嵐の前の静けさ
「あ!あれかな?噂の転校生がこの人なんじゃない?」
興奮しながら佐野が俺に聞いてきたが、
「その噂自体、さっきお前から聞いたんだからわかるわけないだろ?いいからさっさと中に入ろうぜ。」
どうでもいい。という俺の態度に佐野はつまらなそうに従って、教室へと向かう。
「すごーく可愛いかもしれないだろ?」
「だとしても、興味ないって言ってる。」
ドアを開けると、席はほとんどうまっており、各自知り合いと喋ったり、本を読んだりと自由に過ごしている。
(まあ、クラス替えっていってもな)
ここ、桜真高校では、進学希望別、成績順でクラスを分けているため、だいたいが似たようなメンバーで3年間過ごすことになる。
逆にいえば、就職希望組や私立大学組は国立大学組とクラスが被ることはほぼないし、クラスの人種もまるで違う。
俺と佐野は国立希望組なので、また一緒になったというわけだ。
「お、2人ともやっときたか。」
「ああ、おはよう。永井」
眼鏡の好青年に見えないこともない、永井が窓側で手を振っている。
「こいつが全然動こうとしなかったからな。」
「佐野は相変わらず落ち着きがないな。」
永井は、外面だけ見たら人当たりの良い好青年だが、裏では彼女が常に何人もいるような遊び人だ。
「女は信用できないからねぇ。」というところのみ気が合い、佐野と共に俺の数少ない友人である。
「あ、あの!おはよう宮野くん!」
声の方に振り返ると、女子達がいた。
「ああ。おはよう」
挨拶を返しただけなのに、きゃあきゃあ言いながら女子達は去っていった。名前も顔も覚えてないから誰が喋ったのかもわからないし、何がしたいのかもわからない。
「用事じゃないのなら話かけないでほしいな。」
ぼそっともらすと佐野は信じられないという顔で目を見開いた。
「ファンだろ?可愛いじゃん!あんな顔赤くしてきてさー」
「名前も知らないし、挨拶だけでうるさい」
永井はまた笑っていた。
「まあ、なんで集団で来るんだろうな?って思うけどな。」
「えー?お前ら2人は何でそんなんなの?モテるやつらはなんでこんなんばっかり、、」
落ち込む佐野の肩を永井が叩いた。
「諦めろ。人は見た目が10割だ」
「全部じゃん!励ませよ!」
2人のやりとりを横目に、さっさと席につこうと席を探した。
(名前順だから後ろだろうし、ラッキーだな)
思ったとおり、まさかの窓側一番後ろという良い席。
佐野達とは席が離れたが、むしろ静かで良かった。




