雨
第五章 ザットワズインポッシブル
俺の攻撃は、公平の国に雨を降らせた。巨大な爆音とともに、水の大瀑布が空から地上に落ちる。巨大な水の塊は、その身を小さくちぎりながら、国を濡らす。
それはまるで、空の上に海をこぼしたみたいだった。
地表では、
「ケンが勝ったみたいね」
アリシアが“晴れ渡った空から降る雨”を浴びながら言った。雨粒は日光を内部で乱反射させている。まるで光のシャワーみたいだ。
「そのようだな」
アルは空から降り注ぐ雨粒の流星を顔にかけながら言った。金髪に絡まった水滴は、宝石のように光り輝いている。
「わあ。晴れているのに雨が降っているね!」
公平の国の住民が空を仰ぐ。人生で初めて経験する不可解な天気は、とても綺麗だった。日差しの合間を塗って落ちる雨粒は、どこか不思議で美しかった。
「ママー見て! 虹が見えるよ!」
可愛らしい三つ編みの女の子がママの手を引いて、空に描かれた七色の奇跡を見せる。
「まあ。本当。とっても綺麗ね」
空一面に敷かれた虹の絨毯は、国民に幸せを分けてあげているみたいだ。
「おばあさん。聞こえますか? 虹がとっても綺麗ですよ」
介護士が車椅子の老婆に声をかける。
「あらあら。本当だね。まるで空に橋がかかっているみたいだね」
老婆はしわくちゃの顔に、笑顔を浮かべた。
空から落ちる透明な雫は、街を洗って、奇跡で満たした。雨粒の一つ一つは奇跡のカケラ。そのカケラは、次々と地面や屋根に当たって砕けた。
ポツポツと不規則なメロディーが街に喧騒を生み出す。その音は、聴く人を“奇跡を聞いている”みたいな不思議な気持ちにさせる。
雨粒は全ての人に降り注いだ。ルーレットも運も関係ない。それはとても公平な景色だった。




