくる欠伸を噛み殺しながら、周囲をみる。


ふと、隣の席には名前が貼っていないのに気づいた。

(隣は空席?空席なんてあるのか?)

不思議に思いながらも、もともと他人に興味はない。

そんな疑問は、教室にはいってきた教師の声で消えてしまった。


「えー、席につけー。」

ざわめきながらも各自席につく。

遠くで佐野が手を振って来たため、しっしっと追い払っておいた。


「はい。おはよう!今日からこのクラスを担任する、

原田隆二(ハラダ リュウジ)です。よろしく!」

いかにも体育会系という風貌の彼はまだ若く、女子からも人気のある教師だ。

意外にも彼は、文学を愛する国語教師なのだが、見た目から体育の教師だと誤解されることも少なくない。


「わーい!ハラセン担任とかラッキー!」

「こら佐野!ちゃんと原田先生と呼びなさい!

お前は小学生か!」

教師に怒られている佐野をみんなが笑った。

(相変わらずうるさい奴だな...)

そんな佐野に呆れながら、話の続きを待つ。


「はあ。最初から疲れた..。2年なんだから落ち着きなさい。転校生も外で待ってるんだから、待ちくたびれるだろ?」

転校生、の言葉にクラスがまたざわめきたつ。

「静かにー!入ってもらうから、ちょっと落ち着け!」

クラスが少し落ちついたところで、

「じゃあ榊さん。入って来てください。」


ガラっとドアがあき、

「失礼します。」

という、凛とした声が響く。


入ってきた転校生を見て、クラス中がほう...と感嘆の声をもらしたようだった。


声の主は、本人もまた凛とした雰囲気を持っており、すらっとした長身。顔もきりっとしながらも大きな目、すっととおる鼻筋、白い肌と整っている。

間違いなく美人の部類に入るだろう。


各所で、「きれい...」「美人すぎないか?」と称賛の嵐である。

確かに、美人だろう。しかし、俺には気になることがあった。

(髪の毛が、銀髪?なのか?)

背中まである長い髪をさらさらと揺らしながら歩く彼女は、銀髪にしか見えない。

(ハーフとかか?顔はどう見ても日本人だが..)

訝しげに見ていると、正面を向いた彼女と、

目があってしまった。

慌てて逸らそうとするが、逸らせない。

まるで彼女に吸引力があるのかというほど、目が離せないのだ。


俺は、人間に興味を持つ自分に驚いたし、なんとも言えない恐怖が胸を包んだ。

彼女もまた、少し驚いた顔で俺を見ている。

(怖い..なんだあの人..)


背中に冷や汗がつたう。

何故、俺は彼女がこんなにも怖いのかわからない。

(あんな知り合いなんていない...)


誰だ、なんでだ、なんで俺が...


意識はここで、ぷつん、と切れてしまった。

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